化粧品メーカーのクレーム対応ですべきこと

 化粧品は肌に触れるものですので、クレームは避けては通れません。クレームの中には色彩的にイメージと違ったというお客様の主観的なものから、肌トラブルのような健康被害まで様々です。これらのクレームへ謝罪して対応するだけではなく、しっかりと状況を確認し、時には商品を回収して被害状況を検証し、再発防止策を練ることも大切です。

クレームの種類

 化粧品メーカーでは、お客様からクレームを受けることも多く、その対応には注意が必要です。
 化粧品および薬用化粧品に関するクレームとしては、
 
・製品そのものの不具合
・製品を使用して、期待していたものと異なる
・製品を使用して、皮膚トラブルなどが起こった

 などがあります。

状況確認の必要性と対処方法

 たとえば、「外装が破損している」など、製品そのものの明らかな不具合に関するクレームに対しては、不具合の状況を確認した上で、速やかに正常品と交換することが大切です。
 これに対して、「異臭がする」「色がおかしい」など、製品そのものの不具合ではあるものの、原因が不明な場合、まずはお客様から不具合の具体的な状況、すなわち、

・どういう種類の異臭か、どういう色か
・いつ頃から発生したか
・商品のどこから発生したか

などの事情を聴き取り、不良品を回収して原因を特定する必要があります。また、実際に不具合を確認できた場合も、不具合の発生に至る経路まで特定して、再発防止に努めなければなりません。不具合に至る原因として、原材料自体が汚染されていることもあれば、製造過程で工場のラインの一部が不衛生な状態であったこともあるでしょうし、あるいは、化粧品を入れるビンや箱等の容器が汚染されていることもあるなど、様々な原因が考えられるからです。不具合の原因や発生に至る経路を特定できたら、クレームを出したお客様や必要に応じて行政に報告すると共に、汚染の原因を改善すべく対策を講じることが大切です。
 その一方で、「想像していたテクスチャーと異なる」など、使用者の主観に基づくクレームに対しては、商品の特徴を丁寧に説明するなどして、お客様の理解を得るよう努める必要があります。

健康被害が出たクレームへの対応

 しかし、実際に使用した結果、肌トラブルなどの健康被害が生じたというクレームの場合は、化粧品メーカーとして製造物責任を問われるおそれも出てきます。製造物責任は、製造物の欠陥が原因で、被害者の生命、身体又は財産に損害を与えた場合に、損害を賠償しなければならないというもので、よほどの事情がない限り免責されません。また、一度健康被害が生じてしまうと、1人の被害者の損害を賠償したとしても、製品の流通に伴って被害が拡大していったり、悪評が一気に広がってしまい、その後のメーカーの売上に大打撃を与えたりすることもあります。したがって、健康被害を生じたようなクレームを受けた場合は、可及的速やかに被害者の救済に乗り出すと共に、直ちに不良品を回収して被害の拡大を食い止め、再発防止を徹底することが不可欠です。

美容医療でのクレーム対応と予防

シミ取りや脱毛などの美容医療サービスの現場においては、患者からのクレーム、トラブルは避けて通れないものと思います。患者様は自分の思い描いたような姿になることを想像しながら施術を受けるため、思ったよりも効果がでなかったり、施術後に痛みや傷が残ったり想像もしていなかった事態になると一転してトラブルとなってしまうのです。

美容医療クレームとなる原因

美容医療の現場においてクレームが生じる理由としては、以下のことが考えられます。

①患者が期待したとおりの結果が得られるとは限らないこと

医療全般にいえることですが、患者が期待したとおりの結果が得られるとは限りません。特に、美容医療は、患者の外貌に関わる問題であることから、治療の結果に対する患者の要求が非常に高く、期待通りでなかったという感情を抱く機会が通常の医療より多いといえるのではないでしょうか。

