携帯型空間除菌用品に対する行政指導から合理的根拠を考える

1 はじめに

消費者庁は、2020年5月15日、携帯型の空間除菌用品の販売業者5社に対して、優良誤認表示の恐れがあるとして行政指導を行ったことを発表し、一般消費者への注意喚起を行いました。

これらの商品は、首から下げるなど、身につけて使用するもので、二酸化炭素塩素を利用した空間除菌を標ぼうするものでした。なぜ、これらの商品の広告は、優良誤認表示の恐れがあると判断されてしまったのでしょうか。

2 表示には合理的根拠が必要

景品表示法においては、消費者庁などから優良誤認表示ではないかとの指摘を受けた場合、事業者の側で、その表示の合理的な根拠を提出しなければならないとされています。
もし、事業者が合理的な根拠を提出できなければ、その表示は優良誤認表示だとみなされてしまいます。これを不実証広告規制といいます。

本来、行政処分をするには、行政の側で法律違反があったことを証明しなければならないところ、その証明を事業者側でしなければならないとしているわけですので、事業者にとっては非常に厳しい仕組みとなっています。
そのため、事業者にとっては、何が合理的根拠になるのかを知っておくことは、極めて重要です。

3 実際に使用する状況での根拠が必要

消費者庁の発表によれば、今回行政指導を受けた携帯用の空間除菌用品は、狭い密閉空間での実験結果を根拠資料としていたようです。
しかし、携帯用の空間除菌用品は、人が身につけて使うものですから、狭い密閉空間で使用されるものではありません。
自宅にいるときに使用するとしても、普通は6畳程度の広さの部屋で使いますし、すべてのドアや窓が密閉されている状況の方が例外的です。それに、除菌効果を得たいのは、自宅ではなく外出時であることがほとんどです。
そのような場合には、密閉空間とは言えない状況の方が格段に多いでしょう。

密閉空間でない場合、周囲の空気はどんどん入れ替わっていきます。
空気中のウイルスもそれに伴って入れ替わっていくわけですので、密閉空間と同じようにはウイルスの除菌効果を得ることはできません。
消費者庁の発表でも、風通しのある場所で使用する場合には、表示どおりの効果が得られない可能性があると指摘されています。

このように、合理的な根拠と言えるためには、実際に使用する状況における根拠資料である必要があります。

4 最後に

事業者が合理的な根拠だと考えている資料でも、法的に見ると、合理的とは言えないものであることが多々あります。
特に、実験結果を根拠としている場合には、「実験までしているのだから合理的な根拠になるに違いない」と思ってしまいがちです。
この機会に、改めて根拠資料について見直しをしてみてはいかがでしょうか。

措置命令取り消しのなぜ

1 はじめに

消費者庁は、2020年5月15日、2019年3月29日に行った措置命令を取り消したことを発表しました。
消費者庁が一度出した措置命令が取り消すのは初めてのことだと思われます。
消費者庁の発表では、措置命令を取り消した理由として、「措置命令の処分原因事実として認定した表示期間を改めて検討した結果」としか触れられていません。

なぜ措置命令の取消しという事態になったのでしょうか。

2 再度の措置命令もあり得る?

消費者庁の発表からも分かるように、今回の取消しの理由が、「そもそも優良誤認表示ではなかった」というものではないのは明らかです。

報じられているところによると、優良誤認表示として認定した広告の表示期間に誤りがあったため、取り消さざるを得なかったということのようです。
そのため、改めて広告の正確な表示期間を確定し、表示期間を変更した上で、再度の措置命令を出す可能性も十分にあると考えられます。

というのも、措置命令のような行政処分は、基本的にどこまでも過去に遡って処分を出すことができます。極端な話をすれば、今回の表示が実は10年前のものでした、という場合であっても、それが優良誤認表示である以上、措置命令を出すことは可能なのです。

3 課徴金額には影響する可能性

一方で、優良誤認表示に対する課徴金納付命令は、期間の制限があります。景品表示法において、課徴金の対象とされる期間は最大で3年間とされており、また、不当表示をやめてから5年が経過すると、課徴金納付命令を課すことができないとされています。

