薬機法に基づく広告規制の判断枠組みについて

薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)に基づく広告規制の判断枠組みの概要を以下ご説明します。

1 薬機法の主な広告規制の概要

薬機法の主な広告規制は、医薬品等の虚偽誇大広告を禁止する66条1項及び2項、そして、未承認医薬品等の広告を禁止する68条の2つです。

(1)虚偽誇大広告の禁止(66条1項及び2項)

以下の要件をみたすと、66条1項に違反します。

①何人も
②医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の
③名称、製造方法、効能、効果又は性能に関して、
④明示的であると暗示的であるとを問わず、
⑤虚偽又は誇大な記事を広告し、記述し、又は流布してはならない。

なお、66条2項には、医師等による効能等の保証広告を禁止する規制が、以下のとおり定められています。

①医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の
②効能、効果、性能について
③医師その他の者がこれを保証したものと誤解されるおそれのある広告

当該広告は、66条1項に違反するものとされます。

(2)未承認医薬品等の広告禁止(68条)
以下の要件をみたすと、68条に違反します。

①何人も
②未承認医薬品、未承認医療機器又は未承認再生医療等製品について
③名称、製造方法、効能、効果又は性能に関する
④広告をしてはならない。

66条と異なり、虚偽・誇大ではなく事実であっても直ちに違法となる点に注意が必要です。

2 注意すべき主なポイント

(1)主体

薬機法の広告規制の対象は「何人も」とされており、国内の製造販売事業者だけでなく、海外の製造販売事業者も規制の対象となりえます。

(2)医薬品等の定義

医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器及び再生医療等製品について、薬機法の2条1項から9項に定義が定められています。「医薬品」を例にとってみると、「人又は動物の疾病の診断、治療又は予防に使用されることが『目的』とされている物…」(同条1項2号)、「人又は動物の身体の構造又は機能に影響を及ぼすことが『目的』とされている物…」(同項3号)というように、治療や予防等の効果が客観的に備わっているかどうかではなく、あくまでそういった用途で使われることが『目的』とされている物という定義になっています。

よって、事業者としては、ある商品を健康食品として販売していても、たとえば、その商品の広告に病気の治療や予防効果があると記載していると、そういった治療や予防に使われることが『目的』とされている物ということになり、当該商品は、薬機法上「医薬品」に該当するということです。

そうすると、当該事業者としては、当該商品を健康食品として販売しており、医薬品としての承認を取得していないため、当該広告は、未承認医薬品の広告となり、直ちに68条違反になってしまいます。そして、広告の内容として、病気の治療や予防の効果がなければ、虚偽誇大広告として66条1項にも違反することになります。

「医薬品」に該当するか否かを判断するにあたっては、『無承認無許可医薬品の指導取締りについて』(昭和46年6月1日薬発第476号)が参考になります。このいわゆる46通知は健康食品の広告をチェックする上で、重要な通知となっています。

(3)広告の定義

以下の3要件全てをみたすと、薬機法66条及び68条の「広告」に該当します(平成10年9月29日医薬監第148号)。

①顧客を誘引する意図が明確であること(誘引性)
②特定の商品名が明らかであること(特定性)
③一般人が認知できる状態であること(認知可能性)

逆に1つでも満たなければ「広告」にはあたりませんので66条及び68条は適用されません。

「広告」の該当性に関して、①健康食品の商品名を記載したWebページ及び②特定性を排しつつ当該商品に含まれる成分等の医薬品的効能効果を記載したWebページの一体性が問題となることがあります。①だけ見れば、「広告」には該当するものの、医薬品的効能効果が記載されていないため、68条には違反しません。また、②だけ見れば、特定性に欠けるため「広告」に該当しません。

しかし、①と②がリンクや検索誘導等によって、実質的に一体の「広告」と見ることができる場合には、全体として68条に違反する「広告」となるおそれがあります。

(4)医薬品等適正広告基準

66条に該当するか否かの判断基準を厚生労働省が具体的に示したものが、『医薬品等適正広告基準』(平成29年9月29日薬生発0929第4号)です。また、同時に『『医薬品等適正広告基準の解説及び留意事項等について』(平成29年9月29日薬生発0929第5号)という詳細な解説が公表されており、参考になります。

