薬機法において、医療機器の製造・販売・輸入で注意すべき点は?弁護士が解説

 医療機器を製造販売したり、輸入したいと考えたときには、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(以下「薬機法」といいます。)の製造販売業許可や製造業登録が必要になります。

 

 

1 薬機法における「医療機器」とは

 そもそも「医療機器」とは 薬機法において、「人もしくは動物の疾病の診断、治療もしくは予防に使用されること、又は人もしくは動物の身体の構造もしくは機能に影響を及ぼすことが目的とされている機械器具等(再生医療等製品を除く。)であって、政令で定めるものをいう」とされています。

 また、「医療機器」の範囲も、人の生命及び健康に与える影響の程度に応じて、以下のように分類されています。

 

 クラスⅣ・クラスⅢ:高度管理医療機器
副作用又は機能の障害が生じた場合において、人の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがあるもの

 

 クラスⅡ:管理医療機器
高度管理医療機器以外で、副作用又は機能の障害が生じた場合において、人の生命及び健康に影響を与えるおそれがあるもの

 

 クラスⅠ:一般医療機器
上記以外で副作用又は機能の障害が生じた場合においても、人の生命及び健康に影響を与えるおそれがほとんどないもの

 

2 「製造業登録」と「製造販売業許可」

⑴ 「製造業登録」とは、医療機器の製造を行うための製造所ごとの登録です。ただし、この登録では、市場への出荷はできません。
 平成17年4月1日に施行された改正薬事法により、医療機器の製造業者は、製造した製品を自らの意思で市場に出荷することができなくなりました。製造業者は、製造した製品を製造販売業者に納め、製造販売業者が市場へ出荷するという手順となり、製造販売業者がその製品の市場への出荷に関する責任を持つということになったのです。そのため、医療機器の製造業を始めたいという方は、まず製造販売業者は誰かということを確認する必要があります。

 

⑵ 「製造販売業許可」というのは、製品を市場に出荷するために必要な許可です。販売する製品に対して最終的な責任を持ち、自社の名前で市場へ出荷します。ただし、この許可では、製品を製造することはできません。

 

3 医療機器を製造販売するときの注意点

⑴ 製造販売とは、製造又は輸入した製品を販売、賃貸又は授与することをいいます。医療機器を製造販売しようとする場合、医療機器の分類に応じて、「製造販売業」の許可を受ける必要があります。

 

 医療機器の製造販売業の許可は、第1種、第2種、第3種があります。それぞれ、取り扱うことができる医療機器が異なります。第1種製造販売業の許可業者は高度管理医療機器、管理医療機器及び一般医療機器のすべてを製造販売することができます。第2種製造販売業の許可業者は、管理医療機器及び一般医療機器を、第3種製造販売業の許可業者は、一般医療機器のみを、それぞれ製造販売することができます。それぞれ有効期間は5年で、期間ごとに更新を受けなければ失効します。製造販売業の許可を取得した後、取り扱おうとする医療機器について、承認又は認証を受ける、又は届出をすることにより、市販が可能となります。医療機器の製造販売業、は一法人につき一つの許可しか受けることができません。

 また、医療機器を外国の製造所において製造し、輸入しようとする場合、外国製造所の登録を受けなければなりません。

 

⑵ 製造販売業の許可を受けるには、
① 総括製造販売責任者を設置すること、
② 医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器及び再生医療等製品の製造販売後安全管理の基準に関する省令(GVP省令)に適合すること、
③ 医療機器又は体外診断用医薬品の製造管理又は品質管理に係る業務を行う体制の基準に関する省令(QMS体制省令)に適合すること、
 などの要件を満たす必要があります。
 特に上記③にあるとおり、医療機器の製造販売業者には、「医療機器及び体外診断用医薬品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令(QMS省令)で要求されているQMS(Quality Management System:品質マネジメントシステム)を遵守するよう求められており、許可の基準の一つとして、QMS省令に基づく製造管理及び品質管理の体制を整備することを求めるQMS体制省令の遵守が求められているのです。

 