そのため、理屈としては、今回表示期間が見直されることによって、課徴金額に影響してくる可能性もあります。

4 最後に

措置命令が取り消されると、その措置命令は最初からなかったことになります。とはいえ、一度出された措置命令の事実上の影響はどうしても残ります。今回は表示期間の誤りということでしたが、実は不当表示ではなかったというような場合には、措置命令が取り消されたとしても、被った事実上の不利益をどうするのかという問題が残ることになります。

感染症対策を暗示する広告の危険性を明らかにした措置命令

1 はじめに

消費者庁は、2020年5月19日、「ハンドクリーンジェル(300ml)」と称する商品について、優良誤認表示があったとして措置命令を行いました。
優良誤認表示とされた理由は、商品に「アルコール71%配合」と記載していたのに、実際はそれを大幅に下回る配合割合だったというものです。

措置命令では明確に触れられてはいませんが、優良誤認表示の表示期間は2020年4月4日から同月14日までとされています。
そのことから考えて、新型コロナウイルス感染症の予防効果を暗示した商品について、初めて措置命令が出されたケースと考えてよいでしょう。

2 消費者庁による注意喚起と行政指導

新型コロナの流行が始まってから、その予防効果を謳う商品が多く出回るようになりました。その種類は、健康食品、マイナスイオン発生器、空間除菌商品、アロマオイル、光触媒スプレー等、様々です。
その中には、とても新型コロナの予防効果があるとは思われないものも含まれています。

新型コロナは世界中で流行し、多大な被害を出しているだけに、その予防効果を謳うことの訴求力は極めて大きなものがあります。そのため、消費者庁としても、そのような広告表示に対しては、素早く注意喚起や行政指導を行っています。

具体的には、2020年3月10日、同27日、同年5月1日と、相次いで一般消費者への注意喚起をリリースするとともに、空間除菌用品の販売事業者に対する行政指導を行い、これを公表しました。

今回の措置命令も、そのような流れの中に位置付けられるものです。

3 措置命令の内容

今回措置命令を受けた商品も、「ハンドクリーン」という商品名、アルコールを配合していることから、手指の消毒による新型コロナ予防効果の訴求を狙った商品であることは間違いないでしょう。

報じられているところによると、71%のアルコールを配合していると表示しながら、実際には5%~30%しかアルコールが配合されていなかったようです。
表示期間が上記のとおり約10日間と短期間であることからしても、消費者庁が素早く動いて措置命令まで持って行ったことがうかがえます。

4 薬機法の観点

ちなみに、問題となった商品は、「手指用洗浄ジェル」と表示しており、「消毒」という表示をしていません。そもそも手指の消毒は、医薬品、医薬部外品でしか認められない効果です。
ところが、今回の商品は医薬品や医薬部外品ではなく、化粧品として販売されていました。そのため、「消毒」という表示をすることができず、「洗浄」という表示をしつつ、高濃度のアルコールを配合していることを示すことで、手指の消毒効果を暗示しようとしたものと思われます。

このように、雑品や化粧品であるにも関わらず、手指の消毒効果を暗示しようとする商品は、今後も増えてくると考えられます。

5 最後に

今回はアルコールの配合量に着目した措置命令でしたが、商品の種類や広告の内容によっては、直接的に新型コロナ等の感染症予防効果を表示していると認定して、優良誤認表示と判断されるケースもあり得ます。

今後も引き続き、新型コロナ関連の訴求に対しては厳しい目が向けられていくでしょう。

 

商品ではなく含有成分の広告でも措置命令を受ける?

1 はじめに

景品表示法では、「商品の」品質などについて、著しく優良であると示す表示を、優良誤認表示として禁止しています。そのため、これまで優良誤認表示を理由として措置命令が出されるのは、すべて具体的な商品についての広告でした。しかし、2019年11月1日、消費者庁は、これまでと異なり、健康食品について、具体的な商品ではなく、含有成分に関する広告に対し、措置命令を行いました。

 2 背景事情

このように、具体的な商品名を記載せず、含有成分についてだけ記載する表示は、非常によく見られます。その理由は、景品表示法ではなく薬機法にあります。

薬機法においては、健康食品について医薬品的効能効果を広告することは禁止されています。しかし、薬機法の適用対象となる広告は、①誘引性、②特定性、③認知性の3つの要件を満たすものに限られます。このうち、②特定性とは、当該広告において商品名が明らかにされていることを意味します。そのため、健康食品の商品名を明らかにせずに、含有成分について医薬品的効能効果を表示しても、薬機法違反とはならないのです。

