【令和6年4月】特定商取引法違反の通信販売業者 株式会社オルリンクス製薬に対する業務停止命令等の発令について 

消費者庁は、サプリメントや健康食品等を販売する通信販売業者である株式会社オルリンクス製薬に対し、令和6年4月9日、特定商取引法の規定に基づき、3か月間通信販売業務の一部(広告、申込受付及び契約締結)停止法令遵守体制の整備その他の再発防止策を講ずること等の指示を命じるとともに、同社の代表取締役に対し、3か月間、同社に対して前記業務停止命令により業務の停止を命ずる範囲の業務を新たに開始すること(当該業務を営む法人の当該業務を担当する役員となることを含む)の禁止を命じました。 

 

消費者庁「特定商取引法違反の通信販売業者に対する業務停止命令(3 か月)及び指示並びに当該業者の元代表取締役に対する業務 禁止命令(3か月)についてhttps://www.caa.go.jp/notice/assets/consumer_transaction_cms203_240410_01.pdf 

 

通信販売業者の義務

今回、行政処分の根拠となったのは、特商法上、通信販売業者に課される次の表示に関する規制です。

 

⑴ 誇大広告等の禁止(特商法12条) 

通信販売業者が広告を行う場合、商品の性能や、契約の解除等に関する事項について、著しく事実に相違する表示をし、又は実際のものよりも著しく優良であり、若しくは有利であると人を誤認させるような表示をしてはならないこととされています。 

 

⑵いわゆる最終確認画面における表示義務 

通信販売においては、申し込み完了することとなる、いわゆる最終確認画面において、商品等の販売価格や、支払時期・方法、契約の解除に関する事項をはじめ、一定の事項について表示することが義務付けられています。 

 

問題となった行為(特商法12条の6) 

今回、具体的に消費者庁が上記規制に抵触すると判断したのは、次のような表示でした。 

消費者庁ホームページより https://www.caa.go.jp/notice/assets/consumer_transaction_cms203_240410_01.pdf

⑴誇大広告等の禁止 

オルリンクス製薬は、販売する定期購入契約の商品について、広告上は「24時間365日自動音声で解約可能」、「限られた時間内でしか解約の出来ない不便さは一切ありません 面倒な手続き・解約阻止の説得などもゼロ」 等と表示していました。 

 

一方、実際の契約解除方法は、まず解除できる時期につき、消費者の商品受領後、一定の期間に限られており、さらに、解除の方法としても、電話問合せの上、URLからメッセージアプリの専用アカウントに登録 (友だち追加)して、当該アカウントのトークルーム内で氏名等を入力することで本人確認を行い、その後、エントリーフォームで最低15文字以上の記入が必要なものを含め、10問以上の質問への回答の入力をしなければならず、その上で、オルリンクス製薬において、当該エントリーフォームに入力された内容を確認して、その結果連絡を消費者がメッセージアプリで受け取ることにより解除が完了するという、煩雑な手続を経る必要がありました。 

 

上記のような広告について、消費者庁は、あたかも、簡易な手続により契約を容易に解除できるかのように示す表示をしていた一方、契約を容易に解除できなかったとして、誇大広告違反と指摘したわけです。 

 

⑵いわゆる最終確認画面における表示義務 

オルリンクス製薬は、いわゆる最終確認画面において、解約方法に関する上記の契約条件につき、その一部しか表示していませんでした。 

 

具体的には、最終確認画面上では、解約希望の場合、「商品をお受け取りいただいた後、次回の発送日の14日前までにお客様ご自身にて【オルリンクスオートメーションサポート(解約・休止専用窓口)】までご連絡を頂き、案内にしたがってLINEにて解約・休止の申請をしてください。」との表示程度しか行わず、そのほかの解約に関する条件については「詳しい解約手続はこちら」として別のページを引用する方法をとっていたようです。 

 

かかる表示をもって、消費者庁は、最終確認画面における表示義務に違反があるものと判断しました。 

 

 

特商法12条による摘発について 

特商法12条に関しては、先月に初の摘発事例が出たところであり、これに引き続き景表法ではなく、特商法によって摘発がされました。 

 

No.1表示が問題となった前回の摘発事例と異なり、今回のケースは、解約手続に関する表示が問題となったケースであり、景品表示法の有利誤認表示としても摘発が考えられたと思料されますが、課徴金の納付命令の可否等も含め、消費者庁は特商法による摘発を実施したものと思われます。 

 

参考記事: 

https://www.health-beauty-soleil.jp/%e5%88%9d%e3%81%ae%e7%89%b9%e5%95%86%e6%b3%9512%e6%9d%a1%ef%bc%88%e8%aa%87%e5%a4%a7%e5%ba%83%e5%91%8a%ef%bc%89%e9%81%95%e5%8f%8d%e3%81%ae%e4%ba%8b%e4%be%8b%ef%bc%88%e3%83%8a%e3%83%b3%e3%83%90%e3%83%bc/ 

