販売・広告に関するQ&A

病院・クリニックのホームページでの情報提供が変わります

2016.8.26
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報道によれば、美容整形、脱毛、脂肪吸引等の美容医療については、治療を受けた患者からの苦情や相談が急増しており、これを受けて厚生労働省は、虚偽や誇大な表示を禁止する新たな規制を設ける方針を固めたようです。

(これまでの経過)

これまで、厚生労働省は、「医療広告ガイドライン」において、「インターネット上の病院等のホームページは、当該病院等の情報を得ようとの目的を有する者が、検索サイトで検索した上で閲覧するものであり、従来より情報提供や広報として扱ってきており、引き続き、原則として広告とはみなさないこととする。」としていました。

しかし、病院・クリニック等のホームページにおける不適切な情報提供が継続していたため、平成27年7月、消費者委員会は、「美容医療サービスにかかるホームページ及び事前説明・同意に関する建議」を提出し、医療機関のホームページも「広告」として扱うよう要求しました。

これを受け、厚生労働省は、医療情報の提供内容等のあり方に関する検討会を開催し、この秋をめどにその方針を決する予定です。そして、8月に開催された検討会では、医療機関のホームページは、引き続き広告とはしないものの、虚偽・誇大な表示については、より強い規制を設ける方針を固めたようです。

厚生労働省が発表した資料によれば、ホームページに対する規制については、「美容医療分野を中心に、医療機関のウェブサイト等の閲覧を契機として受 診行動に至ることが一般化している中、医療機関のホームページにおける情 報提供の適正化を図る必要がある。 医療機関のウェブサイト等を、広告できる事項が限定されている医療法上 の広告とすると医療情報の提供促進に支障が生じるとの懸念が多く示されて いること等を踏まえ、引き続き医療法上の広告としては扱わないが、情報発 信の観点からも認められないような虚偽・誇大な表示等が規制されないこと は適切ではないことから、こうした不適切な表示を禁止する規制を新たに設けることとしてはどうか。」という方向性であるようです。

医療機関のホームページを巡る規制については、厳格化の方向にあるようですから、関係者の皆様は、現在のホームページに問題がないか、いまのうちからチェックしておいたほうがいいかもしれません。

(参考)

(虚偽の広告と罰則)

医療法第6条の5第3項は、内容が虚偽にわたる広告をしてはならないと定められています。医療広告ガイドラインによれば「絶対安全な手術です!」などと記載することは、虚偽広告に当たるとされています。医学上、絶対安全な手術などあり得ないからというのがその理由です。虚偽広告をした者に対しては、6月以下の懲役又は30万円以下の処罰が設けられています(医療法第73条第1項第1号)。

(誇大広告と罰則)

また、医療法施行規則第1条の9第2号には、「誇大な広告を行ってはならない」、「客観的事実であることを証明することができない内容の広告をおこなってはならない。」と規定されており、これに反すると、都道府県知事等により報告命令が出されたり、病院等への立入り検査等が行われ、その後、広告中止命令、是正命令が出されることになります。この命令に従わないと、やはり6月以下の懲役又は30万円以下の罰金が科せられることになります。

(誇大広告の例)

医療広告ガイドラインによれば、「誇大な広告」とは、必ずしも虚偽ではないが、施設の規模、人員配置、提供する医療の内容等について、事実を不当に誇張して表現していたり、人を誤認させる広告を意味するものであるとされています。具体的には、美容外科の自由診療の際の費用として、「顔面の〇〇術 1か所〇〇円」と記載されているが、この料金は、5か所をまとめて施術した場合の料金であって、1か所だけの施術だと倍以上の価格になる場合は、誇大広告となります。

(客観的事実であることを証明することができない内容の広告の例)

医療広告ガイドラインによれば、「客観的事実であることを証明することができない内容の広告」とは、患者や医療従事者の主観によるものや客観的な事実であることを証明できない事項についての広告」を意味するものであるとされています。具体的には、患者の主観を記載した体験談の紹介は、これにあたりますから、広告ができないこととなります。また、「比較的安全な手術です。」との記載も何と比較して安全であるか不明であり、客観的な事実と証明できないため、広告ができないこととなります。

(最後に)

この記事を執筆するに当たり、様々な病院、クリニックのホームページを拝見しましたが、将来、広告表現として問題となり得る記載が残念ながら非常に多い状況です。広告については、医療法のみならず、景品表示法についても問題となり、場合によっては、不当表示に関係する売上げの3パーセントという高額の課徴金を課される場合もあります。これを機に、ホームページのコンプライアンスチェックを検討されてはいかがでしょうか。

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弁護士法人丸の内ソレイユ法律事務所 美容広告専門チーム

美容広告専門チームは、美容業界と広告に精通した弁護士集団として、高い専門性を持ち、多くの企業の顧問弁護士を務めている。美容や広告に関するセミナーでの講演依頼を多数受け、新聞をはじめとしたメディアからも数多くの取材を受ける。

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