②患者が完全に満足する医療サービスを提供することは困難であること

患者に医療サービスを提供する過程には、医師だけでなく、看護師や、事務職員等の複数の人間が関わりますし、患者からすればクリニック等の施設の充実度合いについても当然医療サービスの一環と捉えることから、純粋な治療行為以外にも不満を抱くポイントが多く潜んでいるといえます。
特に美容医療は、自由診療であり、患者は高額な医療費を支払っていますから、サービス全般に対する期待の高さが、クレームにつながる側面もあります。

クレームへの対処方法

では、患者からのクレームが入った場合、どのように対処すべきでしょうか。
美容医療の現場のクレーム対応に限ったことではありませんが、クレーム対応の初動で最も重要なのは、クレームの内容を的確に把握することです。
最初の段階でクレームの内容や患者の要望を取り違えてしまい、軌道修正されないまま対応をしていると、更なるクレームを招きかねません。
クレームが入ると動揺しがちですが、まずは患者の主張と要望を的確に聞き取りましょう。その上で、医療的な対応が必要な案件であるのか、金銭的な問題等一般的なクレームに終始している案件なのか、或いは両方なのかを切り分けます。
そして、明らかに言いがかりと言えるような不当な要求については、弁護士等に対応をゆだねることも大事です。
また、不当なクレームに対応した従業員等のケアも怠らないようにしましょう。
クレームを完全に予防することは困難ですが、事前に説明義務を尽くすことが、クレーム予防の最善の策ではないでしょうか。

手に負えない場合は弁護士にご相談を

美容医療において求められる説明義務の程度は、一般の医療よりも高いことは裁判例でも明言されています。これは、美容医療が「より美しくなりたいとの個人の主観的願望を満足させるために行われるものであって、生命ないし健康の維持に必須不可欠なものではない」ためであるとされています。
このような点を留意して、説明義務を尽くしてもなお、クレームとなった場合には、是非弊所にご相談ください。

口コミで悪く書かれた!名誉棄損に当たる?

1 口コミで悪く書かれた!

インターネット社会においては、口コミはときに致命的なダメージを与える可能性を有しています。悪い口コミのせいで客が激減して商売が立ち行かなくなるなんてこともあり得ます。
このように、口コミで悪く書かれた場合、それが名誉棄損に当たるのであれば、口コミの削除請求をするだけでなく、口コミを書き込んだ人物を特定して名誉棄損罪で告訴したり、当該人物に対して損害賠償請求をしたりすることが考えられます。

2 名誉棄損とは

それでは、どのような内容の口コミだと、名誉棄損に当たるのでしょうか。

(1)名誉とは

 一般に、名誉概念というのは、次の3つに分類することができます。
・内部的名誉:客観的にその人の内部に備わっている価値そのもの
・外部的名誉:その人に対する社会的評価
・名誉感情:自分自身の有する価値に対する評価
そして、「人の品性、徳行、名声、信用等の人格的価値について社会から受ける客観的評価」である「名誉」を違法に侵害された場合に損害賠償請求等が可能であるというのが確立した判例の考え方ですので(最大判昭61・6・11民集40・4・872、北方ジャーナル事件判決)、名誉棄損という場合の「名誉」というのは、外部的名誉を指すということになります。

(2)名誉棄損とは

 上記のとおり、「名誉」=外部的名誉なので、「名誉棄損」というのは、端的にいえば、「社会的評価を低下させる」ということになります。
それでは、どういうときに社会的評価を低下させたと判断するのかどうかというと、「一般読者の普通の注意と読み方を基準」として判断するというのが裁判所の考え方です(最判昭31・7・20民集10・8・1059)。
そこで、ある口コミが「名誉棄損」に当たるかどうかについては、その口コミがどのような事実を適示しているのか、その意味内容が社会的評価を低下させるものかどうかを「一般読者の普通の注意と読み方」を基準に判断するということになります。

(3)違法性・責任が阻却される場合

 仮に口コミの内容が社会的評価を低下させるものであったとしても、以下の要件を全て満たす場合には、違法性が阻却されます。
①公共の利害に関する事実にかかわること(公共性)
②専ら公益を図る目的であること(公益目的)
③適示された事実が真実であること(真実性)
また、③については、仮に適示された事実が真実ではなかったとしても、真実であると信じるについて相当な理由がある場合には(真実相当性)、故意・過失が阻却されます。