 

最終確認画面における表示義務について 

最終確認画面に関する表示については、消費者庁から、以下のガイドラインが出されており、どういった表示を満たせば適法な表示といえるかの指針が示されています。 

 

そのため、ECサイトを開設・運営するにあたっては、このガイドラインを参照することが必要です。 

 

消費者庁「通信販売の申込み段階における表示についてのガイドライン」(https://www.no-trouble.caa.go.jp/pdf/20220601la02_07.pdf 

 

特に最終確認画面は、サイト作成上の都合で、表示できる文章量、スペースが限られるということがあると思います。そのような限界からか、最終確認画面の表示を順守していない業者も見受けられます。 

 

しかし、まず、ガイドラインでは、すべての条件を最終確認画面それ自体に列記することまでは求めておらず、リンクを設けて、リンク先に詳細を明記する方法や、別ウィンドウに詳細を記載する方法でも差支えないこととされています。 

 

したがって、通販事業者としては、こういった方法も駆使して、適法な表示を行う必要があります。 

 

但し、注意が必要なのは、解約条件については、解約方法を特定の手段に限定する場合、とりわけ、消費者が想定しないような限定がなされる場合や、消費者が申込みをした際の手段に照らして当該消費者が容易に手続を行うことができると考えられる手段での解約連絡を受け付けない等の場合には、リンク先や参照ページの表示に委ねるのではなく、最終確認画面においても明確に表示することが必要であると、ガイドライン上、示されていることです。 

 

解約条件が消費者の保護、トラブル防止に重要なものであることから、特に解約に煩雑な手続を求めたり、解約方法を限定したりする場合には、その点を消費者が明確に認識できるよう明示的な記載が求められているといえます。 

 

今回処分を受けたオルリンクス製薬も、「詳しい解約手続きはこちら」として、リンクを使用することで、解約条件を別途表示していたように見受けられますが、同社の解約条件のような煩雑な手続を求めるものについて、そのような表示をしていたとしても、最終確認画面における表示として不十分であると判断されたものと思料されます。 

 

消費者庁は、近時、NO.1表示との関係でも、活発に処分を出している状況です。 

 

ECサイトの開設・運営にあたっては、表示事項の適法性を維持できるよう、弁護士のリーガルチェックを受けるなどの対応をおすすめします。 

【令和6年3月】東京都から株式会社ヘルスアップ、株式会社ニコリオに対して景品表示法に基づく措置命令が出されたことについて弁護士が解説

東京都は、令和6年3月24日、機能性表示食品を販売するに当たり、誰でも食事制限や運動をすることなく、容易に顕著な痩身効果を得られるかのような広告表示をしたとして、通信販売業者2社に対して景品表示法に基づく措置命令を行いました。

 

今回は、東京都は、どういった理由で措置命令を行ったのか、今後、どういった点に注意していけばよいのか、解説したいと思います。 

 

措置命令の内容

東京都ホームページよりhttps://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/hodohappyo/press/2024/03/27/documents/17_01c.pdf

今回の措置命令のポイントは、2点あります。

 

まず一点目としては、「シボローカ」と称する機能性表示食品について、あたかも国が痩身効果を認めたかのように示す表示を行っていたことです。機能性表示食品は、事業者の責任において、科学的根拠に基づいた機能性を表示した食品で、販売前に安全性及び機能性の根拠に関する情報などが消費者庁長官に届け出られたものをいいます。消費者庁長官の個別の許可を受けたものではありません。

 

今回の広告表示では、「飲むだけで痩せると国が認めた成分が解禁されました!」などと表示し、いかにも国からの個別の許可を受けたような事実に反する表示をしていました。 

 

もう一点は、誰でも食事制限や運動をすることなく、容易に顕著な痩身効果を得られるかのような広告表示が優良誤認表示にあたるという点です。機能性表示食品は、あくまで食品ですので、身体の構造や機能に影響を及ぼす効果はありません。

 

そうすると、食事制限や運動をすることなく、ある食品を摂取したことだけを理由に痩身効果が得られることはあり得ません。したがって、商品について、実際のものよりも著しく優良であると示していたとして、優良誤認表示にあたると判断されました。

 

広告表示には、「※個人の感想であり効能効果を保証するものではありません。」と記載されておりましたが、そもそもの表示が、実際には得られるはずのない痩身効果を訴求するものなので、こうした表示には意味がありません。 

 

特に健康食品については、飲むだけで身体の機能が改善されるかのような、いきすぎた広告がなされることが多いので、注意が必要です。 

 

アフィリエイトサイトであっても注意 

東京都ホームページよりhttps://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/hodohappyo/press/2024/03/27/documents/17_01c.pdf

 

