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有名アーティストのライブに係る優良誤認の事案

2023.2.17
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 令和5年2月15日、消費者庁が、コンサートの提供事業者3社の役務提供(サービスの提供)の表示について、景品表示法違反(優良誤認)と認められることから、措置命令を出しました。アーティストのライブに関連するものですが、今回、優良誤認と認められたのは初めてであり、新聞等の多くの媒体でも扱われています。

どのような表示に対して措置命令が出されたか

さて、では、どのような表示が問題になって措置命令が出たのでしょうか。

消費者庁のホームページを見ると、表示と実際の対応とで、次のような違いがあったようです。もちろん、SS席がアーティストに近い最も良い席で、S席、A席の順番にアーティストから遠い席になっていきます。

 

  【表示】

あたかも、SS席を購入すれば1階アリーナ席、S席を購入すれば1階スタンド席、また、A席を購入すればバルコニー席又は2階スタンド席で有名アーティストのライブを聞くことができるような表示をしていた。

※消費者庁「コンサートの提供事業者3社に対する景品表示法に基づく措置命令について」 の報道資料より

 

  【実際】

SS席を購入しても1階スタンド席でライブを聞くことになる場合があり、S席を購入しても主に1階スタンド席後方でしかライブを聞くことができず、かつ、バルコニー席又は2階スタンド席でライブを聞くことになる場合があり、また、A席を購入してもバルコニー席でライブを聞くことができず、かつ、主に2階スタンド席後方でしかライブを聞くことができないものであった。

 

消費者庁は、ライブ観覧のためのチケット販売の表示について、SS席というより良い席でライブを聞くことができると一般消費者に誤解させたということを理由として、優良誤認と判断したと考えられます。

なお、本来用意してあるSS席に対応するチケット数よりも多くのチケット数をSS席として売り出したことが原因であったと報道されているようです。

コメント解説

今回、有名アーティストのライブに関して、初めて景表法の適用(優良誤認、措置命令)がありました。

 

しかしながら、景表法の適用が初めてであったというだけで、景表法は商品の販売に係る表示のみならず、ライブ提供のようなサービスに係る表示も対象にしています。

消費者庁としては、一般消費者からの苦情や相談が多い事案について、法適用をするというスタンスをとっていますので、今回も、一般消費者からのクレームや苦情が多数あったものと思われます。

 

また、SS席の全てのチケットが売れてしまった後も、そのことを認識したうえで、コンサート提供事業者がSS席のチケット販売に係る表示をしていたとの一部の報道もあります。

仮に、これが事実だったとすると、消費者庁の立場からすれば、景表法のおとり広告として扱い、措置命令を出すこともできたはずです。

 

ここで、消費者庁がおとり広告と判断せずに、優良誤認と判断した明確な理由は分からないものの、理由としては2つ考え得るところです。

 

一つは、実態がおとり広告というよりは優良誤認と判断するのに適していた場合です。

そして、もう一つは、実態からすると、おとり広告、優良誤認のいずれでも判断できたが、敢えて、優良誤認と判断したという場合です。

 

ちなみに、おとり広告は課徴金納付命令の対象ではありませんが、優良誤認は課徴金納付命令の対象です。

仮に、消費者庁が、後者の考え方の下、敢えて優良誤認と判断したのであれば、今後、コンサート提供事業者に対し、課徴金納付命令が出る可能性があるでしょう。

 

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弁護士法人丸の内ソレイユ法律事務所 美容広告専門チーム

美容広告専門チームは、美容業界と広告に精通した弁護士集団として、高い専門性を持ち、多くの企業の顧問弁護士を務めている。美容や広告に関するセミナーでの講演依頼を多数受け、新聞をはじめとしたメディアからも数多くの取材を受ける。

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