3 含有成分の表示が薬機法違反となる場合

しかし、実際に事業者側が意図しているのは、含有成分の医薬品的効能効果と、具体的な健康食品の商品とを、消費者側で結び付けてもらうことにある場合がほとんどです。そのため、事業者としては、両者を結び付けるべく様々な工夫をするのですが、そのような工夫が薬機法に違反することがあります。

例えば、最近では、含有成分の医薬品的効能効果を記載しているウェブサイトに、当該成分を含有している健康食品の購入サイトへのリンクを張り、遷移することができるようにしていた事案において、両者が実質的には一体の広告であると判断され、薬機法違反で摘発されるということがありました。

 4 含有成分の表示が景品表示法違反となる場合

実は、前述した措置命令も、薬機法の場合と同じように考えることができます。

前述の措置命令は、単に含有成分の表示だけを取り上げて優良誤認表示と判断したわけではありません。この事案では、まず、ウェブサイトにおいて「ブロリコ」という成分について、免疫力の向上や、病気の治療・予防効果があるという表示をしていました。消費者は、当該ウェブサイトを通じて「ブロリコ」に関する資料請求をすることができ、資料請求があると、「ブロリコ」についてウェブサイトと同じような表示がされた冊子やチラシに加え、具体的な商品の注文はがき付きチラシと、当該商品の無料サンプルが送付されるという仕組みになっていました。

消費者庁は、そのような全体の仕組みを捉えて、ウェブサイトや冊子、チラシについても、具体的な商品に関する広告であると判断し、優良誤認表示と認定したのです。景品表示法においては、このような判断は初めてのものですが、薬機法の観点からは、従来から行われていた規制の延長と考えることもできるでしょう。

医薬品ビジネスに関する主な契約類型とポイント その1(研究・開発)

1 はじめに

医薬品ビジネスに関する業務を時系列で概観すると、大きく以下の5つの業務があります。

①薬のタネを見つけその芽を育む研究業務

②さらに芽を成長させ、医薬品としての有効性と安全性に関するエビデンスを創出・収集し、当局から製造販売承認を得る開発業務

③販売する製品を製造する生産業務

④製品を販売しプロモーションを行う販売・営業業務

⑤製造販売後のエビデンス創出・医薬関係者等への情報の周知を行うメディカルアフェアーズ業務

また、以下の業務も存在します。

⑥医薬品の品質に関する信頼性保証業務

⑦その他一般の会社と同様に、購買、経理、人事といった間接部門に関わる業務

⑧開発品又は医薬品の導出入、合併、株式譲渡、事業譲渡等のM&Aといった他社との提携に関わる業務

以下、これら各業務にかかわる主な契約類型のポイントを数回に分けて概観します。
今回は、①研究業務及び②開発業務に関する契約の主なポイントのみご説明します。

2 各業務にかかわる契約類型

(1)研究業務

試料提供契約書(MTA)、研究委託契約書、共同研究契約書、共同特許出願契約書、ライセンス契約書などがあります。

研究活動によって生じることが想定される研究成果に即して、研究成果を定義した上で、その知的財産権や所有権の帰属、実施権の内容や条件、研究成果の公表に関して、明確にルールを決めておく必要があります。

特に、製薬企業とアカデミアとの共同研究においては、それぞれの目的が異なります。製薬企業の目的が、医薬品の開発・製造販売、医薬品の特許取得にあるのに対して、アカデミアの目的は、研究成果の論文や学会等による公表・研究活動の深化・発展にあります。そこで、契約内容の交渉においては、このような相手方が求めるもの・目的を理解し、譲れるところは譲歩してwin-winを指向することが契約締結のために重要となります。

(2)開発業務

医師とのコンサルティング契約書、治験契約書、CROとの業務委託契約書などがあります。
治験業務には、薬機法及びGCP省令が適用されるため、契約書作成においても、当該法令に準拠した内容にする必要があります。
具体的には、治験契約書には、GCP省令13条1項各号の必要的記載事項を漏れなく記載する必要があります(同項のGCP省令ガイダンスの解説もご参照ください。)。
また、製薬企業とCROとの間の業務委託契約書には、GCP省令において、当該契約書の必要的記載事項を漏れなく記載する必要があります(GCP省令12条1項各号、GCP省令ガイダンス12条の解説もご参照ください。)。

