【令和6年2月】エアガン用BB弾の供給に係る表示につき消費者庁より課徴金納付命令

消費者庁より課徴金納付命令(1353万円)

消費者庁は、令和6年2月22日に、株式会社東京マルイに対し、同社が供給するエアガン用BB弾に係る表示について、景品表示法に基づく課徴金納付命令を出しました。

 

今回の件の課徴金の額は1353万円になります。

 

景品表示法に基づく課徴金納付命令の前には、同法に基づく措置命令があります(はじめに措置命令が出され、その後、課徴金納付命令の要件も満たしていると判断される場合に、弁明の機会の付与等の手続きを経て、課徴金納付命令が出されます。)。

 

株式会社東京マルイは、エアガン用BB弾に係る表示につき、令和4年12月に、消費者庁から措置命令を受けていました。

 

そして、今回、同庁より、課徴金納付命令が出されたということになります。

 

今回、措置命令が出されてから課徴金納付命令が出されるまでの期間はおよそ1年2か月でした。

 

消費者庁の指摘事項等

上記会社は、商品につき、自社ウェブサイトにおいて、「バイオ」、「本物の安心感 生(せい)分解(ぶんかい) ベアリング研磨0.20gBB弾 植物由来(PLA)やミネラル成分とで構成された『本物』の生分解、高精度BB弾です。石油系の原材料は一切使用していません。」、「地球環境にやさしい植物由来の素材やミネラル成分で構成」、「土の中や水中の微生物によって、地表落下後に水と二酸化炭素に分解されるため、屋外フィールドでの使用に適しています。」等と表示していました。

 

消費者庁は、これらの表示につき、【あたかも、使用後に地表に残されたままでも土壌中や水中の微生物によって水と二酸化炭素に分解される生分解性を有するかのように示す表示をしていた】と指摘しました。

 

その上で、【実際】として、上記会社に対し、表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めたところ、資料の提出はなされたが、いずれの資料も当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものとは認められなかったと判断し、課徴金納付命令を下しました。

 

景品表示法の規制は、商品・サービスに係る表示につき及びます。

 

今回は、エアガン用BB弾に係る表示が問題視されたものであり、改めて、景品表示法の適用対象は広いものであると感じます。

 

課徴金納付命令により多額の課徴金を課される恐れもありますので、商品・サービスを供給する事業者としましては、景品表示法違反に十分ご注意下さい。

 

 

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措置命令の発令

令和6年2月1日、同月5日、同月6日及び同月7日に、糖質カットを謳った炊飯器又は炊飯調理器の販売業者4社(株式会社ニトリ、Areti株式会社、リソウジャパン株式会社、AINX株式会社)に対し、消費者庁が、それぞれ景表法5条1号の優良誤認に該当することを理由として、措置命令を行ったと発表されました(発表は令和6年2月8日)。

 

措置命令の対象となった会社には、株式会社ニトリも入っており、大手企業に対する措置命令として、反響が大きいものと考えられます。 

 

また、この事案は、措置命令に先立つ令和5年3月15日に独立行政法人国民生活センターが公表した『糖質を低減できるとうたった電気炊飯器の実際』と題する報道発表資料でも問題視されていたものです。同報道発表資料でも、景表法に違反する(優良誤認)恐れがあると指摘されていました。

 

実際、国民生活センターには、消費者から血糖値が変わらないといった訴えや糖尿病の人が使って大丈夫なのかといった相談が寄せられていたようです。 

 

 

優良誤認の内容、不実証広告規制

(1)優良誤認の内容

優良誤認と認定された内容は、非常に単純で、各社が当該炊飯器を使用すれば、通常よりも糖質をカット(各社それぞれですが、33%~59%の糖質カットとの表示)できるとの広告を行ったものの、糖質カットを根拠づける合理的な資料がなかったというものです。

 

実際の機能よりも優れている旨を広告している(広告>実際の機能のずれ)典型的な優良誤認の事例ということができます。

 

(2)不実証広告規制

消費者庁は、優良誤認の該当性を判断する際には、不実証広告規制という手続を利用して判断することが多いのですが、今回の事案も不実証広告規制を利用して進めています。以下、不実証広告規制を解説します。 

 

措置命令に関する不実証広告規制については景表法7条2項、課徴金納付命令に関する不実証広告規制については景表法8条3項に定められています。 

 

不実証広告規制は、消費者庁等が事業者に対し、「当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めること」ができ、事業者が合理的な根拠を示すことができなかった場合、措置命令の場合には優良誤認とみなされ、課徴金納付命令の場合には優良誤認と推定されるという制度です。なお、みなされるというのは争う余地がなくなることを意味し、推定の場合には争う余地があるものの覆すのは大変です。 

 

不実証広告規制における合理的根拠については、

①提出された資料が客観的に実証された内容のものであること

②表示された効果、性能と提出資料によって実証された内容が適切に対応していること

という要件を満たす必要があります。

 

