健康食品の広告に対する薬機法の規制

1.はじめに

健康食品のような製品の広告は、薬機法による規制を受けます。しかし、薬機法の正式名称は「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保に関する法律」です。つまり、医薬品について規定した法律で、薬機法の中には「健康食品」という言葉は一切出てきません。それなのに、健康食品の広告が薬機法の規制を受けるのは、どのような理屈からなのでしょうか。
 

未承認医薬品の広告禁止と、医薬品の定義

その答えは、薬機法第68条と、薬機法第2条第1項にあります。
まず、薬機法第68条では、承認を受けていない医薬品の広告が禁止されています。
一方、薬機法第2条第1項では、医薬品の定義が規定されています。それによれば、医薬品とは、①病気の診断、治療、予防に使用されることが目的とされているもの、あるいは②身体の構造、機能に影響を及ぼすことが目的とされているもの、になります。この定義によれば、実際に病気の治療効果があるかどうかではなく、そのような目的を持っているということになれば、医薬品になります。つまり、健康食品であっても、広告の表示等から、病気の治療等の目的があると判断されると、定義上は医薬品に該当します。そうすると、医薬品としての承認を受けていない健康食品の広告は、薬機法第68条第1項に違反することになってしまうのです。
 

医薬品に該当するかどうかの判断基準

では、医薬品に該当するかどうかは、具体的にどのように判断するのでしょうか。
 

この点については、昭和46年6月1日に出された通知、薬初第476号「無承認無許可医薬品の指導取り締まりについて」が明らかにしています。昭和46年に出されたので46通知と呼ばれています。46通知によれば、医薬品に該当するかどうかの判断基準は次の5つです。
 

①明らかな食品の除外
②物の成分本質(原材料)
③医薬品的な効能効果
④医薬品的な形状
⑤医薬品的な用法用量
 

上記5つの判断基準を順番に確認しましょう。
 

① 明らかな食品の除外

野菜、果物、調理品など、外観や形状から明らかに食品と認識できるものは薬機法の対象とはなりません。では、水や香辛料(スパイス)は明らか食品に含まれるでしょうか?医薬品にも液体のものはありますし、スパイスのような粉末状の医薬品もあります。そうすると、水や香辛料(スパイス)は明らかに食品であるとは認識できないため、直ちには法の対象から除外されないことになります。
 

② 物の成分本質(原材料)

「専ら医薬品として使用される成分本質(原材料)リスト」に記載された成分が含まれていれば、それだけで医薬品となります。広告の内容は関係ありません。
 

③ 医薬品的な効能効果

食品であったとしても、以下のような医薬品的な効能効果が広告に表示されている場合には、その食品は医薬品だと判断されることになります。
 

a)疾病の治療又は予防を目的とする効能効果
例)「ガンがよくなる」「動脈硬化の人に」「肝障害・腎障害をなおす」「胃・十二指腸潰瘍の予防」「便秘が治る」など
 

b)身体の組織機能の一般的増強、増進を主たる目的とする効能効果
例)「疲労回復」「体力増強」「老化防止」「若返り」「新陳代謝を盛んにする」「心臓の働きを高める」「病中・病後に」
ただし、「健康維持」「栄養補給」「美容」の表現は認められている。
 

c)医薬品的な効能効果の暗示
例)
・「漢方秘法」などの名称・キャッチフレーズによる暗示
・「体質改善」などの含有成分の表示・説明による暗示
・「〇〇等の薬草を独自の製造法によって調製」などの製法の説明による暗示
・「〇〇という古い自然科学書をみると・・・」などの起源・由来等の説明による暗示
・雑誌記事・医師の談話、経験談などを引用又は掲載することによる暗示
 

以上のように、身体に影響を及ぼすような表現はすべて医薬品的な効能効果になります。食品そのものではなく、配合成分についての表現であっても同様です。食品の広告で言える範囲は、主に「健康維持」「栄養補給」「美容」の範囲内に限られます。
 

ただし、同じ栄養補給でも、病中病後や疾病時の栄養補給については医薬品的な効能効果とされているので注意が必要です。一方で、発育期、妊娠授乳時の栄養補給は医薬品的な効能効果に該当しません。
 

また、身体の特定部位へ栄養を補給する表現をすると、通常は、当該部位の機能が向上することを暗示してしまいます。したがって、身体の特定部位への栄養補給を表現すると、基本的に医薬品的な効能効果になります。
 

④ 医薬品的な形状

アンプル形状など、通常の食品では流通しない形状を用いるものは医薬品にあたります。錠剤、丸剤、カプセル剤は、「食品」であることが明示されている場合は、形状のみによる判断は行いません。
 

⑤ 医薬品的な用法用量

食品は医薬品ではありませんから、いつ、どれくらい食べても基本的に体に影響はないはずです。そのため、食べる量や時期を指定することは、医薬品的な表現になるとされています。例えば、「1日2~3粒」「食前、食後に1~2個ずつ」等の表現です。
ただし、分量については「目安」を付ければ医薬品的な表現にならないとされています。「1日2~3粒目安」であれば問題ないということになります。

 
 

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広告は文章だけでなく、広告全体から判断されます。
最近多いアンチエイジング系の若返りワードや、肌色を変える美白系のワード以外にも、ビフォーアフター写真のような若返りを暗示する写真やイラストでの表現も薬機法違反の対象となりますので注意が必要です。
 

弁護士法人丸の内ソレイユ法律事務所は2009年に創業いたしました。2016年、弁護士業界ではいち早く美容健康分野に対するリーガルサービス提供を開始し、現在では健康博覧会、ビューティーワールド ジャパン、ダイエット&ビューティーフェアでの薬機法セミナー講師を務めるなど、美容健康業界の広告適正化に向けての啓蒙活動を行っている法律事務所でございます。弊所では美容広告に詳しい弁護士が多数在籍しており、皆様のご不安に寄り添うことができます。
 
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弁護士法人丸の内ソレイユ法律事務所 美容広告専門チーム

美容広告専門チームは、美容業界と広告に精通した弁護士集団として、高い専門性を持ち、多くの企業の顧問弁護士を務めている。美容や広告に関するセミナーでの講演依頼を多数受け、新聞をはじめとしたメディアからも数多くの取材を受ける。
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