さらに、治験においては、健康被害が不可避であるため、健康被害が生じた場合の措置と責任の主体・内容を定めておく必要があります。

薬機法に基づく広告規制の判断枠組みについて

薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)に基づく広告規制の判断枠組みの概要を以下ご説明します。

1 薬機法の主な広告規制の概要

薬機法の主な広告規制は、医薬品等の虚偽誇大広告を禁止する66条1項及び2項、そして、未承認医薬品等の広告を禁止する68条の2つです。

(1)虚偽誇大広告の禁止(66条1項及び2項)

以下の要件をみたすと、66条1項に違反します。

①何人も
②医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の
③名称、製造方法、効能、効果又は性能に関して、
④明示的であると暗示的であるとを問わず、
⑤虚偽又は誇大な記事を広告し、記述し、又は流布してはならない。

なお、66条2項には、医師等による効能等の保証広告を禁止する規制が、以下のとおり定められています。

①医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の
②効能、効果、性能について
③医師その他の者がこれを保証したものと誤解されるおそれのある広告

当該広告は、66条1項に違反するものとされます。

(2)未承認医薬品等の広告禁止(68条)
以下の要件をみたすと、68条に違反します。

①何人も
②未承認医薬品、未承認医療機器又は未承認再生医療等製品について
③名称、製造方法、効能、効果又は性能に関する
④広告をしてはならない。

66条と異なり、虚偽・誇大ではなく事実であっても直ちに違法となる点に注意が必要です。

2 注意すべき主なポイント

(1)主体

薬機法の広告規制の対象は「何人も」とされており、国内の製造販売事業者だけでなく、海外の製造販売事業者も規制の対象となりえます。

(2)医薬品等の定義

医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器及び再生医療等製品について、薬機法の2条1項から9項に定義が定められています。「医薬品」を例にとってみると、「人又は動物の疾病の診断、治療又は予防に使用されることが『目的』とされている物…」(同条1項2号)、「人又は動物の身体の構造又は機能に影響を及ぼすことが『目的』とされている物…」(同項3号)というように、治療や予防等の効果が客観的に備わっているかどうかではなく、あくまでそういった用途で使われることが『目的』とされている物という定義になっています。

よって、事業者としては、ある商品を健康食品として販売していても、たとえば、その商品の広告に病気の治療や予防効果があると記載していると、そういった治療や予防に使われることが『目的』とされている物ということになり、当該商品は、薬機法上「医薬品」に該当するということです。

そうすると、当該事業者としては、当該商品を健康食品として販売しており、医薬品としての承認を取得していないため、当該広告は、未承認医薬品の広告となり、直ちに68条違反になってしまいます。そして、広告の内容として、病気の治療や予防の効果がなければ、虚偽誇大広告として66条1項にも違反することになります。

「医薬品」に該当するか否かを判断するにあたっては、『無承認無許可医薬品の指導取締りについて』(昭和46年6月1日薬発第476号)が参考になります。このいわゆる46通知は健康食品の広告をチェックする上で、重要な通知となっています。

(3)広告の定義

以下の3要件全てをみたすと、薬機法66条及び68条の「広告」に該当します(平成10年9月29日医薬監第148号)。

①顧客を誘引する意図が明確であること(誘引性)
②特定の商品名が明らかであること(特定性)
③一般人が認知できる状態であること(認知可能性)

逆に1つでも満たなければ「広告」にはあたりませんので66条及び68条は適用されません。

「広告」の該当性に関して、①健康食品の商品名を記載したWebページ及び②特定性を排しつつ当該商品に含まれる成分等の医薬品的効能効果を記載したWebページの一体性が問題となることがあります。①だけ見れば、「広告」には該当するものの、医薬品的効能効果が記載されていないため、68条には違反しません。また、②だけ見れば、特定性に欠けるため「広告」に該当しません。

しかし、①と②がリンクや検索誘導等によって、実質的に一体の「広告」と見ることができる場合には、全体として68条に違反する「広告」となるおそれがあります。

(4)医薬品等適正広告基準

66条に該当するか否かの判断基準を厚生労働省が具体的に示したものが、『医薬品等適正広告基準』(平成29年9月29日薬生発0929第4号)です。また、同時に『『医薬品等適正広告基準の解説及び留意事項等について』(平成29年9月29日薬生発0929第5号)という詳細な解説が公表されており、参考になります。