上記①については、試験・調査によって得られた結果や専門家等の見解又は学術文献を根拠とする必要があります。また、上記②については、例えば、試験結果と実際に使われる状況が異なっている場合には、要件を満たさないということになります。試験結果等や学術論文等は、実際の使用状況等と合致する必要があります。 

 

消費者の声が措置命令につながることが多い

当事務所も、事業者の担当者などから、どのような場合に消費者庁から措置命令等が出されるのか質問を受けることが多いです。

 

このような質問を受けた際に、「消費者からのクレームが多い商品・サービスについては、調査の対象となりやすく、調査命令につながることがある」と回答することがあります。つまり、消費者の声が措置命令につながるということです。 

 

今回の措置命令は、まさにそのパターンと言えるでしょう。 

 

 

 

 

最後に

今回、優良誤認の場合における措置命令の事案紹介しました。事業者からすれば、優良誤認とならないようにその根拠資料を準備することが非常に重要であることはもちろんです。

 

それとともに、消費者の声やクレームについても意識して対応する必要があることを意識してもらえればと思います。

 

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【令和6年1月】二酸化塩素による空間除菌を標ぼうする商品の販売業者に対する措置命令について

令和6年1月26日、29日及び30日、二酸化塩素による空間除菌を標ぼうする商品の販売業者4社に対し、景品表示法に基づく措置命令が行われました(消費者庁「二酸化塩素による空間除菌を標ぼうする商品の販売事業者4社に対する景品表示法に基づく措置命令について」https://www.caa.go.jp/notice/entry/036222/)。

 

二酸化塩素による空間除菌を標ぼうする商品については、令和4年1月にも大手製薬会社の人気商品が措置命令の対象となり、大きなニュースとなりました。その後も空間除菌を標ぼうする商品に対する措置命令が続いています(令和5年12月21日及び22日の措置命令事案についての解説は、こちら:

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指摘点と消費者庁の判断

今回、措置命令を受けた販売業者の商品は、いずれも、当該商品を室内に設置したり、身体や鞄にぶらさげることで、空間に浮遊する菌を除菌する効果があるような表示を、商品パッケージやウェブサイトにおいて行っていたことを指摘されました。

 

処分を受けるまでの間で、販売業者各社が、かかる表示について合理的根拠があることを示すための資料を提出したようですが、消費者庁は、いずれも表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものであるとは認められないと評価しました。その結果、販売業者の行っていた表示は、優良誤認表示として、景品表示法に違反するとの判断がなされました。

 

優良誤認表示に該当し処分を受けるか否かは、表示に合理的根拠があると示すことができるかにかかっていますが、このハードルは高いと実務上、言われています。

表示の根拠となる試験を実施している場合も、試験の内容が表示とぴったり合致しているかが確認されることとなります。特に商品の効果について具体的数値を伴った表示をしている場合、どのような使用環境・条件でも等しく当該数値の効果が表れるのか、問題視されやすい傾向にあります。

 

広告をするにあたっては、真実に合致した表現をすることはもちろんのこと、広告表示としてどこまで言及することができるかのか、慎重な検討が必要です。

 

行政指導記事

>【販売中止・自主回収指導】医薬品成分を含む健康食品について

>機能性表示食品の販売会社に対する措置命令

>【令和5年12月22日発出】空気清浄効果等を標ぼうする商品の製造販売会社に対する措置命令

【販売中止・自主回収指導】医薬品成分を含む健康食品について

はじめに

「メンズワイプゼロ」「メンズワイプゼロマイルド」という製品について、令和5年12月14日に長崎県から、令和6年1月19日に北海道から、医薬品成分である「アトロピン」、「スコポラミン」、「メサコニチン」が検出された旨の指摘がなされ、医薬品医療機器等法第55条第2項(無承認医薬品の販売・授与等の禁止)違反に当たるとし、この製品を販売中止及び自主回収するという事態になりました。

 

これはなぜ法律に反することになってしまったのでしょうか。

 

医薬品を販売するには承認が必要

医薬品は、人の生命・身体に影響を及ぼす可能性が高いため、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(以下「薬機法」といいます)において、開発から製造・販売まで厳しく規律されています。いくつもの実験や(非)臨床試験をし、国の承認審査を経て、ようやく製造販売ができるようになります。

 

このように、厳格な過程を経ずに無承認で医薬品を販売することはできず、必ず国の承認が必要になります。

 

本製品は、医薬品であるにもかかわらず承認を得ていなかったため、薬機法に違反することになりました。

 

 

何が医薬品にあたるか

薬機法上、医薬品とは、以下のものとされています。

 

①日本薬局方に収められている物

②人または動物の疾病の診断、治療または予防に使用されることが目的とされている物であって、機械器具等でないもの

③人または動物の身体の構造または機能に影響を及ぼすことが目的とされている物であって、機械器具等でないもの

 