景品規制の外観

1 景品とは

景品とは、①顧客を誘引する手段として②事業者が自己の供給する商品・サービスの取引に付随して提供する③物品、金銭その他の経済上の利益(以下「景品類」といいます。)のことをいいます。
簡単に言ってしまえば、商品やサービスにくっついてくるおまけのことです。
本来、事業者間の競争は、その価格や質によって行われることが消費者にとっては有益です。しかし、事業者が商品等そのものではなく、それに付けるおまけで競争をしたらどうでしょうか。
消費者は、商品・サービスそのものではなく、そのおまけに惑わされて本来購入すべきではない商品・サービスを購入してしまうかもしれませんし、事業者もその商品・サービスの質の向上や、少しでも安く消費者へ届けようとする努力をしなくなり、ひいては消費者全体の利益を害することにつながります。景品表示法は、このような事態を未然に防ぐため、事業者による景品の提供に制限を課しているのです。

事業者としては、まず、上記①~③の要件に照らし、消費者に提供しようとする経済上の利益が景表法上の「景品類」に該当するか否かの判断をする必要があります(例えば、値引きやポイントサービスに関しては、その性質上取引の本来の内容をなすものとして景品類には該当しないものとされています。)。

2 景品の種類

景品規制は、大きく分けて①懸賞による景品に関する規制と②総付景品に関する規制に分けられます。以下、簡単に内容を見てみましょう。

(1)懸賞による景品類の提供

ア 懸賞とは

「懸賞」とは、「くじその他偶然性を利用して定める方法」又は「特定の行為の優劣又は正誤によって定める方法」によって、景品類の提供の相手方又は提供する景品類の価額を定めることをいいます(懸賞制限告示第1項)。商品等を購入する消費者すべてに景品を提供する訳ではなく、抽選により提供する場合や、競技・遊戯等の優劣により提供する場合がこれに該当します。

イ 一般懸賞と共同懸賞

上記の「懸賞」のうち、「一定の地域における小売業者又はサービス事業者の相当多数が共同して行う場合」「一の商店街に属する小売業者又はサービス業者の相当多数が共同して行う場合(中元・年末等の時期において年3回を限度とし、かつ、年間通算して70日の期間内で行うものに限る)」に該当するものを共同懸賞といいます。祭りの際に市の商工会議所が主催するものや、商店街の福引等をイメージしていただければよいと思います。

そして、「懸賞」のうち、「共同懸賞」に該当しないものを、特に「一般懸賞」と呼んでいます。

(2)総付景品

総付景品とは、一般消費者に対して懸賞によらずに提供する場合の景品類のことをいいます。商品・サービスの利用者や来店者に対してもれなく提供する景品類が典型ですが、商品・サービスの購入の申込み順又は来店の先着順により提供される金品等も総付景品にあたるとされています。

3 景品規制の内容

景品表示法は、「カード合わせの方法による懸賞」を全面的に禁止していることを除き、景品類の提供方法ではなく、景品類の最高額、総額等を規制しています。具体的な規制内容は以下のとおりです。

(1)一般懸賞

ア最高額の制限

提供する景品類の最高額は、懸賞に係る取引の価額の二十倍の金額(当該金額が十万円を超える場合にあっては、十万円)を超えてはならない。

イ 総額の制限

提供する景品類の総額は、当該懸賞に係る取引の予定総額の百分の二を超えてはならない。

(2)共同懸賞

ア 最高額の制限

提供する景品類の最高額は、三十万円を超えてはならない。

イ 総額の制限

提供する景品類の総額は、懸賞に係る取引の予定総額の百分の三を超えてはならない。

(3)総付景品

総付景品については、その取引価額に応じて提供する景品の最高額が定められています。

ア 取引価額が1,000円未満の場合

提供する景品類の最高額は、200円

イ 取引価額が1,000円以上の場合

提供する景品類の最高額は、取引価額の10分の2

4 「景品類の価額」と「取引の価額」

上述したように、景品規制においては「景品類の価額」及び「取引の価額」を認定することが最も大切なプロセスとなってきます。以下、それぞれの認定方法について確認してみましょう。

(1)景品類の価額

景品規制の趣旨は、一般消費者が過大な景品提供に惑わされ適切な選択ができなくなることを防ぐことにありますので、景品類の価額を認定する際には、事業者の視点ではなく、あくまでも消費者の視点で考えるというのがポイントです。

ア 景品類と同じものが市販されている場合

景品類の提供を受ける者が、それを通常購入するときの価格によります。事業者が仕入れた際の原価ではありません。定価1,000円の商品をメーカーから100円で仕入れられたとしても、100円の景品として提供することはできないので注意が必要です。

イ 景品類と同じものが市販されていない場合

景品類と同じものが市販されていない場合でも、上記の景品規制の趣旨から、当該景品類が市販されていたとしたらどの程度の価値があるかということを考えることになります。そのような観点から、この場合の景品類の価額は、景品類を提供する者がそれを入手した価額、類似品の市価等を勘案して、景品類の提供を受ける者が、それ通常購入することとしたときの価額を算定し、その価額を景品類の価額とすることが定められています。もう市販されていないから、メーカーからの仕入価額とする訳にはいきません。

