販売・広告に関するQ&A

薬機法チャレンジとその危険性

2021.11.30
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コロナ禍において、度重なる緊急事態発言の発令、外出自粛などから人々の行動が大きく制限されている日々が続ています。「#おうち時間」「#ステイホーム」など、自宅で自らと向き合う時間も増え、「宅トレ」「自宅美容」がトレンドになるなど、人々の健康意識は総じて高まりを見せています。
そして、このような人々の健康意識の高まりは、健康食品や健康器具等を扱う企業にとっては、ビジネスチャンス。消費者の心を魅了するような広告を打って、購買行動を加速させたいと思うのも無理はありません。
ですが、消費者の購買意欲を煽りたい企業が、思うままに宣伝をしていいわけではありません。消費者の健康被害を防ぐために関連する法規、様々な規制があり、中でも皆様が気を付けるべきは「薬機法」という壁です。

昨今話題、問題になっている「薬機法チャレンジ」。今回の記事ではそのいわゆる「薬機法チャレンジ」とは何か、そしてその危険性を解説致します。

薬機法とは

正式名称を「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」といい、医薬品等の品質、有効性及び安全性の確保とともに、これらの使用による保健衛生上の危害の発生及び拡大の防止を目的としています(薬機法第1条)。
また、薬機法は、医薬品等の効能効果に関して虚偽・誇大広告を禁止するとともに(薬機法第66条1項)、医薬品等の承認を受けていないものについて効能効果に関する広告を行うことを禁止しています(薬機法第68条)。
つまり、薬機法は、医薬品等が人々の健康に与える影響の大きさを考慮して、人への効能効果を謳うことができるものを国が認めた医薬品等に限定し、承認を受けていないものについては人への効能効果を謳うことを禁止することで、有効か安全かわからないものによって人々の健康に危害が発生したり、危害が拡大したりすることを防止しているわけです。

「薬機法チャレンジ」とは

しかしながら、コロナ禍における人々の健康意識の高まりを受けて、上記の薬機法に違反するか否かギリギリを攻めた広告を行う企業が増えており、ネット上では、このように薬機法ギリギリを攻めた広告宣伝を行うことを「薬機法チャレンジ」などと呼ぶそうです。

「薬機法チャレンジ」の危険性

それでは、このような薬機法チャレンジは、企業にどのような影響をもたらすのでしょうか。広告が薬機法に違反すると判断された場合、まずは行政指導が行われ、その後措置命令が出される可能性があります。

具体的には、違反広告の中止、その違法行為が再び行われることを防止するために必要な事項又はこれらの実施に関連する公示、その他公衆衛生上の危険の発生を防止するに足りる措置をとるべきことが命じられます。このように、自らが違反広告をしていたことを自ら周知徹底するような措置を命じられることは、企業の評判を著しく低下させることになりますので、企業の業績に与える影響は大きいと思われます。

違反が悪質な場合には、違反広告を行った者が逮捕されて2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金(又は併科)を科されることがありますし、担当者だけでなく企業自体にも200万円以下の罰金が科されることもあり得ます。
さらに、企業への影響が大きいと考えられるのが、令和3年8月の改正で導入された課徴金制度です。違反広告を行っていた企業は、課徴金として、違反広告を行っていた期間中における対象商品の売上金額の4.5%の納付が求められるため、場合によっては莫大な金額の納付を求められることになります。
このように、薬機法に違反した場合には、企業自体の評判を著しく低下させるという意味でレピュテーションリスクが大きいだけでなく、経済的な損失も莫大となる危険性があります。

「薬機法チャレンジ」する前に弁護士に表現確認を

ビジネスチャンスに乗じて消費者の購買意欲を煽り、商品を多く売りたい、と考えることはごく自然なことですが、そのために薬機法チャレンジをすると、却って企業の信頼を損ね、多額の経済的損失を被る危険性があります。
このような危険性を考えると、薬機法チャレンジは、リスクが大きいといえるのではないでしょうか。

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弁護士法人丸の内ソレイユ法律事務所 美容広告専門チーム

美容広告専門チームは、美容業界と広告に精通した弁護士集団として、高い専門性を持ち、多くの企業の顧問弁護士を務めている。美容や広告に関するセミナーでの講演依頼を多数受け、新聞をはじめとしたメディアからも数多くの取材を受ける。

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