4.医療機器を製造または輸入するときの注意点

⑴ 医療機器を製造しようとする場合は、薬機法に基づき、製造所ごとに登録を受けなければなりません。製造業者は、製造した医療機器を製造業者の意思により直接市場に出荷することはできません。
 また、医療機器を輸入する場合、市場出荷を行うために製品を保管する倉庫等については、製造業登録が必要です。外国の製造所については、日本国内の製造所の製造業登録に該当する外国製造業者登録が必要です。なお、外国製造所から直接日本へ市場出荷することはできません。日本国内の製造所で包装表示・保管された後、製造販売業者または製造販売業者から委託を受けた国内の製造業者による、市場への出荷判定を受ける必要があります。
⑵ 医療機器の製造所のうち、登録の対象となる製造工程は、
① 設計(製造販売業者の事務所で設計する場合を除く)
② 主たる製造工程(主たる組立て等)
③ 滅菌
④ 国内における最終製品の保管
 などであり、医療機器の分類等によって登録が必要な工程が異なっています。それぞれ有効期間は5年で、期間ごとに更新を受けなければ失効します。
⑶ 製造業登録をするには、責任技術者を設置する必要があります。なお、設計のみを行う製造所にあっては、製造業者が設計に係る部門の責任者として指定する者を責任技術者とすることができます。
 また、医療機器の製造販売業者が、QMS(Quality Management System:品質マネジメントシステム)を遵守するよう求められていることとの関係で、製造業者は、製造販売業者が行う製造管理及び品質管理に協力しなければなりません。

美顔器の広告は薬機法で規制される?使用可能な表現とは

美顔器の分類

美顔器は、医療機器としての承認を受けていない「雑品」であり、薬機法には、雑品の定義規定や雑品に対する規定はありません。 
そのため、美顔器の広告では、比較的自由に表示をすることが可能ですが「承認を受けた医療機器等であれば広告で表示することを認められている効能効果を記載できない」という制限があります。

 

つまり、「医療機器」に該当する、 
①疾病の診断、治療、予防を目的とする効能効果や、 
②身体の構造、機能に影響を及ぼすような効能効果 
は記載できず、単に美容目的を標榜するもので、身体の構造や機能に影響を与えない表現であれば使用可能となります。

 

美顔器広告で使える表現

美容目的というのは、化粧品に認められる効能効果の範囲で、事実に基づく表現をいいます。 
 
具体的には、 
「肌のキメを整える」 
「肌にハリを与える」 
「肌を引き締める」 
「肌を滑らかに保つ」 
「(汚れを落とすことにより)皮膚を清浄にする」 
等は表現可能です。 
 

広告表現での注意事項

肌への浸透表現に関しては、化粧品と同様に角質層までであり、肌の奥までぐんぐん入っていくかのような表現はできません。

他方、小顔になる、シミ・そばかすを除去する、リフトアップによりたるみが解消する、シワが改善する、美白になる、半永久的に脱毛できる等は表現できません。 
また、マッサージ効果を表現できるのは医療機器として承認されたマッサージ機器に限られますので、注意してください。

 

薬機法に規定のない雑品ですが、正しく表現できる効能効果の範囲を確認し、見せ方を工夫しましょう。

電話勧誘販売における特商法上の注意点~誘引段階の行為規制

1 電話勧誘販売の特徴

 電話勧誘販売とは、販売業者や役務提供事業者が購入者や役務の提供を受ける人の自宅や勤務先に電話をかけて、商品や役務提供の契約の締結を勧誘し、その電話や郵便などによって、契約の申し込みを受けたり、契約の締結をしたりする取引類型のことをいいます。

 電話勧誘販売は、事業者が電話をかけることによって、突然かつ一方的に勧誘行為が開始される時点で、消費者にとって不意打ち性が高いこと、電話を受けた消費者からすると、電話をしてきた相手の素性や目的もよくわからないまま会話をせざるを得ない状況となること、電話での会話では契約の内容や条件を正確に把握することが困難であること、勧誘が簡単である反面、執拗な勧誘となりやすいなどの特性や問題点があります。

 そのため、電話勧誘販売では、消費者が、契約をするか否かといった意思の形成過程において、不当な影響を受けやすく、誤った認識をしたり、契約が適切なものか否かについて正常な判断ができなくなる危険性が高くなるため、結果的に消費者の適切な自己決定を損なうことになりかねません。

 そのため、特定商取引法においては、電話勧誘販売を規制対象として、販売業者等の不当な行為を排除したり、不当な行為の影響下でなされた意思表示に基づく契約を簡単に解消する制度を定めています。

2 誘引段階の行為規制

(1)氏名等の明示義務
 販売業者等は、電話販売をしようとするときは、その勧誘に先立って、相手方に対し、「販売業者又は役務提供義務者の氏名又は名称及びその勧誘を行う者の氏名並びに商品もしくは権利又は役務の種類並びにその電話が売買契約又は役務提供契約の締結について勧誘をするものであること」を告げなければならないとされています(特商法第16条)。