景品規制の外観

1 景品とは

景品とは、①顧客を誘引する手段として②事業者が自己の供給する商品・サービスの取引に付随して提供する③物品、金銭その他の経済上の利益(以下「景品類」といいます。)のことをいいます。
簡単に言ってしまえば、商品やサービスにくっついてくるおまけのことです。
本来、事業者間の競争は、その価格や質によって行われることが消費者にとっては有益です。しかし、事業者が商品等そのものではなく、それに付けるおまけで競争をしたらどうでしょうか。
消費者は、商品・サービスそのものではなく、そのおまけに惑わされて本来購入すべきではない商品・サービスを購入してしまうかもしれませんし、事業者もその商品・サービスの質の向上や、少しでも安く消費者へ届けようとする努力をしなくなり、ひいては消費者全体の利益を害することにつながります。景品表示法は、このような事態を未然に防ぐため、事業者による景品の提供に制限を課しているのです。

事業者としては、まず、上記①~③の要件に照らし、消費者に提供しようとする経済上の利益が景表法上の「景品類」に該当するか否かの判断をする必要があります(例えば、値引きやポイントサービスに関しては、その性質上取引の本来の内容をなすものとして景品類には該当しないものとされています。)。

2 景品の種類

景品規制は、大きく分けて①懸賞による景品に関する規制と②総付景品に関する規制に分けられます。以下、簡単に内容を見てみましょう。

(1)懸賞による景品類の提供

ア 懸賞とは

「懸賞」とは、「くじその他偶然性を利用して定める方法」又は「特定の行為の優劣又は正誤によって定める方法」によって、景品類の提供の相手方又は提供する景品類の価額を定めることをいいます(懸賞制限告示第1項)。商品等を購入する消費者すべてに景品を提供する訳ではなく、抽選により提供する場合や、競技・遊戯等の優劣により提供する場合がこれに該当します。

イ 一般懸賞と共同懸賞

上記の「懸賞」のうち、「一定の地域における小売業者又はサービス事業者の相当多数が共同して行う場合」「一の商店街に属する小売業者又はサービス業者の相当多数が共同して行う場合(中元・年末等の時期において年3回を限度とし、かつ、年間通算して70日の期間内で行うものに限る)」に該当するものを共同懸賞といいます。祭りの際に市の商工会議所が主催するものや、商店街の福引等をイメージしていただければよいと思います。

そして、「懸賞」のうち、「共同懸賞」に該当しないものを、特に「一般懸賞」と呼んでいます。

(2)総付景品

総付景品とは、一般消費者に対して懸賞によらずに提供する場合の景品類のことをいいます。商品・サービスの利用者や来店者に対してもれなく提供する景品類が典型ですが、商品・サービスの購入の申込み順又は来店の先着順により提供される金品等も総付景品にあたるとされています。

3 景品規制の内容

景品表示法は、「カード合わせの方法による懸賞」を全面的に禁止していることを除き、景品類の提供方法ではなく、景品類の最高額、総額等を規制しています。具体的な規制内容は以下のとおりです。

(1)一般懸賞

ア最高額の制限

提供する景品類の最高額は、懸賞に係る取引の価額の二十倍の金額(当該金額が十万円を超える場合にあっては、十万円)を超えてはならない。

イ 総額の制限

提供する景品類の総額は、当該懸賞に係る取引の予定総額の百分の二を超えてはならない。

(2)共同懸賞

ア 最高額の制限

提供する景品類の最高額は、三十万円を超えてはならない。

イ 総額の制限

提供する景品類の総額は、懸賞に係る取引の予定総額の百分の三を超えてはならない。

(3)総付景品

総付景品については、その取引価額に応じて提供する景品の最高額が定められています。

ア 取引価額が1,000円未満の場合

提供する景品類の最高額は、200円

イ 取引価額が1,000円以上の場合

提供する景品類の最高額は、取引価額の10分の2

4 「景品類の価額」と「取引の価額」

上述したように、景品規制においては「景品類の価額」及び「取引の価額」を認定することが最も大切なプロセスとなってきます。以下、それぞれの認定方法について確認してみましょう。