本件では、本製品に含まれていた「アトロピン」等が医療用医薬品として日本薬局方に収められているので、①に該当し、医薬品ということになります。

また、医薬品成分が含まれていなくても、人または動物の疾病の診断、治療または予防に使用される目的を有するものは、医薬品にあたりますので、本件では問題となっておりませんが、医薬品的な効能効果をうたって健康食品を販売したような場合にも、未承認医薬品の販売や広告の規制に反することになります。

 

まとめ

本件は、医薬品成分が含まれていることから、未承認医薬品の販売にあたるという判断になりました。

 

医薬品成分が含まれていない場合でも、医薬品的効能効果をうたうと医薬品になってしまうので、注意しましょう。

 

 

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景品表示法で規制されるステマ規制とは?過去のステマ事例紹介

2023年10月からステマ規制が始まりました

令和5年3月28日、景表法5条3号の内閣総理大臣の指定告示にステルスマーケティングが加わ、同年10月1日からステルスマーケティング規制が始まりました。ステルスマーケティング規制に違反すると、消費者庁から行政指導がなされる、措置命令(景表法7条)が出る可能性があります。措置命令が出た場合、事業者名や行為が公表されます。

 

ここでは、ステルスマーケティング規制が始まる前に、過去、ステルスマーケティングであると騒がれたことのある事例を見ていこうと思います。そして、どのように対応すれば、ステルスマーケティング規制に違反しないようになるかを確認したいと思います。

 

過去のステルスマーケティング事例

なりすまし型と利益提供型

ステルスマーケティングは、様々な手法がありますが、代表的な類型としては、なりすまし型と利益提供型があります。なりすまし型は事業者や広告会社が一般消費者などを装って表示することを、利益提供型は事業者が第三者(有名人やインフルエンサー等)に対して利益を提供して、そのことを秘した状態で第三者が表示をすることをいいます。

 

では、過去の事例を見ていきましょう。

 

●なりすまし型

飲食店が口コミ代行業者に報酬を渡して高評価の口コミの書き込みを依頼し、ある会社が運営している飲食店の評価サイトにおいて高評価を得ていたという事例がありました。

 

次に、ある2社が家庭用ゲーム機のシェア争いをしている中で、一方の家庭用ゲーム機に不具合が生じました。当該不具合は、巨大掲示板やブログ等でも大いに話題になりました。そのような中で、不具合の出た家庭用ゲーム機を擁護し、他方の家庭用ゲーム機を非難するような書き込みがなされました。多くの書き込みがなされたことから、組織的に行われたのではないかと疑われ、不具合の生じた家庭用ゲーム機を販売している会社の従業員が行っていたのではないかという疑いのあった事例があります。

 

●利益提供型

あるオークションサイトから依頼を受けた有名人たちが、依頼を受けたことを秘して、オークションサイトで商品を安く落札できたなどと投稿していたという事例がありました。ステルスマーケティングを行った有名人はバッシングを受け、ステマという言葉が世に広まった事例です。

 

次に、ある有名なアニメーション映画を制作した会社が、同映画の感想を漫画にして公表することを漫画家に依頼し、報酬を支払いました。依頼を受けた漫画家は、PRや広告であることを表示せずに、同映画の感想漫画を公表したという事例があります。この事例では、会社がステルスマーケティングに関する表示が不足していたことについて謝罪文を公表しています。

 

ステルスマーケティングのデメリット

ステルスマーケティングのデメリットは、既に述べたとおり、事業者に対して、措置命令が出されて公表されるということになります。それに加えて、有名人やインフルエンサー等がバッシングを受けるなどして、仕事や影響力を失うといったことがありました。

 

ステルスマーケティングは、一般人から指摘を受けると炎上しやすく、事業者のみならず、関与した有名人やインフルエンサー等も大きなダメージを受ける可能性があります。

 

 

どのような対応をすれば良かったのか

一般消費者は、広告であることを認識すれば、多少の誇張や誇大表現があることを理解して商品等を選択すると言われています。そして、この観点から、消費者庁が事業者に求めていることは、一言で言えば、「一般消費者にとって広告であることが分かる表示」です。

 

上記事例においても、「広告」、「PR」という表示をしておけば、ステルスマーケティング規制の違反とはならないと考えられます。また、「広告」、「PR」といった表示がそぐわない場合、「○○から依頼を受けて~~をしています」といった表示をすることでも、ステルスマーケティング規制には違反しないと考えられます。なお、「広告」、「PR」等の表示したらできないような書き込み等は、そもそもすべきではありません。

 

 

さいごに

「広告」、「PR」といった表示は、ステルスマーケティング規制を回避する最も簡単な方法です。しかしながら、ステルスマーケティング規制の内容を理解していれば、自社のマーケティング方法がステルスマーケティング規制に違反しないかということを判断することができます。

 

 

ここでは、紙面の都合上、部分的にしか紹介ができませんが、ステルスマーケティング規制の全体像、自社においてどのように対応すれば良いのかといったことを理解しておくのが良いでしょう。

 

 