(2)取引の価額

取引の価額の認定についての基本的なルールは以下のとおりです。なお、前提として、「取引の価額」は、景品類の提供者が小売業者又はサービス業者である場合は、対象商品又は役務の実際の取引価額を、製造業者又は卸売業者である場合は景品類提供の実施地域における対象商品又は役務の通常の取引価額を基準とします。

ア 購入者を対象とし、購入額に応じて景品類を提供する場合

当該購入額が「取引の価額」となります。

イ 購入者を対象とするが購入額の多少を問わないで景品類を提供する場合

原則として百円となります。ただし、当該景品類提供の対象商品又は役務の取引の価額のうちの最低のものが明らかに百円を下回っていると認められるときは、当該最低のものを「取引の価額」とし、逆に、百円を超えると認められるときは、その商品又は役務の価額を「取引の価額」とすることができます。

ウ 購入を条件とせずに、店舗への入店者に対して景品類を提供する場合

原則として百円となります。ただし、当該店舗において通常行われる取引の価額のうち最低のものが百円を超えると認められるときは、当該最低のものを「取引の価額」とすることができます。

5 景品規制に違反すると

景品規制への違反に対しては、景表法上、「措置命令」という制度が用意されています。「措置命令」とは、景品規制に違反した事業者に対し、その行為の差止め若しくはその行為が再び行われることを防止するために必要な事項又はこれらの実施に関連する公示その他必要な事項を命ずることをいい、消費者庁又は都道府県知事によってなされます。
ただし、措置命令を発令するか否かは行政の裁量に委ねられており、景品規制に違反したとしても、必ず措置命令が発令される訳ではありません。
実際に、景品規制に違反したことを理由とする措置命令は、これまでに大阪府が1件発令したものがあるだけです。
そのため、行政指導として事実上の是正がされるに過ぎないことが多いと思われますが、行政指導といっても行政の監視の対象となってしますことは避けられませんので、上述した景品規制には真摯に向き合うことが必要です。

広告表現が法律に違反しているかどうかの判断手法

1 はじめに

広告を規制する法律には、景品表示法や薬機法がありますが、どのような表現が法律に違反するのかが曖昧で分かりにくいという声をよく耳にします。実際、広告表現が法律に違反しているかどうかについては、明確な基準がない場合のことが多いと言えます。そのため、広告表現が法律に違反しているかどうかを見極めるためには、判断手法の基本的な考え方を理解しておく必要があります。

2 個々の表現ではなく、全体の印象で判断される

それは、広告表現が法律に違反しているかどうかは、個々の表現ではなく、全体から受ける印象で判断されるということです。

例えば、「スッキリ」という表現は、ダイエットを謳うサプリなどの広告で、痩身効果を暗示する言葉として、よく使われます。しかし、「スッキリ」という表現は、便通の改善や整腸作用を意味する言葉としても使われることがあります。また、他にも味覚を表現する言葉として使われることもあるかもしれません。

このように、個々の表現だけを切り取って考えても、その言葉が何を意味しているのかははっきりしません。その言葉の意味するところを正確に理解するためには、その他の表現を含めた広告全体の中で、その言葉の意味するところを判断する必要があるのです。例えば、体重計に乗ったスリム体型の人の写真があれば、「スッキリ」は痩身効果を意味している場合が多いでしょうし、両手でお腹を押さえた人の写真があれば、便通の改善や整腸効果を意味している場合が多いでしょう。

3 個々の表現で全体の印象が変わるわけではない

逆に考えれば、必ずしも、個々の表現で全体の印象を変えられるわけではないということでもあります。

例えば、健康食品で「これを飲むだけで痩せる」といった広告が、頻繁に優良誤認表示で措置命令を受けています。痩せるためには運動をするか食事制限をする必要があるからです。そのため、「運動と食事制限を組み合わせた結果です」といった記載をすることで、措置命令を免れようとする広告も見られます。しかし、単に「運動」や「食事制限」といった表現を盛り込んでいても、多くの場合、広告全体を見れば、結局は「これを飲むだけで痩せる」という印象を与えてしまっています。実際に、ダイエットサプリの広告で、「運動」や「食事制限」といった表現が含まれていても、措置命令を受けたケースがあります。

4 最後に

このように、広告表現の適法性を判断するためには、広告全体から受ける印象を、最初に考えなければいけません。その判断をするためには、過去に措置命令などの行政処分を受けた事例を収集し、検討することで、判断のコツをつかんでいく必要があります。