(1)景品類の価額

景品規制の趣旨は、一般消費者が過大な景品提供に惑わされ適切な選択ができなくなることを防ぐことにありますので、景品類の価額を認定する際には、事業者の視点ではなく、あくまでも消費者の視点で考えるというのがポイントです。

ア 景品類と同じものが市販されている場合

景品類の提供を受ける者が、それを通常購入するときの価格によります。事業者が仕入れた際の原価ではありません。定価1,000円の商品をメーカーから100円で仕入れられたとしても、100円の景品として提供することはできないので注意が必要です。

イ 景品類と同じものが市販されていない場合

景品類と同じものが市販されていない場合でも、上記の景品規制の趣旨から、当該景品類が市販されていたとしたらどの程度の価値があるかということを考えることになります。そのような観点から、この場合の景品類の価額は、景品類を提供する者がそれを入手した価額、類似品の市価等を勘案して、景品類の提供を受ける者が、それ通常購入することとしたときの価額を算定し、その価額を景品類の価額とすることが定められています。もう市販されていないから、メーカーからの仕入価額とする訳にはいきません。

(2)取引の価額

取引の価額の認定についての基本的なルールは以下のとおりです。なお、前提として、「取引の価額」は、景品類の提供者が小売業者又はサービス業者である場合は、対象商品又は役務の実際の取引価額を、製造業者又は卸売業者である場合は景品類提供の実施地域における対象商品又は役務の通常の取引価額を基準とします。

ア 購入者を対象とし、購入額に応じて景品類を提供する場合

当該購入額が「取引の価額」となります。

イ 購入者を対象とするが購入額の多少を問わないで景品類を提供する場合

原則として百円となります。ただし、当該景品類提供の対象商品又は役務の取引の価額のうちの最低のものが明らかに百円を下回っていると認められるときは、当該最低のものを「取引の価額」とし、逆に、百円を超えると認められるときは、その商品又は役務の価額を「取引の価額」とすることができます。

ウ 購入を条件とせずに、店舗への入店者に対して景品類を提供する場合

原則として百円となります。ただし、当該店舗において通常行われる取引の価額のうち最低のものが百円を超えると認められるときは、当該最低のものを「取引の価額」とすることができます。

5 景品規制に違反すると

景品規制への違反に対しては、景表法上、「措置命令」という制度が用意されています。「措置命令」とは、景品規制に違反した事業者に対し、その行為の差止め若しくはその行為が再び行われることを防止するために必要な事項又はこれらの実施に関連する公示その他必要な事項を命ずることをいい、消費者庁又は都道府県知事によってなされます。
ただし、措置命令を発令するか否かは行政の裁量に委ねられており、景品規制に違反したとしても、必ず措置命令が発令される訳ではありません。
実際に、景品規制に違反したことを理由とする措置命令は、これまでに大阪府が1件発令したものがあるだけです。
そのため、行政指導として事実上の是正がされるに過ぎないことが多いと思われますが、行政指導といっても行政の監視の対象となってしますことは避けられませんので、上述した景品規制には真摯に向き合うことが必要です。

広告表現が法律に違反しているかどうかの判断手法

1 はじめに

広告を規制する法律には、景品表示法や薬機法がありますが、どのような表現が法律に違反するのかが曖昧で分かりにくいという声をよく耳にします。実際、広告表現が法律に違反しているかどうかについては、明確な基準がない場合のことが多いと言えます。そのため、広告表現が法律に違反しているかどうかを見極めるためには、判断手法の基本的な考え方を理解しておく必要があります。

2 個々の表現ではなく、全体の印象で判断される

それは、広告表現が法律に違反しているかどうかは、個々の表現ではなく、全体から受ける印象で判断されるということです。

例えば、「スッキリ」という表現は、ダイエットを謳うサプリなどの広告で、痩身効果を暗示する言葉として、よく使われます。しかし、「スッキリ」という表現は、便通の改善や整腸作用を意味する言葉としても使われることがあります。また、他にも味覚を表現する言葉として使われることもあるかもしれません。