(4)小括

 以上のとおり、口コミで悪く書かれた場合、それがあなたの社会的評価を低下させるような内容である場合、公共性・公益目的・真実性又は真実相当性の要件を満たすものでなければ、名誉棄損に当たることになります。

3 適切な対処を

 口コミというのは閲覧者に対する影響力が強く、悪く書かれてしまうと、顧客の減少につながるだけでなく、最悪の場合、業務の継続が不可能になるほどの打撃を受ける可能性もあります。
悪い口コミを書かれてしまった場合には、経験豊富な弁護士に相談し、適切に対処することをおすすめいたします。

なりすまし注文・いたずら注文にご注意を!

最近、EC事業者様から、なりすまし注文・いたずら注文の被害を受けているとご相談いただくケースが増えています。この記事では事例とその対処法について弁護士が解説いたします。

 

1.なりすまし注文・いたずら注文とは

「なりすまし注文」とは、実在する第三者の名前や住所、連絡先を不正に利用して注文し、当該第三者に商品を送り付けるというものです。

代引きで注文し、発送先から「注文した覚えのない商品が届いたんですが...」と問い合わせが入って発覚することが多いです。この場合、発送先から商品の受取を拒否されてしまうと、EC事業者様において、送料や代金引換手数料、梱包資材料などの負担が生じるため、なりすまし注文が増えるとその経済的被害が甚大になるおそれがあります。

また、仮に発送先が代金を支払ったとしても、消費者が当該商品やEC事業者様に対してマイナスイメージを抱いてしまい、クレームや顧客離れに繋がるおそれもあります。

 

「いたずら注文」とは、架空の名前や住所、連絡先を利用して不正に注文し、EC事業者に商品を発送させるというものです。後払い決済やクレジットカードを利用していることが多く、支払がなかったり、クレジットカードの審査が通らずに発覚することが多いです。この場合、代金先払いやクレジットカード払いにすることで、経済的被害の発生を防ぐことはできますが、与信NGの判断が出る度に対応を迫られるため、いたずら注文が増えるとEC事業者様の業務量をいたずらに増やしてしまうおそれがあります。

 

2.なりすまし注文・いたずら注文の目的とは

なりすまし注文・いたずら注文の主な目的としては、①特定の個人やEC事業者に対する嫌がらせ、②EC事業者が利用しているアフィリエイターが、報酬を不正に得るため、などが多く見られます。
②の場合は、アフィリエイト申請者に対して事前審査を行ったり、アフィリエイトの報酬が発生する条件を見直すことで、悪質なアフィリエイターを排除していくことが可能です。しかし、①の場合、単なる嫌がらせ目的のため、発生を防止するのが極めて難しいのが現状です。

 

3.なりすまし注文・いたずら注文への対処

なりすまし注文・いたずら注文は、件数が増えれば増えるほど、それに応じた経済的被害が増えるにとどまらず、その対応に追われる時間や人材にかかるコストが増大し、EC事業者の経営を圧迫します。
そのため、これに対して早めに、かつ継続的に対処していくことが大切です。

 

・なりすまし注文・いたずら注文に関する警告文をホームページなどに掲載する

最初に取り組んでいただきたいのは、なりすまし注文・いたずら注文に対して厳しい対応で臨む旨を、ホームページ上の消費者の目に留まりやすい場所に掲載することです。

 

具体的には、
・高額の注文の場合、注文後に電話やメールにて確認する。
・登録された電話番号やメールアドレスに連絡が取れず、本人確認ができない場合は、注文をキャンセルする。
・過去の取引状況により、注文をキャンセルする。
・なりすまし注文・いたずら注文と判断した場合、個人情報・IPアドレスを関係機関に報告し、警察へ被害届けを提出する。
・なりすまし注文・いたずら注文を行った者に対して、損害賠償を請求する。
などを明示します。
これだけで被害の発生を完全に食い止めることはできませんが、なりすまし注文・いたずら注文に対し、事業者として厳しく臨むことを予告しておくことで、実際に被害が生じた場合にも、ここに明示したとおりの対応を進めていきやすくなります。

