コラムに関するお知らせ

薬機法改正で導入される課徴金と措置命令

2019.8.21
このエントリーをはてなブックマークに追加

1 はじめに

薬機法が改正され、課徴金と措置命令の制度が新たに導入されることになりました。
既に、景品表示法では、平成26年11月の法改正により、既に課徴金と措置命令の制度が導入され、運用されています。
そこで、景品表示法の制度との比較も交えながら、薬機法に導入される課徴金、措置命令制度の概要について見ていくことにします。

2 制度導入の契機

改正の契機となったのは、ディオバン事件と呼ばれる臨床研究論文の不正が行われた事件です。
製薬会社のノバルティス社が、1999年に発売したディオバンという高血圧治療薬についての臨床試験が、ノバルティス社の経済的支援の下に行われました。
ところが、この臨床試験にノバルティス社の元社員が関与し、データの不正な操作を行っていたことが、2014年に発覚しました。

この臨床試験の結果は論文に投稿され、ディオバンの売上にも大きな影響を与えたと思われます。
ディオバンの売上は、年間1000億円を超えていたそうです。
しかし、そのような不正がありながらも、ノバルティス社がディオバンの販売で得た利益は何ら手付かずであり、いわば売り逃げではないかとの批判が起こりました。
そこで、そのような不当に得た利益を吐き出させる制度として、課徴金制度の導入が議論されることになったのです。

3 課徴金制度の概要

(1)対象となる行為

国会に提出された薬機法改正案によれば、課徴金の対象となる行為は、虚偽・誇大広告(薬機法第66条第1項)です。
薬機法では、他にも未承認医薬品、医療機器の広告が禁止されているのですが(薬機法第68条)、こちらは課徴金の対象とはなりませんでした。
その理由は、未承認の医薬品や医療機器を販売して得た利益は、その全額が不当なものであり、一部だけを課徴金として納めるのは不適切であるとの議論があったためのようです。

そうすると、課徴金の対象となるのは、承認を得た医薬品や医薬部外品、化粧品、医療機器に限られるかのようにも思えますが、そんなことはありません。
薬機法上、ただの食品や雑品でも、医薬品や医療機器のような効果があるとの広告をすれば、定義上は医薬品、医療機器に該当します。
したがって、その場合に、広告された効果が虚偽・誇大であれば、食品や雑品も課徴金の対象となる可能性があるのです。

上記のとおり、課徴金制度が導入されたそもそもの契機は、医薬品に関する不正でした。
しかし、実際の法改正の議論においては、食品や雑品に関する不当な広告を規制する目的にも明確に言及されています。
したがって、実際に制度が始まれば、食品や雑品が課徴金制度の適用第1号になる可能性も十分にあるでしょう。

4 課徴金の額

課徴金の金額は、課徴金対象期間における売上の4.5%です。
景品表示法では3%ですので、景品表示法より課徴金の金額は大きいことになります。

課徴金対象期間は、虚偽・誇大広告をしていた期間がベースになります。
ただし、虚偽・誇大広告をやめてから6か月を経過するまでの間は、虚偽・誇大広告の影響が残っていると考えられます。
したがって、虚偽・誇大広告をやめた後も販売を継続している場合、6か月を経過するまでは、最後に商品が売れた日までの期間も含まれることになっています。
ただし、6か月が経過するまでの間に、省令で定められた、虚偽・誇大広告の影響を排除するための措置を講じた場合には、その措置を講じた日までしかカウントされません。
また、課徴金対象期間の上限は3年とされています。この点は景品表示法と同じです。

また、課徴金の最低額は225万円とされています。
景品表示法では、課徴金の最低額が150万円とされていますが、いずれも、課徴金対象期間の売上で見れば、5000万円未満の場合には課徴金が課されないこととなっており、この点も同じです。

5 例外的に課徴金が課されない場合

改正法では、虚偽・誇大広告に対して、業務改善命令、新たに設けられた措置命令、製造販売等の許可の取消しや業務停止命令をする場合には、厚生労働大臣の裁量で、課徴金を課さないことができるとされました。
これは、景品表示法にはない仕組みです。
一方で、景品表示法では、優良誤認表示や有利誤認表示をしたとしても、そのことを知らず、かつ、知らないことに相当の注意を怠った者でないと認められる場合には、課徴金が課されない仕組みがあり、こちらは改正薬機法にはないものです。

6 課徴金の減額

景品表示法でも改正薬機法でも、自主的に課徴金の対象となる行為を報告した場合には、課徴金の額が半分に減額されます。

一方、景品表示法では、課徴金対象期間に販売した商品について、一定の条件の下で返金措置を講じることで、その分、課徴金が減額されますが、改正薬機法にはそのような仕組みがありません。
医薬品等の虚偽・誇大広告は、国民の健康に与える影響が大きいため、返金をすれば済む話ではないという発想なのかもしれません。

また、改正薬機法で課徴金の対象となる行為が、同時に、景品表示法でも課徴金の対象となることがあり得ます。
景品表示法の課徴金は売上の3%と、改正薬機法の課徴金よりも少ないため、景品表示法で課徴金納付命令を受けるような場合には、売上の3%分が、改正薬機法の課徴金から控除されることになります。

7 措置命令

改正薬機法では、課徴金制度と同時に、措置命令制度も新たに導入されました。
景品表示法でも取り入れられている措置命令とは、違法な広告がされた場合に、それを止めさせ、再発を防止するために必要な措置を命じる行政処分のことです。

景品表示法では、措置命令が行われた場合に、原則として必ず課徴金納付命令が行われることになっており、両者がセットになっています。
一方で、改正薬機法では、措置命令と課徴金はセットになっていません。
措置命令が行われたとしても、課徴金が課されないこともありますし、措置命令がなくても課徴金を科すことができます。
また、課徴金の対象となる行為は虚偽・誇大広告だけですが、措置命令では、虚偽・誇大広告に加え、未承認医薬品・医療機器の広告も対象に含まれています。

8 最後に

このように、改正薬機法における課徴金と措置命令の制度は、景品表示法と共通する部分もありつつ、法律の目的が異なることから、制度設計も自然と異なるものになっています。
薬機法改正案は、2019年の第198通常国会では成立せず、継続審議となりました。
今年の秋の臨時国会以降での成立が見込まれています。
改正法が成立して交付されると、そこから2年以内に施行され、実際に運用が始まることになります。今から改正に備え、準備を怠らないようにしましょう。

コラムに関する最新記事

関連アイテムはまだありません。

pageTop