今回の広告表示は、アフィリエイターが作成したものになります。アフィリエイターに広告を作成させ、広告主が内容を把握していない場合であっても、基本的に広告主は景品表示法上の責任を負うことになります。 

 

したがって、広告主としては、広告代理店やアフィリエイターに全て任せるのではなく、広告表示の内容について事前に確認をしたり、特に購入者の多いアフィリエイトサイトについては広告表示について事後的にもチェックするなど、景品表示法の規制に反していないか注意する必要があります。 

 

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【令和6年3月】株式会社バウムクーヘンに対する景品表示法に基づく課徴金命令について解説 

消費者庁が、令和6年3月26日、株式会社バウムクーヘンに対して、景品表示法上の優良誤認表示に該当するとして、課徴金納付命令いました(参考株式会社バウムクーヘンに対する景品表示法に基づく課徴金納付命令について (caa.go.jp)なお、同社に対しては、令和5年6月14日時点で、同様の件について措置命令が出されていました。


どのような広告表現が指摘を受けたのか

消費者庁HPより:https://www.caa.go.jp/notice/assets/representation_cms210_240326_02.pdf

株式会社バウムクーヘンは、「アイズワン」と称するペット用サプリメントを販売していたところ、その広告表示において、犬に同サプリメントを摂取させることにより、犬の白濁した瞳が改善する効果が得られるかのような表示をしていました。


具体的には、イラストにて、犬が物にぶつかる描写をしたうえで、その犬の目が白濁している様子を描き、飼い主の心の声として、「年齢とともに不自由になっていく」「若々しかった目の輝きもなくなったような…」
と記載していました。そして、ドッグサロンで「アイズワン」を紹介され、3か月与えた結果、目の白濁が解消したかのような表現をし、かかりつけの獣医からも褒められるというストーリーを作っていました。

このような一連の広告上のストーリーから、同サプリメントの効能効果として、犬の目の白濁を改善する効果があることが読み取れます。
 


ナンバーワン表示も

消費者庁HPより:https://www.caa.go.jp/notice/assets/representation_cms210_240326_02.pdf

また、同社は、上記広告表示内に、「皆様に選ばれて7冠達成!」との表示をし、「No.1 日本トレンドリサーチ 愛犬家におすすめのアイケアサプリ」などとして、客観的な調査方法で調査した結果、同社の同サプリメントが7つの項目で1位を獲得したと表示していました。


しかしこの調査は、同社が委託した調査事業者において、事業者のウェブサイトの印象を問うたものにすぎなかったうえ、犬を飼育しているか否か等の回答者の条件を付さずに広く調査をしたものであって、調査項目に沿って客観的に調査したものとは言えない方法をとっていました。そのため、消費者庁は、このようないわゆるナンバーワン表示についても、優良誤認表示に該当するものと判断しました。
 


措置命令から9カ月後の課徴金納付命令

もともと消費者庁は、本件について令和5年6月14日の時点で、景品表示法上の優良誤認表示に該当するとして、同社に対して措置命令を出していました。今回の課徴金納付命令のニュースリリースを見る限り、同社は措置命令が出された時点で、これらの不当表示を取りやめていますが、措置命令が出されてから約9か月後に、課徴金納付命令も出された形です。

措置命令だけでも、事業者及び商品の社会的な信用は著しく失われてしまいますが、その後課徴金納付命令も出され、経済的な打撃も加わることを踏まえますと、やはり不当表示を行わないことは非常に重要かと思います。今一度広告表示について見直すことをおすすめいたします。

 

【令和6年3月】初の特商法12条(誇大広告)違反の事例(ナンバー1表示) 

業務停止命令及び指示、並びに、業務禁止命令の発令 

令和6年3月14日、消費者庁は、通信販売を行っている会社に対し、特定商取引法15条1項に基づき、同月15日から同年6月14日までの3か月間、通信販売に関する業務の一部(広告、申込受付及び契約締結)を停止するよう命じました。また、合わせて、消費者庁は、特定商取引法14条1項に基づき、同会社に対し、法令順守体制の整備その他の再発防止策を講ずることなどを指示しました。さらに、消費者庁は、同社の代表取締役個人に対し、特定商取引法15条の2第1項に基づき、同月15日から同年6月14日までの3か月間、上記の業務停止命令による業務の停止を命ずる範囲の業務を新たに開始すること(当該要務を営む法人の当該業務を担当する役員となることを含む。)の禁止を命じました。 


 この内容だけ見ると、特定商取引法に基づく通常の行政処分だと感じます。ただ、本件は、特定商取引法12条違反が認定された初の事例ということです。そこで、特商法12条の内容や景品表示法の優良誤認との比較もしながら見ていこうと思います。 


特定商取引法12条(誇大広告違反)と景品表示法の優良誤認

特定商取引法の条文は、次のとおりです。 


(誇大広告等の禁止)