 

・IPアドレスの調査、警察への被害届の提出

なりすまし注文・いたずら注文があまりにも悪質な場合、犯人のIPアドレスを特定して、プロバイダーに個人情報を開示してもらうことも検討しましょう。

 

IPアドレスの特定に当たっては、弁護士等から事情を説明すれば任意で開示してくれるところも増えてきました。もっとも、プロバイダーは、警察の令状や裁判所の開示命令がなければ個人情報の開示に応じないところも多く、また、情報の保存期間も2,3カ月程度と短いのが実情です。加えて、中にはIPアドレスを偽装までして注文してくる犯人もおり、その場合は犯人の特定に結び付きません。そのため、調査に要する金銭的、時間的コストと、得られる結果とを天秤にかけながら、調査を進めていく必要があります。

 
また、なりすまし注文・いたずら注文は、特に嫌がらせ目的の場合、被害額が数千円程度にとどまることから、警察に相談しても動いてもらえず、結果的に泣き寝入りで終わっているケースも多いです。しかし、調査を進めてみると、同じ名前、住所、連絡先によるなりすまし注文・いたずら注文が、複数の事業者に対してなされているなど、被害が深刻化しているおそれもあります。

そのため、場合によっては、同業他社とも情報を共有し、被害「社」団体を形成して、警察に被害届を提出することを検討してもよいかもしれません。

 

丸の内ソレイユ法律事務所がお力になれること


丸の内ソレイユ法律事務所では、なりすまし注文・いたずら注文の被害にあわれた方のためのIPアドレス情報開示請求を承ります。

 

費用は22万円~。初回相談は30分無料ですので、お困りの方はまず一度お問い合わせください。

 

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整体院・カイロプラクティックを巡る諸問題

景品表示法違反による措置命令

2016年6月、小顔矯正をうたったサービスを提供していた会社等に対し、景品表示法に基づく措置命令が出されました。例えば、ある整体院では、「当院では23個の骨から形成されている顔の骨と頭蓋骨を特殊な技法で無痛にて施術することにより、頭蓋骨の調整だけでなくリンパや脳脊髄液の循環を正常化させていきます。」などとして、施術を受ければ、顔が小さくなるとの広告をしていましたが、これが問題視されたわけです。

あはき法

話は変りますが、皆さんは、「あはき法」という法律を聞いたことがありますか?正式には、「あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律」というのですが、この法律の第1条には、「医師以外の者で、あん摩、マツサージ若しくは指圧、はり又はきゆうを業としようとする者は、それぞれ、あん摩マツサージ指圧師免許、はり師免許又はきゆう師免許(以下免許という。)を受けなければならない。」とされています。
そして、あん摩とは、「人体についての病的状態の除去又は疲労の回復という生理的効果の実現を目的として行なわれ、かつ、その効果を生ずることが可能な、もむ、おす、たたく、摩擦するなどの行為の総称である。」(昭和三八年一月九日 医発第八号)とされており、免許なくこのような行為を行うと処罰されることとなります。

整体院、カイロプラクティックとあはき法

整体院やカイロプラクティックなどは、このあん摩にあたらないのでしょうか?
この点、判例は、「医業類似行為を業とすることが公共の福祉に反するのは、かかる業務行為が人の健康に害を及ぼす虞があるからである。それ故前記法律が医業類似行為を業とすることを 禁止処罰するのも人の健康に害を及ぼす虞のある業務行為に限局する趣旨と解しなければならない」(最判昭和35年1月27日)としており、免許なく行うことが禁止されている「あん摩」は、健康に害を及ぼすおそれのある行為に限るとしています。
例えば、国民生活センターが公表している以下のような事例については、「あん摩」に辺り、あはき法違反になる可能性が高いでしょう。