読者の方の参考になれば幸いです。

【令和5年12月22日発出】空気清浄効果等を標ぼうする商品の製造販売会社に対する措置命令

消費者庁が、空気清浄効果等を標ぼうする商品の製造販売業者2社に対して、同商品に係る表示について、景品表示法上の優良誤認表示に該当するとして、措置命令を行いました。(参考:https://www.caa.go.jp/notice/entry/035721/

 

空気清浄効果等を標ぼうする商品の表示に対する措置命令としては、令和4年1月に大手製薬メーカーの人気商品に対する措置命令が出されたことが記憶に新しいです。コロナ禍に入り、一般消費者の除菌等への意識が高まったこともあり、それ以降除菌を含む空気清浄効果に関する商品の表示には、行政も目を光らせているように感じられます。

 

また、令和4年1月の措置命令時と同様、今回の措置命令も、消費者庁は、景品表示法第7条2項に基づき、商品表示の裏付けとなる合理的根拠を示す資料の提出を求め、2社とも同資料の提出を行ったものの、それらの資料は合理的な根拠を示すものと認められなかったことから、措置命令を出されるに至っています(不実証広告規制)。

 

2社がどのような資料を提出したのか、提出資料のうちどういった点が合理的根拠にならないと評価されたのか等は公表されていませんが、短期間で資料提出を行わなければならないこと、表示内容と合致する資料を提出できない場合、合理的根拠と認められていないのではないかと思われること等から、景品表示法の優良誤認表示に該当しないようにするためには、実際の効果をそのまま表示するよう細心の注意を払う必要があるといえます。

 

コロナ禍で注目を浴びた除菌関係の効果を有する商品等、消費者からのニーズが高い商品類型は、ニーズに比例して行政からの注目も浴びやすいため、表示内容・表示方法にも、より注意を払うようにしましょう。

 

機能性表示食品の販売会社に対する措置命令

12月19日に、機能性表示食品に関して消費者庁から措置命令が行われたことが公開されました。
(参考:https://www.caa.go.jp/notice/entry/035684/)
 

機能性表示食品に関しては12月5日にも別の事案で措置命令が行われており、2週間程で2件も指導が行われていることになります。そして、5日も今回もいずれの措置命令も商品がいわゆる痩身効果を有するサプリメントであることが共通しており、痩身関連に関しては、措置命令が多い消費者庁の傾向が踏襲されています。
 

今回の措置命令の内容と5日の措置命令の内容を比較すると、痩身効果について強調をし過ぎているという指摘は共通の指摘となっていました。それに加え、今回の措置命令では、No.1表示に関しても指摘がされています。具体的な指摘内容としては、No.1を表示するための根拠となる調査が、調査対象者が実際に商品を使用したことがあるかどうかを確認せず、WEBサイトのイメージのみで商品を選択させるという客観性を欠く調査方法でありました。そのため、不適切な調査方法に基づく結果をNo.1表示の根拠としたことが問題として指摘をされています。
 

上記のとおりですが、今回の措置命令から、機能性表示食品といえども誇大な表示は認められないということや、No.1表示をする場合の根拠となる調査方法に関しては、適正な方法で行うことということが示されています。特に、No.1表示等の比較広告を行う際の注意事項は消費者庁からもガイドラインが提示されておりますので、改めて確認すると良いでしょう。
 

【参考】
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/guideline/pdf/100121premiums_37.pdf

【令和5年11月27日発出】ダイエットサプリメント(機能性表示食品)に対し消費者庁より措置命令

サプリメント(機能性表示食品)に対し消費者庁より措置命令

消費者庁は、令和5年11月27日、サプリメント販売会社が販売するサプリメント(機能性表示食品)につき、景品表示法に違反する行為(優良誤認表示)があるとして、措置命令を出しました。
当該商品は、ダイエット効果などをうたったサプリメントであり、機能性表示食品としての届け出がなされているものでした。
消費者庁は、今回、事前に届け出た機能性を超える、科学的根拠のない効果を広告表示しているなどとして、販売会社に対し措置命令を出しました。
なお、消費者庁は、今年の6月30日にも、機能性表示食品の届け出のある商品に対し措置命令を出しています。