第十二条

販売業者又は役務提供事業者は、通信販売をする場合の商品若しくは特定権利の販売条件又は役務の提供条件について広告をするときは、当該商品の性能又は当該権利若しくは当該役務の内容、当該商品若しくは当該権利の売買契約又は当該役務の役務提供契約の申込みの撤回又は解除に関する事項(第十五条の三第一項ただし書に規定する特約がある場合には、その内容を含む。)その他の主務省令で定める事項について、著しく事実に相違する表示をし、又は実際のものよりも著しく優良であり、若しくは有利であると人を誤認させるような表示をしてはならない。 


次に、景品表示法の優良誤認に関する条文は、次のとおりです。 

(不当な表示の禁止) 

第五条

事業者は、自己の供給する商品又は役務の取引について、次の各号のいずれかに該当する表示をしてはならない。 


 商品又は役務の品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示し、又は事実に相違して当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも著しく優良であると示す表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの 


広告の対象が多少異なるものの、いずれの条文も、実質的に誇大広告禁止をその内容に含むものとなっています。


 

なぜ、今まで特定商取引法12条違反がなかったのか

1)優良誤認における不実証広告規制の存在 

不実証広告規制は、消費者庁等が事業者に対し、「当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めること」ができ、事業者が合理的な根拠を示すことができなかった場合、措置命令の場合には優良誤認とみなされ、課徴金納付命令の場合には優良誤認と推定されるという制度です。なお、みなされるというのは争う余地がなくなることを意味し、推定の場合には争う余地があるものの覆すのは大変です。なお、優良誤認の措置命令に関する不実証広告規制については景品表示法7条2項、課徴金納付命令に関する不実証広告規制については景品表示法8条3項に定められています。 


このように、景品表示法上の優良誤認については、広告をした会社等に対して、合理的な根拠を提出するように命ずることができ、それに基づいて、消費者庁が判断することができるという非常に強力な制度があるわけです。 


これに対し、特定商取引法12条違反には、不実証広告規制は適用されませんし、特定商取引法には不実証広告規制のような制度はありません。 


そうなると、ある誇大広告に対して、景品表示法の優良誤認、特定商取引法12条違反のどちらでも適用することができると考えられる場合、消費者庁は、景品表示法の優良誤認、そして、不実証広告規制の制度を使うことを考えるでしょう。 


(2)優良誤認における課徴金納付命令の存在 

上記の不実証広告規制の際にも少し触れましたが、景品表示法の優良誤認に該当する場合、景品表示法に基づいて課徴金納付命令を発令することができます。課徴金納付命令は、最大3年間の売上の3%を課徴金として納付させることができる命令で、非常に強力なものとなります。通信販売をしている会社としても、実際に利益を度外視して、売上を基に課徴金を納付することとなるので、経済的に痛手となります。 


これに対し、特定商取引法12条違反によって、課徴金納付命令を発令することはできません。 


そうなると、ある誇大広告に対して、景品表示法の優良誤認、特定商取引法12条違反のどちらでも適用することができると考えられる場合、消費者庁は、課徴金納付命令のことも考慮して、景品表示法の優良誤認違反を選択する可能性が高いと考えられます。 


(3)まとめ 

以上のとおり、ある誇大広告が存在する場合、特定商取引法12条違反、景品表示法の優良誤認違反など、複数の法令に違反する可能性があります。その際、消費者庁は、その法令の使い勝手(景品表示法における不実証広告規制の存在)や課徴金納付命令の有無などを考慮して、今まで、景品表示法の優良誤認違反を選択してきたものと思われます。 


これが、今まで、特定商取引法12条違反の事例がなかった大きな理由と考えられます。 


今回、特定商取引法12条違反を認定した理由は 

今回の事例で、特定商取引法12条違反を認定した理由は定かではありませんが、考えられる理由としては、上記において述べた景品表示法の優良誤認違反でなくても良いと考えられる理由があったということが挙げられると思います。


例えば、不実証広告規制の制度を使うまでもなく、特定商取引法12条違反が明らかであったといえる事例であった場合や課徴金納付命令を出せないほどに売上が低額であった(売上150万円未満の場合には、景品表示法の課徴金納付命令は出せません。)場合などが考えられます。
 


次に、本件の事例がナンバー1表示に関するものであったということも理由として挙げられるかもしれません。今回の事例では、通信販売をしていた会社は、10冠達成などと広告しており、当該広告が公平・公正な方法で行われた調査ではなかった(イメージ調査、委託事業者に登録している会員を対象に行われたもの、実際に体験した者に限っていない)という理由で特定商取引法12条違反と認定されています。

令和6年3月現在、立て続けに、ナンバー1表示に対する景品表示法の優良誤認違反に関する措置命令が出ています。消費者庁としては、景品表示法のみならず、特定商取引法にも違反することを公表しておきたかったというところも考えられるところです。
 