薬機法改正で導入される課徴金と措置命令

1 はじめに

薬機法が改正され、課徴金と措置命令の制度が新たに導入されることになりました。
既に、景品表示法では、平成26年11月の法改正により、既に課徴金と措置命令の制度が導入され、運用されています。
そこで、景品表示法の制度との比較も交えながら、薬機法に導入される課徴金、措置命令制度の概要について見ていくことにします。

2 制度導入の契機

改正の契機となったのは、ディオバン事件と呼ばれる臨床研究論文の不正が行われた事件です。
製薬会社のノバルティス社が、1999年に発売したディオバンという高血圧治療薬についての臨床試験が、ノバルティス社の経済的支援の下に行われました。
ところが、この臨床試験にノバルティス社の元社員が関与し、データの不正な操作を行っていたことが、2014年に発覚しました。

この臨床試験の結果は論文に投稿され、ディオバンの売上にも大きな影響を与えたと思われます。
ディオバンの売上は、年間1000億円を超えていたそうです。
しかし、そのような不正がありながらも、ノバルティス社がディオバンの販売で得た利益は何ら手付かずであり、いわば売り逃げではないかとの批判が起こりました。
そこで、そのような不当に得た利益を吐き出させる制度として、課徴金制度の導入が議論されることになったのです。

3 課徴金制度の概要

(1)対象となる行為

国会に提出された薬機法改正案によれば、課徴金の対象となる行為は、虚偽・誇大広告(薬機法第66条第1項)です。
薬機法では、他にも未承認医薬品、医療機器の広告が禁止されているのですが(薬機法第68条)、こちらは課徴金の対象とはなりませんでした。
その理由は、未承認の医薬品や医療機器を販売して得た利益は、その全額が不当なものであり、一部だけを課徴金として納めるのは不適切であるとの議論があったためのようです。

そうすると、課徴金の対象となるのは、承認を得た医薬品や医薬部外品、化粧品、医療機器に限られるかのようにも思えますが、そんなことはありません。
薬機法上、ただの食品や雑品でも、医薬品や医療機器のような効果があるとの広告をすれば、定義上は医薬品、医療機器に該当します。
したがって、その場合に、広告された効果が虚偽・誇大であれば、食品や雑品も課徴金の対象となる可能性があるのです。

上記のとおり、課徴金制度が導入されたそもそもの契機は、医薬品に関する不正でした。
しかし、実際の法改正の議論においては、食品や雑品に関する不当な広告を規制する目的にも明確に言及されています。
したがって、実際に制度が始まれば、食品や雑品が課徴金制度の適用第1号になる可能性も十分にあるでしょう。

4 課徴金の額

課徴金の金額は、課徴金対象期間における売上の4.5%です。
景品表示法では3%ですので、景品表示法より課徴金の金額は大きいことになります。

課徴金対象期間は、虚偽・誇大広告をしていた期間がベースになります。
ただし、虚偽・誇大広告をやめてから6か月を経過するまでの間は、虚偽・誇大広告の影響が残っていると考えられます。
したがって、虚偽・誇大広告をやめた後も販売を継続している場合、6か月を経過するまでは、最後に商品が売れた日までの期間も含まれることになっています。
ただし、6か月が経過するまでの間に、省令で定められた、虚偽・誇大広告の影響を排除するための措置を講じた場合には、その措置を講じた日までしかカウントされません。
また、課徴金対象期間の上限は3年とされています。この点は景品表示法と同じです。

また、課徴金の最低額は225万円とされています。
景品表示法では、課徴金の最低額が150万円とされていますが、いずれも、課徴金対象期間の売上で見れば、5000万円未満の場合には課徴金が課されないこととなっており、この点も同じです。

5 例外的に課徴金が課されない場合

改正法では、虚偽・誇大広告に対して、業務改善命令、新たに設けられた措置命令、製造販売等の許可の取消しや業務停止命令をする場合には、厚生労働大臣の裁量で、課徴金を課さないことができるとされました。
これは、景品表示法にはない仕組みです。
一方で、景品表示法では、優良誤認表示や有利誤認表示をしたとしても、そのことを知らず、かつ、知らないことに相当の注意を怠った者でないと認められる場合には、課徴金が課されない仕組みがあり、こちらは改正薬機法にはないものです。

6 課徴金の減額

景品表示法でも改正薬機法でも、自主的に課徴金の対象となる行為を報告した場合には、課徴金の額が半分に減額されます。

一方、景品表示法では、課徴金対象期間に販売した商品について、一定の条件の下で返金措置を講じることで、その分、課徴金が減額されますが、改正薬機法にはそのような仕組みがありません。
医薬品等の虚偽・誇大広告は、国民の健康に与える影響が大きいため、返金をすれば済む話ではないという発想なのかもしれません。