 事業者の名前だけでなく、直接勧誘している担当者の名前をも伝える必要があります。

 これらの情報は「勧誘に先立って」告げることが定められていますから、電話で話し始めたらすぐに伝えなければならいとされています。

 電話をしている者が誰でどのような目的であるのかを最初に消費者に伝えた上で、勧誘をすることが求められており、話の途中で伝えたのでは、義務を果たしたことになりませんから注意が必要です。
(2)再勧誘等の禁止
 販売業者等は、電話勧誘販売による売買契約又は役務提供契約を締結しない意思表示をした者に対して、さらにその契約の勧誘をしてはならないとされています(特商法代17条)。

 契約を締結しない意思表示とは、「契約しません」というように明示されている必要はなく、「必要ありません」とか「買うつもりはありません」といった、契約をする意思がないことが推察されるものもすべて含まれます。

 なお、「契約の勧誘をしてはならない」というのは、契約を締結をしない旨の意思表示があった電話で勧誘を続けてはならないだけでなく、同じ契約については、日を改めての再勧誘も禁止されていますので、注意が必要です。

 

 電話勧誘販売は、その性質上、特商法により様々な規制があります。
 その他の規制については別の記事でご説明します。

改正薬機法施行で求められる薬局のガバナンス強化とは

 令和元年12月に公布された改正薬機法が、令和3年8月1日から施行され、許可または登録を受けて医薬品等の製造販売、製造、販売等を行う者による法令順守体制の整備等が義務付けられました。
 薬機法の許可を受けて医薬品の販売を行う薬局開設者及び販売業者は、国民の生命・健康に関わる医薬品の販売を行う事業者であり、薬局開設業者等に薬事に関する法令の違反があった場合には、保健衛生上の危害が発生したり拡大したりする恐れがあることから、高い倫理観と法令を遵守して業務を行う責務があるとされています。

薬機法改正で何が変わったのか

 今回の改正薬機法においては、薬局開設者等に対し、薬事に関する法令を遵守するための体制を構築することが義務付けられました。これは、法令順守を重視する統制環境を構築した上で、薬局開設者等が策定し、周知徹底された規範に基づいて業務が遂行され、業務の監督を通じて、問題点を把握しこれに対する改善措置を行うという法令遵守のためのプロセスを機能させることを求めるものです。
 また、薬局開設者等において法令遵守体制を構築し、薬事に関する法令を遵守するために主体的に行動し、薬局開設者等による法令違反に責任を負う者として、薬局開設者等の役員のうち、薬事に関する業務に責任を有する役員(以下「責任役員」といいます。)を薬機法上に位置づけ、その責任が明確化されました。

薬機法が求める法令遵守体制

 責任役員がその責務に反して、薬局開設者等が薬事に関する法令に違反した場合には、責任役員はその法令違反について責任を負うことになります。
 さらに、薬局開設者等の法令遵守のためには、薬局開設者等の根幹である業務を管理する責任者である管理者の役割が非常に重要になります。そのため、そのような業務を行う上で必要な能力及び経験を有するものを管理者として選任することが、薬局開設者等に義務付けられました。管理者に期待されていることは、薬局等の従業者を監督し、薬局等の構造設備及び医薬品等の物品を管理するなど、薬局等の業務について必要な注意を払うことです。したがって、これらの能力及び経験を有するものを管理者として選任しなければなりません。
 なお、現場における法令順守上の問題点を最も実効的に知りうる管理者の意見は、薬局開設者等の法令順守のために重要になりますから、薬局開設者は、管理者の意見を尊重し、法令遵守のために必要な措置を講じなければならないとされています。
 さらに具体的な内容については、「薬局開設者及び医薬品の販売業者の法令遵守に関するガイドライン」を参考にしていただくことをお勧めします。
 また、お困りのことがありましたら弊所にご相談ください。

プラットフォームでの個人販売について

個人で商品をネット販売する際、独自のホームページを開設しなくても既存の「オンラインショッピングモール」というプラットフォームを利用すれば、だれでも商品を売ることができるようになりました。この記事ではオンラインショッピングモールに出店する際に気を付けたい景表法や売買契約について解説いたします。