機能性表示食品について

機能性表示食品制度とは、国の定めるルールに基づき、事業者が、食品の安全性と機能性に関する科学的根拠などの必要な事項を販売前に消費者庁長官に届け出れば、機能性を表示することができる、という制度です。
この制度に基づいた食品を、「機能性表示食品」といいます。
例えば、きちんとした科学的根拠に基づき「〇〇という成分には高めの血圧を下げる効果が報告されている」ということが言え、必要な各事項を商品販売前に届け出れば、その商品の広告において、届け出内容である「〇〇という成分には高めの血圧を下げる効果が報告されています」という内容を表示することが出来るのです。
また、機能性表示食品制度は、消費者庁長官の許可や認可を受けるまでは不要であり、届け出で足ります。この制度は平成27に始まったものですが、訴求効果が期待でき、また、届け出で足りることもあってか、年々、届け出件数が増えていました。
とはいえ、届け出で足りると言っても、事業者がその責任をもって、科学的根拠に基づいて機能性を表示する必要があります。事業者が根拠としている科学的根拠が裏付けとならないものである場合、届け出内容と合致した広告であったとしても、法律違反を指摘される可能性があります。
また、届け出た内容の範囲を逸脱するような表示をしてしまった場合も、法律違反を指摘される可能性がありますし、「国のお墨付き」といった表現をした場合も違反を指摘される可能性があります。
また、ある成分に機能があるのであり、商品自体に機能があるとの根拠を有していないにもかかわらず、商品自体に機能があるかの如く表示することも認められません。
上記の例で言えば、「△△(商品名)には〇〇という成分が含まれています。〇〇という成分には高めの血圧を下げる効果が報告されています。」と表示するのは良いのですが、「△△(商品名)には高めの血圧を下げる効果が報告されています。」と表示したり、単に、「高めの血圧を下げる効果が報告されています。」とだけ表示したりすることは認められません。

今回、何がいけなかったのか

消費者庁は、今回、①合理的な根拠なく、あたかも本件商品を摂取すれば、誰でも、容易に、外見上、身体の変化を認識できるまでの痩身効果や顔面の美白(シミが薄くなる)効果、抗アレルギー効果、アンチエイジング効果等の効果が得られるかの如く表示をしていたことや、②消費者庁や国が痩身効果を認めているかの如く表示をしていたを理由に措置命令を出しました。
今回の商品については、機能性表示食品としての届け出があり、届け出の内容は、「本品には、りんご由来プロシアニジンが含まれます。りんご由来プロシアニジンには肥満気味な方の体重、体脂肪、内臓脂肪、ウエストサイズの減少をサポートすることにより、高めのBMIを減らす機能が報告されています。BMIが高めの方に適した食品です。」というものでした。
これに対し、実際の広告においては、①段々となった腹部の肉をつまむ人物のイラスト及び細身の人物のイラストや、「モデル級の体型をGET!」、「美白効果」、「シミが薄くなっていることも確認をされました♪」、「抗アレルギー」、「アトピー性皮膚炎患者の痒み軽減効果」、「アンチエイジング」等の表示がされ、また、②「機能性表示食品とは、根拠に基づいて効果が届出されているもので国が激やせする効果を認めているんです!」、「国が痩せると認めたサプリ」、「国が痩せる効果を認めた機能性表示食品」等の表示がされていました。
これに対し、消費者庁より、前記の通りの指摘がなされたところとなります。
なお、商品の広告においては、痩身効果以外の効果につき、「※試験結果は出ておりますが機能性表示では未承認」といった記載や、商品自体の説明ではなく商品に「配合されている主成分の試験結果及び説明です」といった記載があるなどしましたが、それらの記載があるからといって、違反にならないものではありません。

まとめ

今回、今年の6月に続き、消費者庁が、機能性表示食品に対し措置命令を出しました。
当然のことではありますが、機能性表示食品であったとしても、不適切な広告をしていた場合、措置命令の対象となりますし、年々、機能性表示食品の届け出が増えていた状況もあり、消費者庁において、機能性表示食品に対してもきちんと目を光らせていると言えるでしょう。
機能性表示食品の広告をするにつき、合理的な根拠、科学的な根拠に基づく必要がありますし、届け出の範囲を逸脱した内容の広告をすることも出来ません。また、消費者庁や国がお墨付きを与えたような表示をすることも出来ません。
機能性表示食品についても、それらの点に注意しながら、適切な広告をする必要があると言えます。

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腫瘍に効く水を販売したとして薬機法違反で逮捕された件について弁護士が解説

腫瘍やアレルギー、高血圧を予防できる水を販売して刑事事件に

腫瘍やアレルギー、高血圧の予防効果が期待できると称した水を販売したとして、警視庁生活環境課が、令和5年11月30日までに、薬機法違反の疑いで、東京都港区の医療機器販売会社の代表取締役ら4人を逮捕したと発表しました。また、同じ容疑で、会社についても、書類送検したとのことです。

 

 

薬機法における未承認医薬品の広告について

薬機法68条は、承認前の医薬品や医療機器等の効能効果の広告を禁じています。つまり、承認されていないにもかかわらず、医薬品や医療機器等に認められる効能効果(これを「医薬品的効能効果」などといいます。)を広告することは、薬機法68条に違反することとなります。そして、薬機法68条に違反すると、薬機法85条5号によって、二年以下の懲役または二百万円以下の罰金が科される可能性があります。

 
疾病の治療又は予防を目的とする効能効果は医薬品的効能効果ですので、本件も未承認医薬品の広告をしたと疑われて逮捕されたものと考えられます。腫瘍(ガン)というと疾病(病気)の代表格ですから、医薬品的効能効果の広告というのも分かるかと思います。

 

 

なぜ、未承認医薬品とされるのか?