また、改正薬機法で課徴金の対象となる行為が、同時に、景品表示法でも課徴金の対象となることがあり得ます。
景品表示法の課徴金は売上の3%と、改正薬機法の課徴金よりも少ないため、景品表示法で課徴金納付命令を受けるような場合には、売上の3%分が、改正薬機法の課徴金から控除されることになります。

7 措置命令

改正薬機法では、課徴金制度と同時に、措置命令制度も新たに導入されました。
景品表示法でも取り入れられている措置命令とは、違法な広告がされた場合に、それを止めさせ、再発を防止するために必要な措置を命じる行政処分のことです。

景品表示法では、措置命令が行われた場合に、原則として必ず課徴金納付命令が行われることになっており、両者がセットになっています。
一方で、改正薬機法では、措置命令と課徴金はセットになっていません。
措置命令が行われたとしても、課徴金が課されないこともありますし、措置命令がなくても課徴金を科すことができます。
また、課徴金の対象となる行為は虚偽・誇大広告だけですが、措置命令では、虚偽・誇大広告に加え、未承認医薬品・医療機器の広告も対象に含まれています。

8 最後に

このように、改正薬機法における課徴金と措置命令の制度は、景品表示法と共通する部分もありつつ、法律の目的が異なることから、制度設計も自然と異なるものになっています。
薬機法改正案は、2019年の第198通常国会では成立せず、継続審議となりました。
今年の秋の臨時国会以降での成立が見込まれています。
改正法が成立して交付されると、そこから2年以内に施行され、実際に運用が始まることになります。今から改正に備え、準備を怠らないようにしましょう。

病院・クリニックのホームページでの情報提供が変わります

報道によれば、美容整形、脱毛、脂肪吸引等の美容医療については、治療を受けた患者からの苦情や相談が急増しており、これを受けて厚生労働省は、虚偽や誇大な表示を禁止する新たな規制を設ける方針を固めたようです。

(これまでの経過)

これまで、厚生労働省は、「医療広告ガイドライン」において、「インターネット上の病院等のホームページは、当該病院等の情報を得ようとの目的を有する者が、検索サイトで検索した上で閲覧するものであり、従来より情報提供や広報として扱ってきており、引き続き、原則として広告とはみなさないこととする。」としていました。

しかし、病院・クリニック等のホームページにおける不適切な情報提供が継続していたため、平成27年7月、消費者委員会は、「美容医療サービスにかかるホームページ及び事前説明・同意に関する建議」を提出し、医療機関のホームページも「広告」として扱うよう要求しました。

これを受け、厚生労働省は、医療情報の提供内容等のあり方に関する検討会を開催し、この秋をめどにその方針を決する予定です。そして、8月に開催された検討会では、医療機関のホームページは、引き続き広告とはしないものの、虚偽・誇大な表示については、より強い規制を設ける方針を固めたようです。

厚生労働省が発表した資料によれば、ホームページに対する規制については、「美容医療分野を中心に、医療機関のウェブサイト等の閲覧を契機として受 診行動に至ることが一般化している中、医療機関のホームページにおける情 報提供の適正化を図る必要がある。 医療機関のウェブサイト等を、広告できる事項が限定されている医療法上 の広告とすると医療情報の提供促進に支障が生じるとの懸念が多く示されて いること等を踏まえ、引き続き医療法上の広告としては扱わないが、情報発 信の観点からも認められないような虚偽・誇大な表示等が規制されないこと は適切ではないことから、こうした不適切な表示を禁止する規制を新たに設けることとしてはどうか。」という方向性であるようです。

医療機関のホームページを巡る規制については、厳格化の方向にあるようですから、関係者の皆様は、現在のホームページに問題がないか、いまのうちからチェックしておいたほうがいいかもしれません。

(参考)

(虚偽の広告と罰則)

医療法第6条の5第3項は、内容が虚偽にわたる広告をしてはならないと定められています。医療広告ガイドラインによれば「絶対安全な手術です!」などと記載することは、虚偽広告に当たるとされています。医学上、絶対安全な手術などあり得ないからというのがその理由です。虚偽広告をした者に対しては、6月以下の懲役又は30万円以下の処罰が設けられています(医療法第73条1項1号)。

(誇大広告と罰則)