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【令和6年3月】「車両用クレベリン」と称する役務の提供事業者10社に対し景表法に基づく措置命令

消費者庁より措置命令

消費者庁は、令和6年3月13日、同月14日及び同月18日に、「車両用クレベリン」と称する役務の提供事業者10社に対し、10社が供給する「車両用クレベリン」と称する役務に係る表示について、それぞれ、景品表示法に違反する行為(同法第5条第1号(優良誤認)に該当)が認められたことから、同法第7条第1項の規定に基づき、措置命令を行いました。

措置命令をうけた10社は

であり、皆様においてご存知の会社様も含まれているのではないかと思います。

 

 

消費者庁の指摘事項等

今回、消費者庁から措置命令を受けた10社が提供していた役務(サービス)の内容は、「車内除菌・消臭サービス」になります。

 

措置命令を受けた10社は、例えば、

 

「DENSO 車両用クレベリン 社内空間の除菌消臭サービス

大幸薬品×DENSO 大幸薬品とデンソーの共同開発によるクレベリン(二酸化炭素ガス)を活用した車内除菌・消臭サービスです。」

「施工目安 約3ヶ月」

「点検整備・車検のタイミングで」

「車両用クレベリンの効果」

「洗えない車室内、シートを除菌 除菌・ウイルスの作用抑制」

「除菌・消臭(効果目安 約3か月)」

「除菌効果3ヶ月間」

 

といった表示をしていました。

 

これらの表示につき、消費者庁は、【あたかも、本件役務を利用することで、車室内において約3か月有効な除菌効果等が得られるかのように示す表示をしていた】と指摘しました。

 

そのうえで、消費者庁は、10社に対し、当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めたところ、【10社から資料が提出されたが、それらはいずれも、当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものであるとは認められないものであった】として、10社に対し措置命令を課しました。

 

まとめ

今回は、またしても、「除菌」等の効果に関するものが指摘されたものであると言えます。

 

以前、消費者庁は、大幸薬品が販売していた「クレベリン」シリーズの商品パッケージにつき、措置命令を課していました。

 

今回措置命令を受けたのは、クレベリンを用いた車内除菌等のサービス(役務)についてですが、サービス・役務についても措置命令の対象になるところですので、注意が必要です。

 

また、今回、10社から提出された資料の詳細は不明ですが、消費者庁は、【CMや広告で示されている環境・状況と、実験をしてエビデンスとして提出された環境が異なる場合】、合理的な根拠と認めてくれません。

 

例えば、今回の件の場合で見ますと、約3か月の間に、車両のドアの開け閉め等があるのが通常ですので、ドアの開け閉めの無い密閉された空間で3か月の除菌効果が得られたとしても、それは合理的な根拠と認めて貰えません。

 

こういった点にもご注意頂ければと思います。

【令和6年3月】痩身効果をうたう食品の販売業者(ティーライフ株式会社)に対する課徴金納付命令について解説

令和6年3月6日、ティーライフ株式会社に対し、同社が供給する「メタボメ茶」と称する食品に係る表示に関し課徴金納付命令が発出されました。

(消費者庁「ティーライフ株式会社に対する景品表示法に基づく課徴金納付命令についてhttps://www.caa.go.jp/notice/assets/representation_cms215_240306_01.pdf

 

 

今回、問題なったのは、ティーライフ社の「メタボメ茶」と称するポット用ティーバッグ30個入りの食品に関する広告です。 

 

 

同社は、通信販売で販売する商品に同梱して配布した冊子内の上記商品の広告において、「中年太り解決読本」「もう一度、あの頃のスリムな私に!」「漫画でわかる! 日本一※売れている中年太りサポート茶とは!?」「2年半で -43kg!! その方法を公開中!」等と表示していたところ、それらの表示が、上記商品を摂取することで著しい痩身効果を得られるように表示していたものと評価されました。 

 

 

課徴金納付命令について 

商品の品質等について、実際のものより著しく優良であると表示する行為(優良誤認表示)は、景品表示法上、不当表示として規制されており、これに違反すると、当該表示の対象となった商品の売上額の3%に相当する額を課徴金として納付することが命じられます。課徴金納付命令が発出されるまでには、まず措置命令が出され、改めて弁明の機会が付与されたうえで、課徴金納付命令が発出されます。ティーライフ社についても令和3年3月23日に措置命令を受けていました。 

 

 

消費者庁が課徴金納付命令を発出するまでには、優良誤認表示であるかの判断のため、合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができます。本件でも消費者庁はティーライフ社に対し、かかる資料の提出を求めていましたが、同社から提出された資料は、合理的な根拠を示すものとは認められないとの評価を受けました。 

 

相当の注意を怠ったものではないと認められるとき

優良誤認表示をした場合であっても、そのことを知らず、かつ、知らないことにつき相当の注意を怠った者でないと認められるときは課徴金納付を命じることはできません。 

 

 