【事例】 指圧・マッサージ店で全身の指圧マッサージを受けたところ肋軟骨(ろくなんこつ)を骨折した

全身の指圧マッサージを1時間半受けた。終了直前にブキッと音がして息をつけない痛みを感じたが、1~2分で通常に戻ったので激痛があったことを言わず帰宅した。その夜発熱し痛みが出たため整形外科を受診したら肋軟骨骨折で加療に1カ月を要すると診断された。

【事例】 遺伝性狭窄(きょうさく)症である旨を伝えてマッサージを受け、症状が悪化した

遺伝性狭窄症で腰痛に悩んでいた。腰痛不眠症改善という情報誌を見てマッサージを受けた。背骨の曲がったところを強く押され、腰や脚に激しい痛みと痺(しび)れ、引き攣(つ)れが起こった。脊椎専門の病院で治療を受けたところ、以前の状態に治るまでに3カ月程かかると言われた。
免許なく行うマッサージ等は、その強度、対象となる症状等について、限界があるわけです。
この点、厚生労働省は、「医業類似行為に対する取扱いについて」(平成3年6月28日医事第58号 http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/i-anzen/hourei/061115-1a.html)において、禁忌対象疾患(椎間板ヘルニア、後縦靭帯骨化症、変形性脊椎症、脊柱管狭窄症、骨粗しょう症、環軸椎亜脱臼、不安定脊椎、側彎症、二分脊椎症、脊椎すべり症等)に対してマッサージを提供することが適当でなく、また一部の危険な手技についてもこれを禁止するのが妥当であるとの考えを示しています。
すこし難しくなってしまいましたが、結局、高強度のマッサージや、椎間板ヘルニア等を患っている方へのマッサージを免許なく行うことは禁止されているわけです。

整体院、カイロプラクティックと広告

このように、整体院等で提供できるサービスには限度があるわけですから、例えば、「椎間板ヘルニアの痛みを改善」などという広告をしていると、あはき法に違反しているかもしれないことを自ら宣伝しているようなものです。
また、これは整体院、カイロプラクティックに限ったことではないのですが、景品表示法に違反するような広告にも注意しなければなりません。
具体的には、今回、措置命令が出された「小顔矯正」のほか、「血流を改善し、リンパの流れを整えることでアンチエイジング効果があります。」、「むくみが改善され、太ももが引き締まります」、「揉みほぐしによる痩身が期待できます」などという効果についても、景品表示法上は、問題となることが多いと思われます。
以上のように、整体院、カイロプラクティックについては、さまざまな法律が関係しており、法令順守には、十分配慮しなければなりません。

当事務所では、整体院やカイロプラクティックにおけるサービス内容や広告内容のチェックを行っておりますので、遠慮なくご相談ください。

事業主なら知っておきたい!個人情報の取扱い方法

そもそも個人情報とは

個人情報とは、個人に対する情報のことで生存している個人であること、特定の個人を識別することができる情報です。
会社の住所や取引内容といった法人情報は、個人情報ではありません。
個人情報は、「氏名、生年月日により」「他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することとなるものを含む」としています。
例えば、メールアドレスだけは個人情報としては扱われません。ただし、そのメールアドレスに名前が入っていたり、メールアドレスと一緒に会社名と名前が一緒に記載してある場合は個人情報になります。つまり、情報単体ではなく誰かを特定できる情報が個人情報となります。

5,000人以上の個人情報を保有している場合

一企業が個人情報を5,000人以上所有している場合は、個人情報取扱事業者となり、個人情報保護法という法律の規制対象になります。
例えばエステ店をチェーン展開している場合、1店舗あたり個人情報の数が5,000人以下でもあっても、そのエステ店チェーンを運営している会社や企業が1つであれば、その会社または企業が持っている個人情報となりますので個人情報保護法の対象です。注意しましょう。