プラットフォーム型のビジネス

 プラットフォームという単語は、高台、舞台、(駅のプラット)ホーム等の意味を有しています。
 この単語は、様々な文脈で用いられており、IT用語として用いられるときは、システム、ソフトウェア等の共通の基盤・標準環境といった意味で用いられます。
 そして、ビジネス用語として用いられる場合は、【(IT技術やデータを活用して)ユーザーである個人や企業に対して、取引やコミュニケーションの場を提供する(ビジネス)】といった意味合いで用いられています。
 「プラットフォーム」に含まれるビジネスモデルは多様で、「Google」、「Amazon」、「Meta(Facebook)」、「Apple」が行っているビジネスは(ビジネスモデルは大きく異なるものの)、いずれも(デジタル)プラットフォームであると言えます。
 特にイメージし易いのは、例えば、「楽天市場」や「Amazonマーケットプレイス」におけるビジネスではないでしょうか。
 インターネット上で商品を販売したいと考える出店者と、商品を購入したいと考えるユーザー(消費者)をつなぐ場(オンラインモール)があり、そこで取引が行われています。
 近年、デジタルプラットフォームにおける取引は急増しております。
 そこで、ビジネスとして、「プラットフォームで個人販売をしたい。」、「出店したい。」と考える方も多いのではないでしょうか。

まずは、出店に係る契約から(オンラインショッピングモールを前提に)

 プラットフォームのビジネスモデルは多様ですが、イメージし易い、オンラインショッピングモールへの出店を見ていきましょう。
 当事者としては、1.出店者(や出品者)、2.プラットフォーム事業者、3.消費者の3当事者が出てきます。
 出店(出品)しようと考えた方は、まず、プラットフォーム事業者との間で、出店(出品)に係る契約を締結することになります。
 この契約における各条項や、利用規約等(出店者としてのオンラインショッピングモール利用規約等)の各条項では、出店者としての禁止事項や、手数料、解約条件、免責事由等々、重要な事項が定められていますので、内容を十分に確認する必要があります。

消費者との売買契約

 出店者(出品者)と消費者との間の契約は、一般的には、(ショッピングモールを介した)売買契約と考えられます。
 出店者は売買契約の当事者(売主)として契約責任を負うことになります。
 なお、多くの場合、プラットフォーム事業者は、取引の場を提供するにとどまり、売買契約における当事者にはなりません。
 例えば、規約において、「当社プラットフォーム上で行われる、お客様とショップとの取引は、すべてお客様とショップとの間で直接に行われます。当社は、取引の当事者とならず、当該取引に関する責任は負いません。したがって、万が一、お客様とショップとの間でトラブルが生じた場合には、お客様とショップとの間で直接解決していただくことになります。」などと定められています。

景表法違反等に注意

 景品表示法(景表法)は、消費者保護のため、事業者に対し、自己の供給する商品又は役務についての不当表示等を禁止しています。
 例えば、商品の品質、規格などの内容につき、実際のものや事実に相違して競争事業者のものより著しく優良であると誤認させる表示は禁止されています(実際はブランド牛でない牛肉を「国産有名ブランド牛」の肉であるかのように表示して販売した場合、優良誤認表示に当たります。)。
 また、商品の価格などの取引条件について、実際のものや事実に相違して競争事業者のものより著しく有利であると一般消費者に誤認される表示も禁止されています(「今だけ半額」と表示を常時続けた場合、有利誤認表示に当たります。)。
 次に、オンラインショッピングモールにおける取引は、特定商取引法上の「通信販売」に当たるため、特商法の規制も受けることになります。
 特商法では、販売業者が所定の事項を表示する義務を負うことや、誇大な広告をしてはならないことを定めていますので、それらを遵守する必要があります。
 その他、薬機法等の規制もありますし、広告において他人の商標を侵害すれば商標権侵害の問題が生じます。
 プラットフォームにおいて個人販売をする場合には、広告等につき十分、ご注意下さい。

薬機法チャレンジとその危険性

コロナ禍において、度重なる緊急事態発言の発令、外出自粛などから人々の行動が大きく制限されている日々が続ています。「#おうち時間」「#ステイホーム」など、自宅で自らと向き合う時間も増え、「宅トレ」「自宅美容」がトレンドになるなど、人々の健康意識は総じて高まりを見せています。
そして、このような人々の健康意識の高まりは、健康食品や健康器具等を扱う企業にとっては、ビジネスチャンス。消費者の心を魅了するような広告を打って、購買行動を加速させたいと思うのも無理はありません。
ですが、消費者の購買意欲を煽りたい企業が、思うままに宣伝をしていいわけではありません。消費者の健康被害を防ぐために関連する法規、様々な規制があり、中でも皆様が気を付けるべきは「薬機法」という壁です。