本件では上記商品について、表示の裏付けとなる根拠を十分に確認していなかったとして、課徴金の納付が命じられています。 

 

 

「相当の注意を怠った者でない」かの判断に関しては、消費者庁のガイドライン(「不当景品類及び不当表示防止法第8条 (課徴金納付命令の基本的要件)に関する考え方」)上、当該事業者の業態や規模、課徴金対象行為に係る商品・役務の内容、表示内容及び課徴金対象行為の態様等を勘案するとされており、必要かつ適切な範囲で、「「事業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管理上の措置についての指針」(平成 26 年内閣府告示第 276号)に沿うような具体的な措置を講じていた場合、「相当の注意を怠った者でない」と認められると考えられる旨が示されており、参考となります。 

 

 

 打消し表示について

本件でティーライフ社は、上記広告の中で「※このストーリーはフィクションで す。」「※適度な運動と食事制限を取り入れた 結果であり実感されない方もいらっしゃいます。」「※個人の感想であり実感されない方もいらっしゃいます。」等、痩身効果を否定するような表示をしていました。このような表示を「打消し表示」といいますが、消費者庁は、打消し表示の存在をほとんど評価しません。 

 

 

本件でも、上記のような打消し表示は、消費者が問題となった広告表示から受ける上記商品の痩身効果に関する認識を打ち消すものではないと判断しました。 

 

最後に

消費者庁報道資料より https://www.caa.go.jp/notice/assets/representation_cms215_240306_02.pdf

昨今WEB広告に重きをおいている事業者様が多いと考えられますが、本件で指摘を受けたような商品送付の際の同梱物も広告に該当します。広告表示のリスク管理のため広告審査を法律事務所に依頼している事業者様が増えてきていると思いますが、WEB広告以外の紙媒体の広告表示についても、法令に違反した表示となっていないかの事前検討、確認が必要といえます。 

 

 

課徴金納付命令を受ければ、指摘を受けた商品売上の3%を納付する必要があり、事業者に高額の負担を生じる結果となり得ます(本件では、1771万円の納付が命じられています)。 

 

 

商品売上を伸ばすために攻めた広告表示をすることにはこのようなリスクを伴いますので広告表示のコンプライアンス意識を高め、弁護士のアドバイスを得るといった対応をすることが安心です。 

 

 

 

【令和6年2月】太陽光発電システム機器等の販売施工業者3社に対する景品表示法に基づく措置命令について解説

はじめに

消費者庁は、令和6年2月27日と29日と立て続けに、太陽光発電システム機器等の販売施工業者(株式会社新日本エネックス、株式会社安心頼ホーム、フロンティアジャパン株式会社)に対して、景品表示法に基づく措置命令を行いました。 

 

今回は、消費者庁は、どういった理由で措置命令を行ったのか、今後、どういった点に注意していけばよいのか、解説したいと思います。 

 

措置命令の内容

今回の措置命令は、いわゆる「No.1」表示について、合理的な表示ではなかったことを理由とするものです。 

 

具体的には、「No.1」表示の根拠となる調査について、あたかも本製品ないし役務について、実際に利用したことがある者又は知見等を有する者を対象に調査した結果において第1位であるかのように表示していたところ、実際には、利用したことがある者か又は知見等を有する者かを確認することなく、事業者の印象を問うものであったというものです。 

 

このように、「No.1」表示が合理的な根拠に基づかない場合には、景品表示法上の優良誤認表示に該当することになります。 

 

「No.1」表示が合理的根拠に基づくものと認められる場合 

公正取引委員会の「No.1表示に関する実態調査報告書」では、「No.1」表示が合理的根拠に基づくものと認められるには、①No.1表示の内容が客観的な調査に基づいていること、②調査結果を正確かつ適正に引用していることの両方を満たす必要があるとされています。 

 

①の「客観的な調査」に関しては、

 

(i)当該調査が関連する学術界又は産業界において一般的に認められた方法又は関連分野の専門家多数が認める方法によって実施されていること、

(ⅱ)社会通念上及び経験則上妥当と認められる方法で実施されていることが必要

 

であるとされています。

 

そのため、例えば調査対象者を自社に有利になるように恣意的に選定するとか、調査対象者数が極めて少ないとか、そもそも自社に不利な結果になりようのない質問項目を設定しているとか、そのような、結果の客観性に疑問が生じるような調査方法は、合理的根拠として認められないということになります。 

 

また、の「調査結果を正確かつ適切に引用」に関しては、直近の調査結果に基づいて表示するとともに、No.1表示の対象となる商品等の範囲、地理的範囲、調査期間・時点、調査方法、調査の出典等についても、当該調査の実態に即して明瞭に表示する必要があるとされています。 

 