5,000人の個人情報の定義とは

ではそもそも5,000人以上の個人情報を所有している場合の定義とはどのような場合でしょうか。それは、個人情報を体系的に管理または整理されている状態であれば個人情報を保有している。となります。
体系的とは、その会社や企業が持つデータベースやプラットフォーム上に保存され管理されていることです。
逆に個人情報として5,000人にカウントされない場合は「個人情報数の合計が過去六月以内のいずれの日においても五千を超えない者とする。」と定めれている通り、6ヶ月以内に削除するデータは「一過性の利用」のため個人情報保護の対象にはなりません。

個人情報保護法の規制対象になると、その管理方法や目的などについて国から様々な義務が課せられます。
事業を始めて軌道にのってきたなどして5,000人に到達しそうな場合は
その義務をスムーズに行うために事前に知っておいた方がよいでしょう。

美容業における、資格と法律・営業可能範囲について

まつげエクステは美容師免許が必要

美容に携わる者であれば広く認知されたことではなりますが、今一度おさらいしてみたいと思います。
これまで何度も厚生労働省はまつ毛エクステンションによる危害防止の徹底について通達しています。
美容師法第2条第1項の規定においても、「いわゆるまつ毛エクステンションについては、まつ毛に係る施術を美容行為 と位置付けた上で適正な実施の確保を図ることとしていること」と定めている通り、いわゆるエクステンションの提供は美容師法にいう美容に該当するとされていることから、美容師免許がないと提供してはいけません。ただ、美容師免許があるからと言って開業できるわけではなく、美容師免許が必要になった背景として、まつ毛エクステには消費者トラブルが後を絶たないことを頭に入れた上、サービスの提供にはそれなりの知識が必要になります。
美容師法に抵触した場合の罰則は、美容師法違反で50万以下の罰金に処せられることもありますので徹底しておきたいところです。

アートメイクは医療行為

「針先に色素を付けながら、皮膚の表面に墨等の色素を入れる行為」いわゆるアートメイクは、医師免許を持たないものが行った場合、医師法第17条に違反になります。
これまで日本では、アートメイクと同じ行為である「刺青」が流行ったことから、無資格のものが提供しはじめよってアートメイクも資格がいらないものだと認識されてしまいがちでした。
ですが、アートメイクは

針で皮膚を刺すことにより、皮膚組織に損傷を与えて出血させるだけでなく医学的知識が十分でない者がする場合には、化膿菌、ウイルス等に感染して肝炎等の疾病に罹患する危険がある。

と、有識者の見解で述べられているように、十分な知識を持った医師でなければ行為を行ってはならないと定めています。
医師法に違反すると、罰則としては3年以下の懲役若しくは百万円以下になります。

歯のホワイトニングは歯科医師免許?

これまで歯のホワイトニング行為は、歯科医院で主に提供されてきた医療行為でしたが、類似のサービスとしてエステ分野でも提供されるようになってきました。これについては賛否両論の意見が騒がれる中で、実際のサービス内容には明確な差があるようです。

例として、2013年11月13日に東京・市ヶ谷の歯科医師会館大会議室で開催された都道府県歯科医師会専務理事連絡協議会においては、以下のような意見が出されています。

「誰が施術する場合でも、認められるのは使用するホワイトニング剤が医薬部外品で、照射ライトが医療機器ではないことが前提。医薬品や医療機器を使用するのであれば無資格者が行うことはできず、医師法・歯科医師法だけでなく薬事法違反にも問われることになる。」

口の中に触れる行為や、ブラッシング指導、ホワイトニング指導といった行為は全て医療行為にあたり、国家資格を持つ歯科医師・歯科衛生士でないとできません。ですが、逆をかえせばそれらの医療行為をせずに治療までもしない、エステ分野におけるホワイトニングのようなサービスは、使用する成分や提供するものの介入する範囲や内容に明確な差があるようです。