このように、個々の表現だけを切り取って考えても、その言葉が何を意味しているのかははっきりしません。その言葉の意味するところを正確に理解するためには、その他の表現を含めた広告全体の中で、その言葉の意味するところを判断する必要があるのです。例えば、体重計に乗ったスリム体型の人の写真があれば、「スッキリ」は痩身効果を意味している場合が多いでしょうし、両手でお腹を押さえた人の写真があれば、便通の改善や整腸効果を意味している場合が多いでしょう。

3 個々の表現で全体の印象が変わるわけではない

逆に考えれば、必ずしも、個々の表現で全体の印象を変えられるわけではないということでもあります。

例えば、健康食品で「これを飲むだけで痩せる」といった広告が、頻繁に優良誤認表示で措置命令を受けています。痩せるためには運動をするか食事制限をする必要があるからです。そのため、「運動と食事制限を組み合わせた結果です」といった記載をすることで、措置命令を免れようとする広告も見られます。しかし、単に「運動」や「食事制限」といった表現を盛り込んでいても、多くの場合、広告全体を見れば、結局は「これを飲むだけで痩せる」という印象を与えてしまっています。実際に、ダイエットサプリの広告で、「運動」や「食事制限」といった表現が含まれていても、措置命令を受けたケースがあります。

4 最後に

このように、広告表現の適法性を判断するためには、広告全体から受ける印象を、最初に考えなければいけません。その判断をするためには、過去に措置命令などの行政処分を受けた事例を収集し、検討することで、判断のコツをつかんでいく必要があります。

薬機法改正で導入される課徴金と措置命令

1 はじめに

薬機法が改正され、課徴金と措置命令の制度が新たに導入されることになりました。
既に、景品表示法では、平成26年11月の法改正により、既に課徴金と措置命令の制度が導入され、運用されています。
そこで、景品表示法の制度との比較も交えながら、薬機法に導入される課徴金、措置命令制度の概要について見ていくことにします。

2 制度導入の契機

改正の契機となったのは、ディオバン事件と呼ばれる臨床研究論文の不正が行われた事件です。
製薬会社のノバルティス社が、1999年に発売したディオバンという高血圧治療薬についての臨床試験が、ノバルティス社の経済的支援の下に行われました。
ところが、この臨床試験にノバルティス社の元社員が関与し、データの不正な操作を行っていたことが、2014年に発覚しました。

この臨床試験の結果は論文に投稿され、ディオバンの売上にも大きな影響を与えたと思われます。
ディオバンの売上は、年間1000億円を超えていたそうです。
しかし、そのような不正がありながらも、ノバルティス社がディオバンの販売で得た利益は何ら手付かずであり、いわば売り逃げではないかとの批判が起こりました。
そこで、そのような不当に得た利益を吐き出させる制度として、課徴金制度の導入が議論されることになったのです。

3 課徴金制度の概要

(1)対象となる行為

国会に提出された薬機法改正案によれば、課徴金の対象となる行為は、虚偽・誇大広告(薬機法第66条第1項)です。
薬機法では、他にも未承認医薬品、医療機器の広告が禁止されているのですが(薬機法第68条)、こちらは課徴金の対象とはなりませんでした。
その理由は、未承認の医薬品や医療機器を販売して得た利益は、その全額が不当なものであり、一部だけを課徴金として納めるのは不適切であるとの議論があったためのようです。

そうすると、課徴金の対象となるのは、承認を得た医薬品や医薬部外品、化粧品、医療機器に限られるかのようにも思えますが、そんなことはありません。
薬機法上、ただの食品や雑品でも、医薬品や医療機器のような効果があるとの広告をすれば、定義上は医薬品、医療機器に該当します。
したがって、その場合に、広告された効果が虚偽・誇大であれば、食品や雑品も課徴金の対象となる可能性があるのです。

上記のとおり、課徴金制度が導入されたそもそもの契機は、医薬品に関する不正でした。
しかし、実際の法改正の議論においては、食品や雑品に関する不当な広告を規制する目的にも明確に言及されています。
したがって、実際に制度が始まれば、食品や雑品が課徴金制度の適用第1号になる可能性も十分にあるでしょう。