また、医療法施行規則第1条の9第2号には、「誇大な広告を行ってはならない」、「客観的事実であることを証明することができない内容の広告をおこなってはならない。」と規定されており、これに反すると、都道府県知事等により報告命令が出されたり、病院等への立入り検査等が行われ、その後、広告中止命令、是正命令が出されることになります。この命令に従わないと、やはり6月以下の懲役又は30万円以下の罰金が科せられることになります。

(誇大広告の例)

医療広告ガイドラインによれば、「誇大な広告」とは、必ずしも虚偽ではないが、施設の規模、人員配置、提供する医療の内容等について、事実を不当に誇張して表現していたり、人を誤認させる広告を意味するものであるとされています。具体的には、美容外科の自由診療の際の費用として、「顔面の〇〇術 1か所〇〇円」と記載されているが、この料金は、5か所をまとめて施術した場合の料金であって、1か所だけの施術だと倍以上の価格になる場合は、誇大広告となります。

(客観的事実であることを証明することができない内容の広告の例)

医療広告ガイドラインによれば、「客観的事実であることを証明することができない内容の広告」とは、患者や医療従事者の主観によるものや客観的な事実であることを証明できない事項についての広告」を意味するものであるとされています。具体的には、患者の主観を記載した体験談の紹介は、これにあたりますから、広告ができないこととなります。また、「比較的安全な手術です。」との記載も何と比較して安全であるか不明であり、客観的な事実と証明できないため、広告ができないこととなります。

(最後に)

この記事を執筆するに当たり、様々な病院、クリニックのホームページを拝見しましたが、将来、広告表現として問題となり得る記載が残念ながら非常に多い状況です。広告については、医療法のみならず、景品表示法についても問題となり、場合によっては、不当表示に関係する売上げの3パーセントという高額の課徴金を課される場合もあります。これを機に、ホームページのコンプライアンスチェックを検討されてはいかがでしょうか。

治療前、治療後の写真を宣伝に使っていいですか?

治療前、治療後の写真を宣伝に使っていいかという質問を受けることがよくあります。
答えはYesでもありNoでもあります。

例えば、料金を払って検索サイトで上位に表示されるようにしたホームページに治療前、治療後の写真を映し出すことは問題があります。しかし、来院した患者さん向けに、待合室のモニターに全く同じ条件で撮影した治療前、治療後の写真を映し出すことは問題がない場合が多いでしょう。

なにが違うのでしょうか?

医療広告については、厚生労働省が「医療広告ガイドライン」、「医療広告ガイドラインに関するQ&A」などで何が許され、何が許されないかをある程度明確にしています。そして、このガイドラインによれば、治療前、治療後の写真は、広告が禁じられている「治療の効果に関する表現」に当たり許されないとされています。治療前、治療後の写真の広告を許してしまうと、本当は治療の効果が一定ではないのに、広告を見た者が必ず写真のような効果が得られると誤解してしまう可能性があるからです。

そうすると、来院した患者さん向けに、待合室のモニターに治療前、治療後の写真を映し出すことも許されないことになりそうですが、実は、必ずしもそうではありません。先ほどの「医療広告ガイドライン」、「医療広告ガイドラインに関するQ&A」は、どちらも「広告」に関するものです。

そして、「広告」とは、「医療広告ガイドライン」によれば、①患者の受診等を誘引する意図があること(誘因性) ②医業若しくは歯科医業を提供する者の氏名若しくは名称又は病院若しくは診療 所の名称が特定可能であること(特定性) ③一般人が認知できる状態にあること(認知性)のすべての要件を満たすものであるとされています。来院した患者さん向けに、待合室のモニターに治療前、治療後の写真を映し出すことは、これらの「広告」の要件を満たすでしょうか?

このような来院者向けの表示は、院内掲示や院内で配布するパンフレットなどと同じように、情報の受け手が、現に病院を受診している患者さんらに限られますから、③の一般人が認知できる状態にあることの要件が欠けます。ですから、待合室のモニターに治療前、治療後の写真を映し出すことは、「広告」に当たらず、単なる「情報提供」や「広報」に当たるとされ、許される可能性があるのです。

それでは、最後にこの記事を読まれている方に質問です。

歩行者が多い駅近くのクリニックの大型モニターに、治療前、治療後の写真を写していましたが、そのモニターは病院の外に向けられており、通行人もそのモニターを見ることができる状態でした。法律上、問題はないでしょうか?

