- 2016.8.21
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治療前、治療後の写真を宣伝に使っていいかという質問を受けることがよくあります。
答えはYesでもありNoでもあります。
例えば、料金を払って検索サイトで上位に表示されるようにしたホームページに治療前、治療後の写真を映し出すことは問題があります。しかし、来院した患者さん向けに、待合室のモニターに全く同じ条件で撮影した治療前、治療後の写真を映し出すことは問題がない場合が多いでしょう。
なにが違うのでしょうか?
医療広告については、厚生労働省が「医療広告ガイドライン」、「医療広告ガイドラインに関するQ&A」などで何が許され、何が許されないかをある程度明確にしています。そして、このガイドラインによれば、治療前、治療後の写真は、広告が禁じられている「治療の効果に関する表現」に当たり許されないとされています。治療前、治療後の写真の広告を許してしまうと、本当は治療の効果が一定ではないのに、広告を見た者が必ず写真のような効果が得られると誤解してしまう可能性があるからです。
そうすると、来院した患者さん向けに、待合室のモニターに治療前、治療後の写真を映し出すことも許されないことになりそうですが、実は、必ずしもそうではありません。先ほどの「医療広告ガイドライン」、「医療広告ガイドラインに関するQ&A」は、どちらも「広告」に関するものです。
そして、「広告」とは、「医療広告ガイドライン」によれば、①患者の受診等を誘引する意図があること(誘因性) ②医業若しくは歯科医業を提供する者の氏名若しくは名称又は病院若しくは診療 所の名称が特定可能であること(特定性) ③一般人が認知できる状態にあること(認知性)のすべての要件を満たすものであるとされています。来院した患者さん向けに、待合室のモニターに治療前、治療後の写真を映し出すことは、これらの「広告」の要件を満たすでしょうか?
このような来院者向けの表示は、院内掲示や院内で配布するパンフレットなどと同じように、情報の受け手が、現に病院を受診している患者さんらに限られますから、③の一般人が認知できる状態にあることの要件が欠けます。ですから、待合室のモニターに治療前、治療後の写真を映し出すことは、「広告」に当たらず、単なる「情報提供」や「広報」に当たるとされ、許される可能性があるのです。
それでは、最後にこの記事を読まれている方に質問です。
歩行者が多い駅近くのクリニックの大型モニターに、治療前、治療後の写真を写していましたが、そのモニターは病院の外に向けられており、通行人もそのモニターを見ることができる状態でした。法律上、問題はないでしょうか?
もうおわかりかと思いますが、クリニック内のモニターとはいえ、それがクリニックの外の一般人に向けられていれば、広告に当たりますから、許されないということになりそうです。
このように、治療前・治療後の写真を宣伝に使ってもいいですか?という質問には、すぐにいいです、だめですと答えられない理由があるのです。

弁護士法人丸の内ソレイユ法律事務所 美容広告専門チーム

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