昨今話題、問題になっている「薬機法チャレンジ」。今回の記事ではそのいわゆる「薬機法チャレンジ」とは何か、そしてその危険性を解説致します。

薬機法とは

正式名称を「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」といい、医薬品等の品質、有効性及び安全性の確保とともに、これらの使用による保健衛生上の危害の発生及び拡大の防止を目的としています(薬機法第1条)。
また、薬機法は、医薬品等の効能効果に関して虚偽・誇大広告を禁止するとともに(薬機法第66条1項)、医薬品等の承認を受けていないものについて効能効果に関する広告を行うことを禁止しています(薬機法第68条)。
つまり、薬機法は、医薬品等が人々の健康に与える影響の大きさを考慮して、人への効能効果を謳うことができるものを国が認めた医薬品等に限定し、承認を受けていないものについては人への効能効果を謳うことを禁止することで、有効か安全かわからないものによって人々の健康に危害が発生したり、危害が拡大したりすることを防止しているわけです。

「薬機法チャレンジ」とは

しかしながら、コロナ禍における人々の健康意識の高まりを受けて、上記の薬機法に違反するか否かギリギリを攻めた広告を行う企業が増えており、ネット上では、このように薬機法ギリギリを攻めた広告宣伝を行うことを「薬機法チャレンジ」などと呼ぶそうです。

「薬機法チャレンジ」の危険性

それでは、このような薬機法チャレンジは、企業にどのような影響をもたらすのでしょうか。広告が薬機法に違反すると判断された場合、まずは行政指導が行われ、その後措置命令が出される可能性があります。

具体的には、違反広告の中止、その違法行為が再び行われることを防止するために必要な事項又はこれらの実施に関連する公示、その他公衆衛生上の危険の発生を防止するに足りる措置をとるべきことが命じられます。このように、自らが違反広告をしていたことを自ら周知徹底するような措置を命じられることは、企業の評判を著しく低下させることになりますので、企業の業績に与える影響は大きいと思われます。

違反が悪質な場合には、違反広告を行った者が逮捕されて2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金(又は併科)を科されることがありますし、担当者だけでなく企業自体にも200万円以下の罰金が科されることもあり得ます。
さらに、企業への影響が大きいと考えられるのが、令和3年8月の改正で導入された課徴金制度です。違反広告を行っていた企業は、課徴金として、違反広告を行っていた期間中における対象商品の売上金額の4.5%の納付が求められるため、場合によっては莫大な金額の納付を求められることになります。
このように、薬機法に違反した場合には、企業自体の評判を著しく低下させるという意味でレピュテーションリスクが大きいだけでなく、経済的な損失も莫大となる危険性があります。

「薬機法チャレンジ」する前に弁護士に表現確認を

ビジネスチャンスに乗じて消費者の購買意欲を煽り、商品を多く売りたい、と考えることはごく自然なことですが、そのために薬機法チャレンジをすると、却って企業の信頼を損ね、多額の経済的損失を被る危険性があります。
このような危険性を考えると、薬機法チャレンジは、リスクが大きいといえるのではないでしょうか。

化粧品メーカーのクレーム対応ですべきこと

 化粧品は肌に触れるものですので、クレームは避けては通れません。クレームの中には色彩的にイメージと違ったというお客様の主観的なものから、肌トラブルのような健康被害まで様々です。これらのクレームへ謝罪して対応するだけではなく、しっかりと状況を確認し、時には商品を回収して被害状況を検証し、再発防止策を練ることも大切です。

クレームの種類

 化粧品メーカーでは、お客様からクレームを受けることも多く、その対応には注意が必要です。
 化粧品および薬用化粧品に関するクレームとしては、
 
・製品そのものの不具合
・製品を使用して、期待していたものと異なる
・製品を使用して、皮膚トラブルなどが起こった

 などがあります。

状況確認の必要性と対処方法

 たとえば、「外装が破損している」など、製品そのものの明らかな不具合に関するクレームに対しては、不具合の状況を確認した上で、速やかに正常品と交換することが大切です。
 これに対して、「異臭がする」「色がおかしい」など、製品そのものの不具合ではあるものの、原因が不明な場合、まずはお客様から不具合の具体的な状況、すなわち、

・どういう種類の異臭か、どういう色か
・いつ頃から発生したか
・商品のどこから発生したか

などの事情を聴き取り、不良品を回収して原因を特定する必要があります。また、実際に不具合を確認できた場合も、不具合の発生に至る経路まで特定して、再発防止に努めなければなりません。不具合に至る原因として、原材料自体が汚染されていることもあれば、製造過程で工場のラインの一部が不衛生な状態であったこともあるでしょうし、あるいは、化粧品を入れるビンや箱等の容器が汚染されていることもあるなど、様々な原因が考えられるからです。不具合の原因や発生に至る経路を特定できたら、クレームを出したお客様や必要に応じて行政に報告すると共に、汚染の原因を改善すべく対策を講じることが大切です。
 その一方で、「想像していたテクスチャーと異なる」など、使用者の主観に基づくクレームに対しては、商品の特徴を丁寧に説明するなどして、お客様の理解を得るよう努める必要があります。