もうおわかりかと思いますが、クリニック内のモニターとはいえ、それがクリニックの外の一般人に向けられていれば、広告に当たりますから、許されないということになりそうです。

このように、治療前・治療後の写真を宣伝に使ってもいいですか?という質問には、すぐにいいです、だめですと答えられない理由があるのです。

課徴金制度開始後、初の措置命令

景品表示の課徴金制度の運用が4月1日に始まりましたが、運用開始後初めての措置命令が6月28日に出されました。

消費者庁によれば、「1回の施術から効果実感、1回の施術で顔の横幅を数センチ縮める独自の小顔矯正法です。」「1回の施術後、2~3回で固定するのが特徴です。」などとして、小顔になる効果を宣伝していたサービスに対し、措置命令が出されました。

違反の時期にもよりますが、4月1日以降も不当表示を行っていたということであれば、課徴金の対象となる可能性があります。

新しく設けられた課徴金については、未だ1件も納付命令が出されておらず、その運用が注目されているところですが、本件についても、その経過を注意深く見ていく必要がありそうです。

この記事をごらんになっている方で課徴金に不安を持っていらっしゃるかたは、是非、課徴金に詳しい弁護士が所属している当事務所にお問い合わせください。

広告を間違えると売上げの3%分の課徴金?!その1

いったい何をしたらいけないの? その1~優良誤認~

してはいけない表示とは、いったいどのようなものなのでしょう。

  • 「アミノ酸一般食酢の120倍の黒酢でダイエットサポート!」
  • 「『黒酢』に含まれたアミノ酸のメラメラパワー!」
  • 「不足していたのはメラメラ力だったんですね・・・」
  • 「人より効果が出にくい私。最初からアミノ酸を使ってたら・・・」
  • 「タンスの奥のジーンズが出せた!」
  • 「運動量は変わらないのに遂に出産前のスタイルに!」

これらの表示が問題視され、2016年3月30日、九州の食品会社に措置命令が行われました。消費者庁は、これらの表示はあたかも対象商品を摂取するだけで特段の食事制限をすることなく容易に著しい痩身効果が得られるかのように示すものであり、景品表示法が禁止する「優良誤認」に当たると判断しました。

 

問題とされる表示が行われたのは、課徴金制度ができる前ですから、このケースでは課徴金の支払いは問題となりませんが、今後、同じようなケースが生じた場合、課徴金の支払いが必要になる可能性があります。

ここで問題とされた優良誤認表示とは、商品の品質が実際よりもとてもいいものであるとお客様に勘違いされる表示をいいます。このような表示をホームページ、商品のパッケージ、広告等に表示をすると、今後、課徴金を課せられるリスクがあるわけです。

しかし、この表示ですが、どれを見ても「商品を摂取するだけで・・・痩身効果が得られる。」とは書いていないですよね。

「タンスの奥のジーンズが出せた!」は、奥にしまいこまれていたジーンズを取り出せたというだけで、それがはけるかどうかは直接的には書いてありませんし、「運動量は変わらないのに遂に出産前のスタイルに!」も、もしかしたら出産前のほうが体重が重かったのかもしれません。しかし、これらの表示を全体として見ると、暗にやせるかのような印象をお客様に与えてしまうことは否めません。

ただ、法的にまったく問題ないような記載では、お客様へのアピールが難しいのも事実です。当法律事務所では、ビジネスの観点から、広告の表現方法を提案するコンサルタントとも提携しておりますし、企業やビジネスの現場を経験している弁護士も所属しており、他の法律事務所とはすこし違った観点からのご助言ができるものと思います。

 

郵便法違反していませんか?知らないと怖いコンプライアンスの1つ

郵便法とは?

そもそも郵便法という法律があるのはご存知でしょうか?契約書は◯◯、請求書は◯◯と、郵送形式だけ覚えていてそもそもそれが郵便法という法律があるということは知らないという方も多いのではないでしょうか。

郵便法 第4条

2 会社(契約により会社から郵便の業務の一部の委託を受けた者を含む。)以外の者は、何人も、他人の信書(特定の受取人に対し、差出人の意思を表示し、又は事実を通知する文書をいう。以下同じ。)の送達を業としてはならない。

3 運送営業者、その代表者又はその代理人その他の従業者は、その運送方法により他人のために信書の送達をしてはならない。ただし、貨物に添付する無封の添え状又は送り状は、この限りでない。

4 何人も、第2項の規定に違反して信書の送達を業とする者に信書の送達を委託し、又は前項に掲げる者に信書(同項ただし書に掲げるものを除く。)の送達を委託してはならない、

つまり、信書(「信書」とは、郵便法第4条第2項において「特定の受取人に対し、差出人の意思を表示し、又は事実を通知する文書」である)は日本郵便株式会社及び信書便事業者のみで配送をしなければならないということです。