イメージ調査の注意点について

今回の措置命令の対象となった「No.1」表示の根拠となる調査は、実際に製品を利用した顧客に対する調査ではなく、いわゆるイメージ調査でした。一応、「No.1」表示の直下には、調査概要として、「ブランドイメージ調査」、「サイトのイメージ調査」と明記しておりましたが、本件では、措置命令の対象となりました。 

 

 この点の詳細について、消費者庁の報道発表資料には言及がありませんが、「顧客満足度No.1」、「他人に紹介したい蓄電池販売No.1」、「北海道エリア 太陽光発電事業者見積価格満足度No.1」等の内容の表示について、これを見た消費者としては、実際に製品を利用した顧客に対する調査結果であるかのように受け止めますし、表示内容からして、実際に製品を利用した顧客に対する調査でなければ意味がないということかと思われます。 

 

 今後は、広告に「イメージ調査」と表示していれば問題ないと安易に考えるのではなく、イメージ調査としてふさわしい調査項目か、「No.1」表示を見た消費者が実際に製品を利用した顧客に対する調査結果を表示したものと誤信しないか、注意する必要があるでしょう。 

 

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「当社調べ」「第三者調査認定」を根拠としたナンバーワン表記は可能か

「顧客満足度、ナンバーワン!」などという記載があると、数ある広告の中でも目を引きますよね。ナンバーワン表記のある広告は、訴求力の高い広告の代表例と言えます。そのため、特に景品表示法上の広告表示規制に抵触しないよう留意する必要があります。

 

景品表示法とナンバーワン表記

景品表示法では、事業者が、自己の供給する商品・サービスの取引において、その品質、規格その他の内容もしくは価格その他の取引条件について、一般消費者に対し、

 

実際のものよりも著しく優良ないし有利であると示すもの
事実に相違して競争関係にある事業者に係るものよりも著しく優良ないし有利であると示すもの

 

であって、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められる表示を、優良誤認表示・有利誤認表示として禁止しています(景品表示法第5条1号、2号)。

 

ナンバーワン表記をする場合、例えば、「顧客満足度」「販売数」「提供件数」等について、ナンバーワンである旨を記載することとなりますが、前提となるデータに誤りがあり、実際にはナンバーワンではない場合、一般消費者に実際のものよりも優良ないし有利だと誤解を与えることにつながりますので、優良誤認表示ないし有利誤認表示に当たるのです。

 

つまり、前提となるデータが実態に即しているか?、さらに進んで、実態に即したデータであるためには、それをどのように取得するか?が、重要になります。

 

不当表示とならないためにはどうすればよいのか

公正取引委員会によれば、ナンバーワン表記が不当表示とならないためには、

 

①ナンバーワン表記の内容が客観的な調査に基づいていること
②調査結果を正確かつ適正に引用していること

 

の両方を満たす必要があるとされています。

 

ここから、実態に即したデータであると評価されるためには、そのデータが客観的な調査に基づいていることが必要ということがわかります。

 

そして、客観的な調査といえるためには、①当該調査が関連する学術界又は産業界において一般的に認められた方法又は関連分野の専門家多数が認める方法によって実施されていること、又は、②社会通念上及び経験則上妥当と認められる方法で実施されていることが必要とされています。 

 

「当社調べ」「第三者調査認定」は可能か

すなわち、例えば「当社調べ」として、販売会社が自社の社員や関係者を調査対象者として行った調査や、自社に有利になるように何等かの細工を施したうえで行われた調査というのは、客観的な調査とは言えないということになります。

 

では、「第三者調査認定」などとして、自社以外の第三者が行った調査によって認定されたとすればそれでよいのか?というと、必ずしもそうではありません。

 

第三者が、上記①のような専門家多数が認める方法で調査をしていなければいけませんし、調査対象者が統計をとるうえで必要十分な数を確保されていなければ、やはり客観性を担保できないこととなります。 

 

また、取得したデータを正確かつ適正に引用することも必要とされていますので、例えば、実際には商品を購入していない者を対象に行った商品画像のイメージ調査の結果をもとに、「〇〇部門でナンバーワンに選ばれました」などと記載することも、データを適切に引用できておらず、不当表示となります。「〇〇部門でナンバーワンに選ばれました」と記載されていれば、一般消費者からすると、実際に多くの人に購入されているという印象を持つため、まさかそれが購入していない者を対象に行った商品画像のイメージ調査に基づいた表示だとは思わないからです。 

 

摘発事例も多いので特にご注意を

商品を販売するにあたり、広告の訴求力は重要です。そのために、調査会社を利用してナンバーワン表記を取り入れる会社も多く存在します。

 

もっとも、その調査会社が実際にはどのような調査をしているのか?までをきちんと確認する作業を怠っていませんか?