無資格での営業は誰でも分かる通り、法律違反です。透明な営業を心がけるよう気をつけましょう。

閉店や事業譲渡の際に知っておきたい個人情報の取扱い方法

閉店する場合と事業譲渡では処理方法が異なる

閉店の場合はシンプル

これまで保有していた個人情報は適切に破棄する必要があります。適切に破棄とはどういうことかと言うと、シュレッダーで抹消するなどです。また、個人情報を破棄してくれる専門会社もありますのでそういった所に依頼するのも確実な方法です。

事業譲渡する場合は少し複雑

事業を譲渡先の新しい運営会社から、個人情報を引き継ぎたいとの申し入れがあった場合そのまま受け渡してはいけません。
すべきこととしては譲渡前にすべての顧客または会員から個人情報を新しい会社へ譲渡してもよいかの許可を得る必要があります。
許可を得る方法は様々ですので専門家へ相談するのがよいでしょう。

また、新しい運営会社が個人情報を引き継がない旨の申し入れがあった場合は、先に述べた閉店の際の処理と同様になります。

個人情報にまつわるトラブル

個人情報まつわるトラブルで多いのは、債務が残っている状態の顧客への返金対応と従業員が個人情報を抜き出してしまうことです。

債務が残った状態で閉店する場合は顧客に知らせた上で返金対応をせねばなりません。
但し、多くの場合は閉店になる場合、事業が上手くいかない場合だと思いますので、そういった場合は返金自体もできなくなる可能性もあると思います。
事業主がかかえている債務処理は、顧客への返金だけではないと思いますので、その際は専門家へ相談して優先順位や返金対応の時期など相談するのがよいでしょう。

従業員が辞める際、または閉店後に個人情報を抜き出していたことが分かった場合は厄介です。
個人情報というのは個人情報保護法からの観点では「目的外使用」はできません。企業と顧客との間で成立する個人情報が、別のところで使用されてしまった場合は元の会社が責任を問われることになります。

そのような流出を防ぐためにも個人情報データベースにパスワードをかける・アクセスできる社員を限定しておく・個人情報に触れる際の履歴を残しておくなど透明かつ確実な管理をしておくべきとも言えます。
その会社の体制によって管理方法などは模索できると思いますので、多くの企業を見ている専門家に相談するのもいいでしょう。

先払いチケットの消化期間の設定方法と消化期間を過ぎた場合の返金対応とは?

消化契約期間には法的定めはなし

まずコースや回数券などを設定する際、一緒に設定するのは消化期間です。
例えば3回コース・5回コースと設定する際、その回数を消化できるのは◯◯月までとか◯年以内などと設定するはずですが、ここで気になるのがその消化期間をどう設定すべきかではないでしょうか。実は期間の設定については明確な法的定めは特にありません。

ですので、コースの提供は事業主と客との間で交わされる契約の問題になります。ただし、そもそもその消化期間におおよそありえない期間を設けている場合は、民法第1条第2項に定められている「信義誠実の原則」略して信義則に抵触する可能性もあります。

消化期間の設定は、誰がどう判断しても合理的な範囲で設定していれば問題はありません。ですが、客をだますような期間で設定していたり、物理的に消化できない期間を設定してしまうなどすると顧客とのトラブルにもなりかねない上に、裁判になった場合、様々な法律に抵触し罰則も出てきてしまいます。
気をつけましょう。

消化期間を過ぎてから返金を求められた場合

消化期間を客と契約を開始したけれど、客側が店に来ずにそのまま消化期間を過ぎてしまった時に多いのが返金トラブルです。
客側としては回数を消化していないので、返金してほしい心理が働くのは当然です。ですが、事業主としては実は契約を交わした後は、消化期間を過ぎてからの返金対応はしなくてもよいのです。
但し、消化期間を定めていなく回数券を販売した場合に返金を求めれた場合は、厳密に言うと何年経っても要望があれば返金対応はする必要があります。また、この場合は返金というより中途解約またはクーリングオフとなりますので客側に大きく権利があります。

まとめ

チケットの消化期間やお金にまつわることは、ちょっとした認識の違いで大きなトラブルになりかねませんから、まずは客とコンセンサスをとり書面に落とすなどすることが必要です。
合理的な期間とはどのような期間なのか、書面にどう記載すべきなのかは専門家に相談などするなどして事前に対処するのがおすすめです。

消費者による口コミ投稿はどこまで自由?