ここで、水は医薬品ではないのではないか?ということから、何故、未承認医薬品の広告となるのか疑問に思った方もいらっしゃるかもしれません。ここにも、薬機法の解釈が関わってきます。薬機法2条に医薬品の定義が定められており、また、旧厚生省が出した「無承認無許可医薬品の指導取締まりについて」(「四六通知」と呼ばれています。)という通知が、薬機法2条の解釈について方向性を示しています。

 
薬機法2条と四六通知によると、医薬品的効能効果を広告している物(医薬品的効能効果を目的としている物)は薬機法上、医薬品に該当するものと解釈することができます。

 
したがって、水(人によって何らかの加工がなされている水のようです。)であったとしても、広告内容如何によって、薬機法上、医薬品と評価されることになります。そして、当然、当該水は、医薬品として承認されているわけではありませんので、医薬品的効能効果を広告することによって、未承認医薬品の広告、薬機法68条違反となるわけです。

 
広告内容次第で薬機法違反、刑事罰につながってしまうということに注意が必要です。

 

 

本件についての雑感

本件に関する報道によると、販売されていた水は、通常の飲料水の成分と変わりがないとのことです。とすると、効能効果がないにもかかわらず、販売している水に効能効果があるように装った上、購入者を騙してお金をもらっているので、詐欺ではないかと考える方もいらっしゃると思います。

 
ここで、薬機法68条違反と詐欺の違いについて少し触れておきたいと思います。
薬機法68条違反は、先ほども紹介したとおり、医薬品的効能効果を謳った未承認医薬品を広告することです。

 
それに対し、詐欺罪は、加害者の欺罔行為、被害者の錯誤、被害者の処分・交付行為、被害者から加害者への利益移転といった要素で構成されています。少し難しいですが、例を挙げて説明をすると、「実際には効能効果がないにもかかわらず、ガンに効く水であると広告をして購入申し込みを待つこと」(加害者の欺罔行為)、「被害者が広告を信じて、ガンに効く水と信じてしまうこと」(被害者の錯誤)、「被害者が当該水を、お金を出して購入すること」(被害者の処分・交付行為、被害者から加害者への利益移転)ということになります。

 
薬機法68条違反も、詐欺罪も、検察官が有罪であることを証拠によって立証しなければなりません。その観点から見ると、薬機法68条違反の方が詐欺罪の立証よりも難易度が低いことがよく分かります。つまり、薬機法68条違反は、あくまで未承認医薬品の広告が存在するということが中心的な立証対象です。広告が正しいか否かは問題とはなりません。しかしながら、詐欺罪の場合には、実際にはガンに効果がないことも立証対象としなければならなくなり、その立証の難易度は非常に高くなります(文系の私には、その立証方法もよく分かりません。)。

 
そういった理由もあって、警察官や検察官としても、立証しやすい薬機法68条違反(広告に着目すれば良い)を選択して逮捕に至ったのかもしれません。

 

 

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ダイエット・痩身効果系や若返り系のワード以外にも、ビフォーアフター写真のようなダイエット・痩身効果や若返りを暗示する写真やイラストでの表現も薬機法違反の対象となりますので注意が必要です。
弊所では美容広告に詳しい弁護士が多数在籍しており、皆様のご不安に寄り添うことができます。

 

 

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陥りやすい薬機法(薬事法)違反の例と刑罰とは?

医薬品・または医薬部外品であるかのような表現化粧品やサプリメント、食品にはそれぞれ登録された種別により効果効能を表現できる範囲が明確に決まっています。そのため例えば化粧品を医薬品のような表現で表したり、一般食品を機能性表示食品かのように表現したりすると薬機法に抵触しているとみなされます。


自社ホームページ以外の場所で効果効能を表現

自社のホームページには効果効能は表現していないが、委託または提携している広告会社が行ったインターネットでの広告や紙によるちらしなどに効果効能が表現されていた場合も薬機法違反です。

体験談のサイトを立ち上げ、そこにリンクがされていた場合

体験談のサイトなどを自社のホームページとは別に制作し、直接的な商品名は記載されていないがリンクを入れていた場合は、その体験談の中に効果効能が表現されている場合は広告とみなされ違反となってしまいます。


また、化粧品については体験談の記載も薬機法では禁止されています。

海外から個人輸入した化粧品をそのまま転売

個人輸入の場合でも国内で販売を目的とすれば、化粧品製造販売業許可が必要になります。さらに、日本語で製造業者の氏名・名称・住所など定められた表示方法に従わなければなりません。

容器が小さくて成分の表記を略した場合

化粧品本体のサイズが小さいために、配合されている成分が全て書かれていない場合は薬機法違反です。小さくてもタグやディスプレイなどを使って表示することが定められています。尚、本体に十分な幅がありきちんと明記されていた場合でも、その本体が箱に入って消費者がすぐに確認できない状態の場合は、薬機法上その外箱にも明記することが義務づけられています。