健康被害が出たクレームへの対応

 しかし、実際に使用した結果、肌トラブルなどの健康被害が生じたというクレームの場合は、化粧品メーカーとして製造物責任を問われるおそれも出てきます。製造物責任は、製造物の欠陥が原因で、被害者の生命、身体又は財産に損害を与えた場合に、損害を賠償しなければならないというもので、よほどの事情がない限り免責されません。また、一度健康被害が生じてしまうと、1人の被害者の損害を賠償したとしても、製品の流通に伴って被害が拡大していったり、悪評が一気に広がってしまい、その後のメーカーの売上に大打撃を与えたりすることもあります。したがって、健康被害を生じたようなクレームを受けた場合は、可及的速やかに被害者の救済に乗り出すと共に、直ちに不良品を回収して被害の拡大を食い止め、再発防止を徹底することが不可欠です。

美容医療クリニックが気を付けるべき広告表示の規制

新型コロナウイルスの感染拡大防止対策として、在宅勤務やマスク着用がニューノーマルとなった昨年来、美容医療クリニックの利用者が急増しているといわれています。
「マスクの間にシミ取りを」「在宅勤務で通勤時間がなくなった分、近所の美容クリニックに通える」など、さまざまな思いで一念発起、通院を決めた利用者が増えているとのこと。
こうした美容クリニックを選ぶ上で欠かせないのが、ウェブサイトなどに掲載される美容医療クリニックの広告表示です。こうした広告においては、「医療広告ガイドライン」を遵守した表示を行うことが求められます。ここでは、美容医療クリニックが気を付けるべき広告表示規制について、ご紹介します。

美容医療クリニックが順守すべき「医療広告ガイドライン」

医療広告については、基本的に広告可能な事項が限定されていますが、一定の条件を充足すれば、広告可能な事項以外の事項についても広告することが可能です。
もっとも、条件の充足の有無にかかわらず、常に禁止される広告があります。医療は人の生命・身体に関わるサービスであり、不当な広告により受け手側が誘引され、不適当なサービスを受けた場合の被害が他の分野に比べて著しいと考えられていることから、かかる危険性を有する不当な広告については、常に禁止されることになります。
美容医療クリニックにおいても、最低限、禁止される広告は行わないよう気を付ける必要がありますので、次に具体例を交えてご説明します。(厚生労働省「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針(医療広告ガイドライン)に基づく)

内容が虚偽にわたる広告(虚偽広告)

虚偽広告については、医療法において罰則付きで禁止されています。具体例としては、以下のようなものが挙げられます。

・「絶対安全な手術です!」
・「どんなに難しい症例でも必ず成功します!」
→医学上、絶対に安全な手術というものはあり得ないため、虚偽広告として取り扱われます。

・加工・修正した術前術後の写真等の掲載
→あたかも効果があるかのように見せるために加工・修正した術前術後の写真等については、虚偽広告として取り扱われます。

・「1日で全ての治療が終了します。」(治療後の定期的な処置等が必要な場合)
→治療後の定期的な処置等が必要であるにもかかわらず、全ての治療が1日で終了するといった内容の表現を掲載している場合には、虚偽広告として取り扱われます。

・「患者様満足度〇%」(根拠・調査方法の提示がないもの)
→データの根拠(具体的な調査の方法等)を明確にせず、データの結果と考えられるもののみを示すものについては、虚偽広告として取り扱われます。非常に限られた患者等を対象に実施された調査や、患者等に謝金を支払うことにより意図的に誘導された調査の結果など、公正なデータといえないものについても虚偽広告として取り扱われます。

②他の病院又は診療所と比較して優良である旨の広告(比較優良広告)

特定又は不特定の他の医療機関と自らを比較の対象とし、施設の規模、人員配置、提供する医療の内容等について、自らの病院等が他の医療機関よりも優良である旨を広告することは禁止されています。そのため、「日本一」「No.1」「最高」等の最上級の表現は、客観的な事実であったとしても、禁止される表現に該当します。
また、「プロスポーツ選手の●●選手に患者第1号になっていただきました。」「モデルの●●さんも治療の効果を実感!」等、著名人との関連を強調する表現も、患者等を不当に誘引するおそれがあるため、比較優良広告として取り扱われます。