食べログ訴訟から見る口コミ投稿

最近話題になったばかりの「食べログ訴訟」。口コミサイトの食べログに顧客から「出てくるのがおそい」「まずい」などと書かれた店が、その後お客さんが激減したとしてサイトを運営しているカカクコムに対して情報の削除と損害賠償を求めて札幌地裁に提訴しました。

結果は、札幌地裁はその請求を棄却。(原告が負け)

また別の案件では、写真などを無断掲載され「隠れ家」を売りにする事業戦略が妨害されたとして、大阪市内の飲食店が運営会社「カカクコム」に店舗の情報削除と330万円の損害賠償を求めた訴訟では、

大阪地裁は2月23日、その請求を棄却。(原告が負け)

いずれも口コミサイトは、あくまで客観的事実を消費者の意見として掲載しているものであり、店舗側の要求は取り入れられなかったこととなりました。

悪口は「罪」になるが口コミの線引きは難しい

どうやら口コミを明確に定義するのは、受け取る側の事情により変わるため、難しいようです。
ですが、どんな口コミでも許される。というわけではありません。
事業主の皆さんに知って頂きたいのは、その口コミの内容にお店の社会的名誉を汚すような行為、業務妨害、名誉毀損や侮辱的な内容が含まれる場合は、処罰できる可能性もあるということです。
例えば、他人の能力、徳性、身分、身体の状況などについてただ単に批判された場合の侮辱は消費者の罪になります。

ですが、口コミに書かれた内容が真実であり、公共の利益のためと判断された場合は、全く問題ないと判断されます。
今回の食べログ事例では、「料理が出てくるまで40分くらい待たされた」との書き込みにより、お店の評判は下がったわけです。

待たされたことが嘘であることの証明や、悪徳な目的による書き込みであることが証明されたわけではないため、書き込みは正当な範囲内で、カカクコム側としても削除はできないという判断に至ったのです。

口コミサイトの利用規約を確認しよう

店舗または事業主側としてはその口コミの内容は都合が悪いけれど、決して名誉や侮辱行為に該当する証明ができない場合は、まず口コミサイトのガイドラインを確認してみましょう。

実際の食べログの口コミガイドライン(一部抜粋)

お店へ悪影響を及ぼすかつ内容の確認が困難な事象についての投稿はご遠慮ください。

食べログはあくまでも個人の感想を共有するサイトです。お店へ悪影響を及ぼすかつ事実関係の確認が困難な事象の書き込みはご遠慮ください。

※食べログでは、投稿された口コミの内容が事実かどうかの確認は行っておりません。

例)

  • ここのお肉を食べると必ず腹痛になる。(NG:料理が原因でおきた症状に関する口コミ)
  • 経費削減のためエアコンをつけていない。(NG:お店の経営方針・内部事情に関して、決め付けた口コミ)
  • 化学調味料を使っている。(NG:お店の調理方法や材料に関して、決め付けた口コミ)
  • 常連になると料金をタダにしてくれることがあるそうです。(NG:一般に公開されていないサービスに関して、決め付けた口コミ)

なお、事実関係の確認が困難 (感想としての記述ではないもの)で、かつ他のユーザーやお店から「その内容は事実と異なる。」という連絡があった口コミについては、食べログ側で連絡いただいた内容を元に確認し、本項に該当すると判断した場合には、当該口コミを削除する場合がございますのでご了承ください。

以上。

ほとんどの口コミサイトでは、こういった口コミ投稿におけるガイドラインを設定しています。
もし口コミサイトに投稿された書き込みが違法性はないけれど、ガイドライン上のルールを破っているような疑いがあれば、サイト運営者に相談してみるのもいいでしょうですが、その判断さえも一般の方ではなかなか分からない部分ではあると思いますので、まず事を起こす前に専門家に相談してみるのも有効です。