 

重要なのは、ただデータを取得することではなく、実態に即したデータを取得し、それを適切に引用することだという点に、今一度意識を持っておきたいですね。 

 

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生成AIと著作権について弁護士が解説

昨今、生成型AIが世を賑わせています。世間的には、技術が進みとても便利になったという声が良く聞かれますが、他方でその問題点についても指摘されることも少なくありません。

 

実際に、海外では生成型AIの営利目的での利用を禁止する動きも見られます。一方日本国内では、学校の宿題や大学のレポート等教育の場面での使用を禁止するケースはありますが、国として大大的に禁止をするといったような動きはありません。今後は規制されるということがあり得るのでしょうか。

 

AIが生成したものに著作権はあるのか

海外で生成型AIの利用を禁止する理由としては、「著作権」を理由に禁止するケースが多いように見受けられます。

すなわち、生成型AIの仕組みとして、ネット上の情報を学習させた上で、使用者の要望に応えるという仕様が多いですが、ネット上の情報の中には「著作物」と言われる著作権法で保護される創作物が存在しています。

具体的には、文章、絵画、プログラム、写真、動画等ジャンルは問わず、人が作成した制作物に創作性(個性とも言われます。)が認められれば、著作物として認められ、著作権法上の保護を登記や登録等といった手続は一切不要で権利の保護がされます。著作物として認められると、著作権法上保護される権利(利用者からしてみると禁止される権利)として、著作物の複製、翻案という対象となる著作物に新たに創作性を加える行為、公衆送信というネット等の公の媒体に公開する行為等が挙げられます。

そして、生成型AIは、ネット上の情報を基に生成する訳ですから、仮にその生成物が著作物と認められる場合で、その依拠した対象が著作物である場合、複製や翻案権の侵害、また、それを公に開示すれば、公衆送信権違反が生じる可能性があります。 

よって、海外では著作権保護の観点から生成型AIの営利目的使用を禁止するケースが散見されるのです。(因みに、生成されたものが、著作物でない場合は、著作権違反にはなりません。) 

私的利用は可能

他方で生成型AIの個人利用は禁止されていないことが多いです。これは、私的利用、つまり、自分で楽しむ範囲であれば、著作権の侵害とはならないと定められていることが理由になります。

誰が責任を取るのかが課題

上記のとおりではありますが、実際に生成型AIで生成された生成物に関し、紛争にまで発展した場合、どの著作物に依拠したのか明確にすることができるのか、明確になったとして、誰が責任をとるのか(生成型AIを運営する会社なのか、命令をした利用者なのか)等、問題は少なくないように思います。

 

よって、今後このような生成型AIの課題に関する議論は、きちんと目を向けていく必要があると思われます。 

【令和6年2月】エアガン用BB弾の供給に係る表示につき消費者庁より課徴金納付命令

消費者庁より課徴金納付命令(1353万円)

消費者庁は、令和6年2月22日に、株式会社東京マルイに対し、同社が供給するエアガン用BB弾に係る表示について、景品表示法に基づく課徴金納付命令を出しました。

 

今回の件の課徴金の額は1353万円になります。

 

景品表示法に基づく課徴金納付命令の前には、同法に基づく措置命令があります(はじめに措置命令が出され、その後、課徴金納付命令の要件も満たしていると判断される場合に、弁明の機会の付与等の手続きを経て、課徴金納付命令が出されます。)。

 

株式会社東京マルイは、エアガン用BB弾に係る表示につき、令和4年12月に、消費者庁から措置命令を受けていました。

 

そして、今回、同庁より、課徴金納付命令が出されたということになります。

 

今回、措置命令が出されてから課徴金納付命令が出されるまでの期間はおよそ1年2か月でした。

 

消費者庁の指摘事項等

上記会社は、商品につき、自社ウェブサイトにおいて、「バイオ」、「本物の安心感 生(せい)分解(ぶんかい) ベアリング研磨0.20gBB弾 植物由来(PLA)やミネラル成分とで構成された『本物』の生分解、高精度BB弾です。石油系の原材料は一切使用していません。」、「地球環境にやさしい植物由来の素材やミネラル成分で構成」、「土の中や水中の微生物によって、地表落下後に水と二酸化炭素に分解されるため、屋外フィールドでの使用に適しています。」等と表示していました。

 

消費者庁は、これらの表示につき、【あたかも、使用後に地表に残されたままでも土壌中や水中の微生物によって水と二酸化炭素に分解される生分解性を有するかのように示す表示をしていた】と指摘しました。

 

その上で、【実際】として、上記会社に対し、表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めたところ、資料の提出はなされたが、いずれの資料も当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものとは認められなかったと判断し、課徴金納付命令を下しました。

 

景品表示法の規制は、商品・サービスに係る表示につき及びます。

 

今回は、エアガン用BB弾に係る表示が問題視されたものであり、改めて、景品表示法の適用対象は広いものであると感じます。

 

課徴金納付命令により多額の課徴金を課される恐れもありますので、商品・サービスを供給する事業者としましては、景品表示法違反に十分ご注意下さい。

 

 

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