③誇大な広告(誇大広告)

必ずしも虚偽ではないものの、事実を不当に誇張して表現していたり、人を誤認させたりするような広告も禁止されています。具体例としては、以下のようなものが挙げられます。

・手術や処置等の効果又は有効性を強調するもの
→撮影条件や被写体の状態を変えるなどして撮影した術前術後の写真等をウェブサイトに掲載し、その効果又は有効性を強調することは、患者等を誤認させ、不当に誘引するおそれがあるため、そうした写真等については、誇大広告として取り扱われます。

・「比較的安全な手術です。」
→何と比較して安全であるか不明であり、誇大広告として取り扱われます。

・「●●の症状のある二人に一人が●●のリスクがあります。」
・「こんな症状が出ていれば命に関わりますので、今すぐ受診ください。」
→科学的な根拠が乏しい情報であるにもかかわらず特定の症状に関するリスクを強調することにより、医療機関への受診を誘導するものは、誇大広告として取り扱われます。

④患者等の主観に基づく、治療等の内容又は効果に関する体験談

いわゆる口コミについては、個々の患者の状態等により当然にその感想は異なるものであり、誤認を与えるおそれがあることをふまえ、医療広告としては禁止されています。

⑤治療等の内容又は効果について、患者等を誤認させるおそれがある治療等の前又は後の写真等

いわゆるビフォーアフター写真についても、個々の患者の状態等により当然に治療等の結果は異なるものであることを踏まえ、誤認させるおそれがある写真等については、医療広告としては禁止されています。
もっとも、術前又は術後の写真に通常必要とされる治療内容、費用等に関する事項や、治療等の主なリスク、副作用等に関する事項等の詳細な説明を付した場合については、医療広告として認められます。

医療広告ガイドラインの中から、特に美容医療クリニックで気を付けるべき禁止される広告について紹介してみました。医療広告ガイドラインを遵守して、適切な表現となるよう留意してください。

美容医療でのクレーム対応と予防

シミ取りや脱毛などの美容医療サービスの現場においては、患者からのクレーム、トラブルは避けて通れないものと思います。患者様は自分の思い描いたような姿になることを想像しながら施術を受けるため、思ったよりも効果がでなかったり、施術後に痛みや傷が残ったり想像もしていなかった事態になると一転してトラブルとなってしまうのです。

美容医療クレームとなる原因

美容医療の現場においてクレームが生じる理由としては、以下のことが考えられます。

①患者が期待したとおりの結果が得られるとは限らないこと

医療全般にいえることですが、患者が期待したとおりの結果が得られるとは限りません。特に、美容医療は、患者の外貌に関わる問題であることから、治療の結果に対する患者の要求が非常に高く、期待通りでなかったという感情を抱く機会が通常の医療より多いといえるのではないでしょうか。

②患者が完全に満足する医療サービスを提供することは困難であること

患者に医療サービスを提供する過程には、医師だけでなく、看護師や、事務職員等の複数の人間が関わりますし、患者からすればクリニック等の施設の充実度合いについても当然医療サービスの一環と捉えることから、純粋な治療行為以外にも不満を抱くポイントが多く潜んでいるといえます。
特に美容医療は、自由診療であり、患者は高額な医療費を支払っていますから、サービス全般に対する期待の高さが、クレームにつながる側面もあります。

クレームへの対処方法

では、患者からのクレームが入った場合、どのように対処すべきでしょうか。
美容医療の現場のクレーム対応に限ったことではありませんが、クレーム対応の初動で最も重要なのは、クレームの内容を的確に把握することです。
最初の段階でクレームの内容や患者の要望を取り違えてしまい、軌道修正されないまま対応をしていると、更なるクレームを招きかねません。
クレームが入ると動揺しがちですが、まずは患者の主張と要望を的確に聞き取りましょう。その上で、医療的な対応が必要な案件であるのか、金銭的な問題等一般的なクレームに終始している案件なのか、或いは両方なのかを切り分けます。
そして、明らかに言いがかりと言えるような不当な要求については、弁護士等に対応をゆだねることも大事です。
また、不当なクレームに対応した従業員等のケアも怠らないようにしましょう。
クレームを完全に予防することは困難ですが、事前に説明義務を尽くすことが、クレーム予防の最善の策ではないでしょうか。

