販売・広告に関するQ&A

訪問販売における特商法上の注意点

2021.7.14
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1 訪問販売について

(1)どんな販売形態か
 特商法は、訪問販売を次の2類型に分けて規定しています。
 ①販売業者又は役務提供事業者が、営業所等以外の場所で商品若しくは権利の販売又は役務の提供を行う場合
 ②販売業者又は役務提供事業者が、営業所等において、営業所等以外の場所において呼び止めて営業所等に同行させた者等に商品若しくは権利の販売又は役務の提供を行う場合

 訪問販売については、例えば消費者の自宅など、営業所等以外の場所で販売等を行う場合(①)のイメージが強いと思います。しかしながら、①だけだと営業所等以外で顧客を誘引したものの、契約の意思表示が営業所等でなされた場合(いわゆるキャッチセールスやアポイントメントセールス)が規制対象に入らないため、②が規定されています。

(2)特定権利ってなに?
 特定権利とは、以下のものをいいます。
 ①施設を利用したり、役務の提供を受ける権利のうち、国民の日常生活に関する取引において販売されるものであって以下に当たるもの
  一 保養のための施設又はスポーツ施設を利用する権利
    例:ゴルフ会員権、スポーツ会員権
  二 映画、演劇、音楽、スポーツ、写真又は絵画、彫刻その他の美術工芸品を鑑賞し、又は観覧する権利
    例:映画チケット、スポーツ観覧チケット
  三 語学の教授を受ける権利
    例:英会話サロン利用権
 ②社債その他の金銭債権
 ③株式会社の株式、合同会社、合名会社若しくは合資会社の社員の持分若しくはその他の社団法人の社員権又は外国法人の社員権でこれらの権利の性質を有するもの

(3)特商法の適用がないケース
 事業者間取引の場合、海外にいる顧客に対する契約の場合や従業員に対して行った販売又は役務の提供の場合など、特商法の規定が適用されないケースがあります。

2 訪問販売する際に注意が必要なことを弁護士が解説

 訪問販売を行う場合には、以下の規制に従う必要があります。
 違反すると業務停止命令や業務禁止命令の行政処分や、罰則の対象となりますので注意が必要です。

(1)事業者の氏名等の明示
 勧誘に先立って、消費者に対して以下を告げなければなりません。
 ・事業者の氏名(名称)
 ・契約の締結について勧誘をする目的であること
 ・販売しようとする商品(権利、役務)の種類

(2)再勧誘の禁止
 勧誘に先立って消費者に勧誘を受ける意思があることを確認するよう努めなければならず、消費者が契約締結の意思がないことを示したときには、そのまま勧誘を継続することやその後改めて勧誘することは禁止されています。

(3)書面の交付
 契約の申込みを受けたときや契約を結んだときには、法定の事項を記載した書面を消費者に渡す必要があります。記載事項のうち、特にクーリング・オフの事項等は赤枠の中に赤字で記載する必要があります。書面の字の大きさは8ポイント以上であることが必要です。

(4)禁止されている行為
 訪問販売において事実と違うことを告げることや故意に事実を告げないこと、相手を威迫して困惑させること等は禁止されています。

(5)その他
 上記のほか、債務の履行拒否・不当遅延や訪問販売の際の過量販売、迷惑な勧誘、つきまとい行為等については行政処分が課せられる場合があります。

3 クーリング・オフ等について

 訪問販売によって契約に至った場合でも、契約書面の受領から8日以内であれば、消費者はクーリング・オフをすることができます。なお、事業者が、クーリング・オフに関する事項につき事実と違うことを告げたり、威迫したりすることによって、消費者が誤認・困惑してクーリング・オフしなかった場合には、上記期間経過後もクーリング・オフが可能です。
 また、事業者が上記2(4)の禁止行為に違反し、消費者が誤認をして契約をした場合には、消費者が契約に関する意思表示を取り消しできる場合があります。
 せっかく獲得した顧客から契約解除等されないように、きちんと特商法で定められたルールを守って契約締結に至ることが必要です。

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弁護士法人丸の内ソレイユ法律事務所 美容広告専門チーム

美容広告専門チームは、美容業界と広告に精通した弁護士集団として、高い専門性を持ち、多くの企業の顧問弁護士を務めている。美容や広告に関するセミナーでの講演依頼を多数受け、新聞をはじめとしたメディアからも数多くの取材を受ける。

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