4 課徴金の額

課徴金の金額は、課徴金対象期間における売上の4.5%です。
景品表示法では3%ですので、景品表示法より課徴金の金額は大きいことになります。

課徴金対象期間は、虚偽・誇大広告をしていた期間がベースになります。
ただし、虚偽・誇大広告をやめてから6か月を経過するまでの間は、虚偽・誇大広告の影響が残っていると考えられます。
したがって、虚偽・誇大広告をやめた後も販売を継続している場合、6か月を経過するまでは、最後に商品が売れた日までの期間も含まれることになっています。
ただし、6か月が経過するまでの間に、省令で定められた、虚偽・誇大広告の影響を排除するための措置を講じた場合には、その措置を講じた日までしかカウントされません。
また、課徴金対象期間の上限は3年とされています。この点は景品表示法と同じです。

また、課徴金の最低額は225万円とされています。
景品表示法では、課徴金の最低額が150万円とされていますが、いずれも、課徴金対象期間の売上で見れば、5000万円未満の場合には課徴金が課されないこととなっており、この点も同じです。

5 例外的に課徴金が課されない場合

改正法では、虚偽・誇大広告に対して、業務改善命令、新たに設けられた措置命令、製造販売等の許可の取消しや業務停止命令をする場合には、厚生労働大臣の裁量で、課徴金を課さないことができるとされました。
これは、景品表示法にはない仕組みです。
一方で、景品表示法では、優良誤認表示や有利誤認表示をしたとしても、そのことを知らず、かつ、知らないことに相当の注意を怠った者でないと認められる場合には、課徴金が課されない仕組みがあり、こちらは改正薬機法にはないものです。

6 課徴金の減額

景品表示法でも改正薬機法でも、自主的に課徴金の対象となる行為を報告した場合には、課徴金の額が半分に減額されます。

一方、景品表示法では、課徴金対象期間に販売した商品について、一定の条件の下で返金措置を講じることで、その分、課徴金が減額されますが、改正薬機法にはそのような仕組みがありません。
医薬品等の虚偽・誇大広告は、国民の健康に与える影響が大きいため、返金をすれば済む話ではないという発想なのかもしれません。

また、改正薬機法で課徴金の対象となる行為が、同時に、景品表示法でも課徴金の対象となることがあり得ます。
景品表示法の課徴金は売上の3%と、改正薬機法の課徴金よりも少ないため、景品表示法で課徴金納付命令を受けるような場合には、売上の3%分が、改正薬機法の課徴金から控除されることになります。

7 措置命令

改正薬機法では、課徴金制度と同時に、措置命令制度も新たに導入されました。
景品表示法でも取り入れられている措置命令とは、違法な広告がされた場合に、それを止めさせ、再発を防止するために必要な措置を命じる行政処分のことです。

景品表示法では、措置命令が行われた場合に、原則として必ず課徴金納付命令が行われることになっており、両者がセットになっています。
一方で、改正薬機法では、措置命令と課徴金はセットになっていません。
措置命令が行われたとしても、課徴金が課されないこともありますし、措置命令がなくても課徴金を科すことができます。
また、課徴金の対象となる行為は虚偽・誇大広告だけですが、措置命令では、虚偽・誇大広告に加え、未承認医薬品・医療機器の広告も対象に含まれています。

8 最後に

このように、改正薬機法における課徴金と措置命令の制度は、景品表示法と共通する部分もありつつ、法律の目的が異なることから、制度設計も自然と異なるものになっています。
薬機法改正案は、2019年の第198通常国会では成立せず、継続審議となりました。
今年の秋の臨時国会以降での成立が見込まれています。
改正法が成立して交付されると、そこから2年以内に施行され、実際に運用が始まることになります。今から改正に備え、準備を怠らないようにしましょう。

【ニュース】都道府県による措置命令について弁護士成が解説しています。

大阪、東京など…都道府県による措置命令が活発に!

 4月19日、大阪府が流通大手企業に対して措置命令を出しました。これは、チラシに表示していた期間を特定したセール価格に、実体がなかったとして景表法違反になるとされたものです。3月には東京都が、根拠のない痩身効果表示や二重価格表示をしていた通販会社に対して初の措置命令を行なうなど、昨今、自治体による措置命令が活発化してきています。

通販業界最多級の記事本数を誇るニュースサイト「通販通信」では、このニュースを取り上げ、こうした動向について解説しています。

当事務所の弁護士 成眞海(せい しんかい)も、これらの措置命令の出された背景などについて解説コメントを掲載しておりますので、是非ご覧ください。
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