顧客対応に関するQ&A

整体院・カイロプラクティックを巡る諸問題

2016.7.15
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景品表示法違反による措置命令

2016年6月、小顔矯正をうたったサービスを提供していた会社等に対し、景品表示法に基づく措置命令が出されました。例えば、ある整体院では、「当院では23個の骨から形成されている顔の骨と頭蓋骨を特殊な技法で無痛にて施術することにより、頭蓋骨の調整だけでなくリンパや脳脊髄液の循環を正常化させていきます。」などとして、施術を受ければ、顔が小さくなるとの広告をしていましたが、これが問題視されたわけです。

あはき法

話は変りますが、皆さんは、「あはき法」という法律を聞いたことがありますか?正式には、「あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律」というのですが、この法律の第1条には、「医師以外の者で、あん摩、マツサージ若しくは指圧、はり又はきゆうを業としようとする者は、それぞれ、あん摩マツサージ指圧師免許、はり師免許又はきゆう師免許(以下免許という。)を受けなければならない。」とされています。
そして、あん摩とは、「人体についての病的状態の除去又は疲労の回復という生理的効果の実現を目的として行なわれ、かつ、その効果を生ずることが可能な、もむ、おす、たたく、摩擦するなどの行為の総称である。」(昭和三八年一月九日 医発第八号)とされており、免許なくこのような行為を行うと処罰されることとなります。

整体院、カイロプラクティックとあはき法

整体院やカイロプラクティックなどは、このあん摩にあたらないのでしょうか?
この点、判例は、「医業類似行為を業とすることが公共の福祉に反するのは、かかる業務行為が人の健康に害を及ぼす虞があるからである。それ故前記法律が医業類似行為を業とすることを 禁止処罰するのも人の健康に害を及ぼす虞のある業務行為に限局する趣旨と解しなければならない」(最判昭和35年1月27日)としており、免許なく行うことが禁止されている「あん摩」は、健康に害を及ぼすおそれのある行為に限るとしています。
例えば、国民生活センターが公表している以下のような事例については、「あん摩」に辺り、あはき法違反になる可能性が高いでしょう。

【事例】 指圧・マッサージ店で全身の指圧マッサージを受けたところ肋軟骨(ろくなんこつ)を骨折した

全身の指圧マッサージを1時間半受けた。終了直前にブキッと音がして息をつけない痛みを感じたが、1~2分で通常に戻ったので激痛があったことを言わず帰宅した。その夜発熱し痛みが出たため整形外科を受診したら肋軟骨骨折で加療に1カ月を要すると診断された。

【事例】 遺伝性狭窄(きょうさく)症である旨を伝えてマッサージを受け、症状が悪化した

遺伝性狭窄症で腰痛に悩んでいた。腰痛不眠症改善という情報誌を見てマッサージを受けた。背骨の曲がったところを強く押され、腰や脚に激しい痛みと痺(しび)れ、引き攣(つ)れが起こった。脊椎専門の病院で治療を受けたところ、以前の状態に治るまでに3カ月程かかると言われた。
免許なく行うマッサージ等は、その強度、対象となる症状等について、限界があるわけです。
この点、厚生労働省は、「医業類似行為に対する取扱いについて」(平成3年6月28日医事第58号 http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/i-anzen/hourei/061115-1a.html)において、禁忌対象疾患(椎間板ヘルニア、後縦靭帯骨化症、変形性脊椎症、脊柱管狭窄症、骨粗しょう症、環軸椎亜脱臼、不安定脊椎、側彎症、二分脊椎症、脊椎すべり症等)に対してマッサージを提供することが適当でなく、また一部の危険な手技についてもこれを禁止するのが妥当であるとの考えを示しています。
すこし難しくなってしまいましたが、結局、高強度のマッサージや、椎間板ヘルニア等を患っている方へのマッサージを免許なく行うことは禁止されているわけです。

整体院、カイロプラクティックと広告

このように、整体院等で提供できるサービスには限度があるわけですから、例えば、「椎間板ヘルニアの痛みを改善」などという広告をしていると、あはき法に違反しているかもしれないことを自ら宣伝しているようなものです。
また、これは整体院、カイロプラクティックに限ったことではないのですが、景品表示法に違反するような広告にも注意しなければなりません。
具体的には、今回、措置命令が出された「小顔矯正」のほか、「血流を改善し、リンパの流れを整えることでアンチエイジング効果があります。」、「むくみが改善され、太ももが引き締まります」、「揉みほぐしによる痩身が期待できます」などという効果についても、景品表示法上は、問題となることが多いと思われます。
以上のように、整体院、カイロプラクティックについては、さまざまな法律が関係しており、法令順守には、十分配慮しなければなりません。

当事務所では、整体院やカイロプラクティックにおけるサービス内容や広告内容のチェックを行っておりますので、遠慮なくご相談ください。

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弁護士法人丸の内ソレイユ法律事務所 美容広告専門チーム

美容広告専門チームは、美容業界と広告に精通した弁護士集団として、高い専門性を持ち、多くの企業の顧問弁護士を務めている。美容や広告に関するセミナーでの講演依頼を多数受け、新聞をはじめとしたメディアからも数多くの取材を受ける。

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