怖い!郵便法の違反事例

過去におきた郵便法違反の事例を紹介します。

事例1:県職員が「信書」をヤマト運輸のメール便サービスを利用して送付

2009年6月、埼玉県の30代の女性職員が郵便法で郵便事業会社以外の扱いが原則禁じられた「信書」に該当する文書を、宅配便最大手のヤマト運輸(東京都中央区)のメール便サービスを利用して送っていたことが14日、県関係者などへの取材で分かった。
文書を受け取った男性が告発し、県警が郵便法違反容疑で捜査。県と女性職員、法人としてのヤマト運輸と男性従業員2人をそれぞれ3月16日付で書類送検した。

事例2:グッドウィルが「信書」をクロネコメール便で送付

グッドウィルがクロネコメール便を使用して、労働者約80万人に昨年7月以降、「日雇い派遣労働者から天引きしていたデータ装備費の返還を伝える文書」を送付し発覚。グッドウィルは総務省に対して信書であったことを認め再発防止案を提出し、行政処分を免れた。

事例3:給与支払い明細を民間運送会社に委託し、派遣社員に告発される

給与支払明細を民間運送会社に委託していた会社が、不況になって派遣切りが始まってから、その派遣らにより郵便法違反を告発され全国紙の新聞でコンプライアンス違反を問われる事態になった。その後その上場企業は倒産。

信書とは?

それでは、「信書」とはどのようなものでしょうか。
日本郵便のWebサイトで確認することができます。

【参考Webサイト:日本郵便Webサイト「信書に該当するものを教えてください」

信書に該当する書面を送る方法

日本郵便(郵便局)で定形郵便、定形外郵便、レターパック、EMS、または佐川急便の飛脚特定信書便をのみです。
従業員の1人でもこの法律を知らずに、便利だからといって郵送方法を間違えると会社全体に悪影響を及ぼすこともありますので社内で周知するなどして、気をつけたい法律ですね。

新規販売やキャンペーンを行う時に気をつけたい「価格」設定

二重価格表示とは?

そもそも二重価格表示だと認識される場合は、その価格に比較対照価格がある場合です。例えば、「通常価格10,000円、割引率50%OFF、販売価格5,000円」
この場合、通常価格と販売価格の2つの価格がありますね。
二重価格表示違反か否かは、その比較対照価格のルールが守れているか否かということにです。

尚、比較対照価格には(1)過去の販売価格、(2)他店の販売価格、(3)メーカー希望小売価格の3種類ありますので1つ1つ紹介します。

(1)過去の販売価格

「通常価格」や「セール前価格」などと表示されているものは、次の場合に表示可能となります。

    • セール開始時点から過去8週間のうち、4週間以上の販売実績があれば、過去の販売価格として表示することができます。
    • 販売開始から8週間未満のときは、販売期間の過半かつ2週間以上の販売実績があれば、過去の販売価格として表示することができます。

上記(1)や(2)を満たす場合であっても、実際に販売した最後の日から2週間以上経過している場合には、過去の販売価格として表示することは原則としてできません。
販売期間が2週間未満のときは、過去の販売価格として表示することは原則としてできません。

(2)他店の販売価格

これは、「市価」や「他店販売価格」などとして表示される価格です。以下の場合に表示することができます。

      • 市価を比較対照価格に用いるときは、地域内の事業者の相当数が実際に販売している価格を用いる必要があります。
      • 特定の競争事業者の販売価格と比較する場合は、その事業者の実際の販売価格及び事業者の名称を明示する必要があります。

(3)メーカー希望小売価格

「メーカー小売価格」などと表示されているものは、次の場合表示可能です。

      • メーカーや輸入元など製造事業者等が設定する希望小売価格が販売時点で有効に設定され公表されているものであれば、比較対照価格として用いることができます。

但し、この価格のとおりに販売するかどうかは各小売店の自由です。メーカーが希望小売価格で販売することを小売店に守らせることは、書籍など一部の商品を除いて独占禁止法で禁止されています。
因にオープン価格という表示を見かけた方も多いと思います。
オープン価格とは、メーカーが希望小売価格を示すことをやめ、販売価格の決定を完全に小売店に委ねたことを意味しています。厳密にはオープン価格には、発売当初はメーカー希望小売価格があったが途中でそれをとりやめる場合と発売当初から希望小売価格を設定しないケースがありますので注意が必要です。

売りたいからといって、安易に価格をつけてごまかしたり、存在しない価格をあるようにみせかけて消費者に誤認を与えないようにしましょう。という簡単なルールですが、意外に知らない方も多いようです。
二重価格表示違反は罰則が比較的重い法律でもありますから、今一度自社の価格やキャンペーンを見直してもいいのではないでしょうか。