手に負えない場合は弁護士にご相談を

美容医療において求められる説明義務の程度は、一般の医療よりも高いことは裁判例でも明言されています。これは、美容医療が「より美しくなりたいとの個人の主観的願望を満足させるために行われるものであって、生命ないし健康の維持に必須不可欠なものではない」ためであるとされています。
このような点を留意して、説明義務を尽くしてもなお、クレームとなった場合には、是非弊所にご相談ください。

弁護士がアンチエイジング化粧品を製造するうえでの注意点を解説

①化粧品を製造するには「許可」が必要

化粧品を製造するには、厚生労働大臣の「許可」が必要であることが、法律(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(いわゆる薬機法)13条)によって定められています。
 
化粧水、香水、口紅等だけではなく、石鹸やシャンプー、ハミガキ、ボディローション、スキンケア用品、毛髪用剤なども化粧品に該当します。そのため、これらの化粧品を製造しようと思った場合、許可を得る必要があるのです。
 
なお、化粧品を「業として」製造する場合に許可が必要となりますので、例えば、「自分の趣味で、自己使用をする目的で、一度、石鹸を作ってみる」というような場合は、薬機法における許可は不要となります。

 

他方、石鹸等が、化粧品ではなく、医薬部外品や医薬品に当たる場合は、より強い規制を受けることになります。

 

②「製造販売」と「製造」

薬機法の12条において、化粧品の「製造販売」につき許可が必要であることが、薬機法の13条において、化粧品の「製造」につき許可が必要であることが定められています。
 
「製造販売」は、化粧品を製造し販売等をすることですが、ここでいう製造は、自ら製造をする場合の外、他に委託して製造する場合を含みます。
 
化粧品を製造販売するには、化粧品製造販売業許可が必要となります。
 
製造販売業者自らが製造する場合には、それに加え、次に述べる製造業許可を取っていることも必要となります(製造販売業許可だけの場合、製品を市場に出荷することはできますが、製造(包装・表示・保管のみを行う場合を含む)をすることは出来ません。)。
 
「製造」は、一般に、製品を実際に製造することですが、薬機法においては、製品の包装・表示・保管などの工程のみを行う場合も製造に当たります。
 
化粧品を製造するには、化粧品製造業許可が必要となります(但し、令和3年8月1日の法改正により、新たに「登録」の制度が設けられました。「登録」は、製造工程のうち「保管のみ」を行う製造所であって、薬機法13条の2の2に定める特定の条件に該当する場合のみ対象となります。この場合、登録をすればよく、許可までは不要となります。)。
なお、製造業者としては、製造した化粧品を市場に出荷・上市することは出来ません。

 

③製造販売を行う製品についての検討

製品を化粧品として製造販売するに当たっては、
 
(1)製品が化粧品の定義(薬機法2条3項)に合致していることの確認
(2)製品の効能が化粧品として認められている効能の範囲内であることの確認
(3)製品の配合成分が化粧品基準に適合していることの確認
 
をする必要があります。
もちろん、製品の安全性を十分に確認することも重要です。

 

④製造業の許可取得のために

化粧品の製造業の許可を取得するためには、製造所の構造設備が基準に適合していること等の条件を満たす必要があります。
 
許可申請は、製造所の構造設備の概要や、責任技術者の氏名等々の必要事項を記載した申請書を提出することによって行います。
 
申請後、書面による調査や実地の調査が行われ、条件を満たせば許可がなされることになります(許可証が交付されます。)。
 
なお、許可有効期間満了後も引き続き製造をする場合、更新手続が必要となります。
 

⑤許可以外の事項(「アンチエイジング」という表現等)について

製造販売業許可取得後、実際に製造販売を行うに当たっては、製造販売を行う製品につき、あらかじめ、届出を行う(「化粧品製造販売届書」を提出する)必要があります。
 
更に、化粧品の販売に当たり広告をしていく場合、広告規制が適用されます。「アンチエイジング」というワードは、医薬品的効能効果を指すものであるため、許可を受けた医薬品以外の商品において、商品と絡める広告などで標榜することが認められていません。「アンチエイジング」という言葉は、化粧品の効能効果として標榜することが認められていないのです。
 
したがって、販売を企図して、「(いわゆる)アンチエイジング化粧品を製造しよう」と考えた場合、実際の販売・広告の場面では、「アンチエイジング」というワードを化粧品の効能効果として標榜することが出来ない、ということを念頭において、製造につき検討すべきかも知れません。
 
このように、化粧品の製造(及び、販売、広告)の場面では、許可が必要であったり各種の規制・制限があったりしますので(輸入についても同様です。)、専門家の協力を得ながら対応していくのが良いでしょう。