ご自身の作成された広告が上記に該当している!と気がついた方は要注意です。
次に解説する薬機法に基づく広告規制をきちんと把握しましょう。

【薬機法に基づく広告規制の判断枠組みについて】


薬機法基づく広告規制の判断枠組みの概要を以下ご説明します。

薬機法の主な広告規制の概要

薬機法の主な広告規制は、医薬品等の虚偽誇大広告を禁止する第66条第1項及び第2項、そして、未承認医薬品等の広告を禁止する第68条の2つです。

(1)虚偽誇大広告の禁止(第66条第1項及び第2項)

以下の要件をみたすと、第66条第1項に違反します。

①何人も
②医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の
③名称、製造方法、効能、効果又は性能に関して、
④明示的であると暗示的であるとを問わず、
⑤虚偽又は誇大な記事を広告し、記述し、又は流布すること
なお、第66条第2項には、医師等による効能等の保証広告を禁止する規制が、以下のとおり定められています。
①医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の
②効能、効果、性能について
③医師その他の者がこれを保証したものと誤解されるおそれのある記事を広告し、記述し、又は流布すること

当該広告は、第66条第1項に違反するものとされます。

(2)未承認医薬品等の広告禁止(第68条)

以下の要件をみたすと、第68条に違反します。



①何人も
②未承認医薬品、未承認医療機器又は未承認再生医療等製品について
③名称、製造方法、効能、効果又は性能に関する
④広告をすること



第66条と異なり、虚偽・誇大ではなく事実であっても直ちに違法となる点に注意が必要です。

注意すべき主なポイント

(1)主体

薬機法の広告規制の対象は「何人も」とされており、国内の製造販売事業者だけでなく、海外の製造販売事業者も規制の対象となりえます。

(2)医薬品等の定義

医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器及び再生医療等製品について、薬機法の第2条第1項から第9項に定義が定められています。「医薬品」を例にとってみると、「人又は動物の疾病の診断、治療又は予防に使用されることが『目的』とされている物…」(同条第1項第2号)、「人又は動物の身体の構造又は機能に影響を及ぼすことが『目的』とされている物…」(同項第3号)というように、治療や予防等の効果が客観的に備わっているかどうかではなく、あくまでそういった用途で使われることが『目的』とされている物という定義になっています。

よって、事業者としては、ある商品を健康食品として販売していても、たとえば、その商品の広告に病気の治療や予防効果があると記載していると、そういった治療や予防に使われることが『目的』とされている物ということになり、当該商品は、薬機法上「医薬品」に該当するということです。

そうすると、当該事業者としては、当該商品を健康食品として販売しており、医薬品としての承認を取得していないため、当該広告は、未承認医薬品の広告となり、直ちに第68条違反になってしまいます。そして、病気の治療や予防の効果がなければ、虚偽誇大広告として第66条第1項にも違反することになります。

「医薬品」に該当するか否かを判断するにあたっては、『無承認無許可医薬品の指導取締りについて』(昭和46年6月1日薬発第476号)が参考になります。このいわゆる46通知は健康食品の広告をチェックする上で、重要な通知となっています。

(3)広告の定義

以下の3要件全てをみたすと、薬機法第66条及び第68条の「広告」に該当します(平成10年9月29日医薬監第148号)。

①顧客を誘引する意図が明確であること(誘引性)
②特定の商品名が明らかであること(特定性)
③一般人が認知できる状態であること(認知可能性)

逆に1つでも満たなければ「広告」にはあたりませんので66条及び68条は適用されません。

「広告」の該当性に関して、①健康食品の商品名を記載したWebページ及び②特定性を排しつつ当該商品に含まれる成分等の医薬品的効能効果を記載したWebページの一体性が問題となることがあります。

①だけ見れば、「広告」には該当するものの、医薬品的効能効果が記載されていないため、第68条には違反しません。また、②だけ見れば、特定性に欠けるため「広告」に該当しません。

しかし、①と②がリンクや検索誘導等によって、実質的に一体の「広告」と見ることができる場合には、全体として第68条に違反する「広告」となるおそれがあります。

(4)医薬品等適正広告基準

第66条に該当するか否かの判断基準を厚生労働省が具体的に示したものが、『医薬品等適正広告基準』(平成29年9月29日薬生発0929第4号)です。また、同時に『『医薬品等適正広告基準の解説及び留意事項等について』(平成29年9月29日薬生発0929第5号)という詳細な解説が公表されており、参考になります。

広告表現が法律に違反しているかどうかの判断手法


景品表示法や薬機法との関係で広告表現には注意が必要といっても、どのような表現が法律に違反するのかが曖昧で分かりにくいという声をよく耳にします。実際、広告表現がこれらの法律に違反しているかどうかについて、明確な基準はなく、広告表現が法律に違反しているかどうかを見極めるためには、判断手法の基本的な考え方を理解しておく必要があります。

(1)個々の表現ではなく、全体の印象で判断される

まず、広告表現が法律に違反しているかどうかは、個々の表現ではなく、全体から受ける印象で判断されます。

例えば、「スッキリ」という表現は、ダイエットを謳うサプリなどの広告で、痩身効果を暗示する言葉として、よく使われます。しかし、「スッキリ」という表現は、便通の改善や整腸作用を意味する言葉としても使われることがあります。また、他にも味覚を表現する言葉として使われることもあるかもしれません。

このように、個々の表現だけを切り取って考えても、その言葉が何を意味しているのかははっきりしません。その言葉の意味するところを正確に理解するためには、その他の表現を含めた広告全体の中で、その言葉の意味するところを判断する必要があるのです。

例えば、体重計に乗ったスリム体型の人の写真があれば、「スッキリ」は痩身効果を意味している場合が多いでしょうし、両手でお腹を押さえた人の写真があれば、便通の改善や整腸効果を意味している場合が多いでしょう。

(2)個々の表現で全体の印象が変わるわけではない

逆に考えれば、必ずしも、個々の表現で全体の印象を変えられるわけではないということでもあります。

例えば、健康食品で「これを飲むだけで痩せる」といった広告が、頻繁に優良誤認表示で措置命令を受けています。痩せるためには運動をするか食事制限をする必要があるからです。そのため、「運動と食事制限を組み合わせた結果です」といった記載をすることで、措置命令を免れようとする広告も見られます。

しかし、単に「運動」や「食事制限」といった表現を盛り込んでいても、多くの場合、広告全体を見れば、結局は「これを飲むだけで痩せる」という印象を与えてしまっています。実際に、ダイエットサプリの広告で、「運動」や「食事制限」といった表現が含まれていても、措置命令を受けたケースがあります。

(3)最後に

このように、広告表現の適法性を判断するためには、広告全体から受ける印象を考えなければいけません。その判断を適切にするためには、過去に措置命令などの行政処分を受けた事例を収集し、検討することで、判断のコツをつかんでいく必要があります。

商品ではなく含有成分の広告でも措置命令を受ける?


景品表示法では、「商品の」品質などについて、著しく優良であると示す表示を、優良誤認表示として禁止しています。そのため、これまで優良誤認表示を理由として措置命令が出されるのは、すべて具体的な商品についての広告でした。しかし、2019年11月1日、消費者庁は、これまでと異なり、健康食品について、具体的な商品ではなく、含有成分に関する広告に対し、措置命令を行いました。

(1)背景事情

このように、具体的な商品名を記載せず、含有成分についてだけ記載する表示は、非常によく見られます。その理由は、景品表示法ではなく薬機法にあります。

薬機法においては、健康食品について医薬品的効能効果を広告することは禁止されています。しかし、薬機法の適用対象となる広告は、上記のとおり、①誘引性、②特定性、③認知性の3つの要件を満たすものに限られます。そのため、健康食品の商品名を明らかにせずに、含有成分について医薬品的効能効果を表示しても、薬機法違反とはならないのです。

(2)含有成分の表示が薬機法違反となる場合

しかし、実際に事業者側が意図しているのは、含有成分の医薬品的効能効果と、具体的な健康食品の商品とを、消費者側で結び付けてもらうことにある場合がほとんどです。そのため、事業者としては、両者を結び付けるべく様々な工夫をするのですが、そのような工夫が薬機法に違反することがあります。

例えば、含有成分の医薬品的効能効果を記載しているウェブサイトに、当該成分を含有している健康食品の購入サイトへのリンクを張り、遷移することができるようにしていた事案において、両者が実質的には一体の広告であると判断され、薬機法違反で摘発されるということがありました。

(3)含有成分の表示が景品表示法違反となる場合

実は、前述した景表法に基づく措置命令も、薬機法の場合と同じように考えることができます。

前述の措置命令は、単に含有成分の表示だけを取り上げて優良誤認表示と判断したわけではありません。この事案では、まず、ウェブサイトにおいて「ブロリコ」という成分について、免疫力の向上や、病気の治療・予防効果があるという表示をしていました。

消費者は、当該ウェブサイトを通じて「ブロリコ」に関する資料請求をすることができ、資料請求があると、「ブロリコ」についてウェブサイトと同じような表示がされた冊子やチラシに加え、具体的な商品の注文はがき付きチラシと、当該商品の無料サンプルが送付されるという仕組みになっていました。

消費者庁は、そのような全体の仕組みを捉えて、ウェブサイトや冊子、チラシについても、具体的な商品に関する広告であると判断し、優良誤認表示と認定したのです。景品表示法においては、このような判断は初めてのものですが、薬機法の観点からは、従来から行われていた規制の延長と考えることもできるでしょう。

年々取り締まりが厳しくなる薬機法(旧:薬事法)。違反すると自主回収や逮捕、罰金、懲役など重い罰が科されてしまいます。一度専門家に相談してみるのがいいのではないでしょうか。

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若返り系のワード以外にも、ビフォーアフター写真のような若返りを暗示する写真やイラストでの表現も薬機法違反の対象となりますので注意が必要です。

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