大幸薬品「クレベリン」への措置命令に対する弁護士解説

消費者庁は4月15日、二酸化塩素ガスで「空間除菌」ができるとしていた「クレベリン」シリーズの置き型タイプの2商品を展開する「大幸薬品株式会社」(大阪府吹田市)に対し、空間浮遊のウイルス・除菌には効果を裏付ける根拠がなく、景品表示法違反(優良誤認)にあたるとして、措置命令を出しました。

 

 

同社の「クレベリン」シリーズについては、1月20日にも別商品「スティック ペンタイプ」「スプレー」など、4商品に対する措置命令が出されていましたが、同社は不服として「仮の差し止め申し立て」をしていました。しかしながら、4月13日、同社はこの措置命令の差し止めを求めた仮処分申し立てが東京高裁に退けられたと発表しました。

 

 

同社HPでは、今回の措置命令について「今後、措置命令の内容を精査した上で、適切な対応を検討いたします。当社商品をご愛顧いただいているお客様、お取引先様、および株主様をはじめとする関係者の皆様には、多大なご心配をおかけすることとなり、深くお詫び申し上げます」としています。

 

 

消費者庁の発表によると、今回の一連の流れは次のようになります。

根拠となる状況と広告表現が異なったことが問題

今回の措置命令において、裏付けとなる合理的な根拠を示すものと認められなかったという点について、当事務所で広告審査を担当している柳澤里衣弁護士は「今回消費者庁の発表を読む限り」と前置きした上で、「CMや広告で示されている環境、部屋の状況と、実験をしてエビデンスとして提出した環境は明らかに違う。同じ条件下でのエビデンスを取る必要があった」と解説。

「実際、広告や表示では、リビングや寝室、キッチンやトイレなどでの使用が表現されていますが、これらは実験環境と全く同じではありません」

 

 

 

 

柳澤弁護士はまた、「コロナ禍になってから、除菌や抗ウイルスなど消費者の関心やニーズにうったえかけるような商品が非常に多く出回っています。企業にとっては人々の健康のために開発・販売している商品でしょうし、消費者もそれを望んでいることではあっても、広告でうたっていいこととダメなことがあります。

今回の一件は、これからも同じような商品に対する措置が出るかもしれないという点と、こうしてニュースになることで、消費者側の意識も高めて 【広告表現には気を付けましょう】という注意喚起にもつながるのではないでしょうか」としています。

 

こんなエビデンスで、こんな広告表現をうたいたい、そのように思われた場合は、ぜひ専門家である当事務所にご相談ください。

2021年の当事務所へのご相談傾向について~薬機法相談が半数を占める

ご相談の約半数は薬機法関連、新規健康分野参入に関する問い合わせも増加傾向

2019年末に世界で初めて新型コロナウイルスが確認されてから、2年以上が経過しました。

度重なる緊急事態宣言の発出による外出自粛、マスク生活、在宅ワーク・・・ニューノーマル時代の様々な変貌を遂げた2年間。各企業様とも、新規事業を立ち上げたり、EC分野に新規参入したりと、努力を続けてこられています。



2021年の当事務所に寄せられた相談の内容を大まかに分別すると下記のようになります。
最も多くご相談を寄せられているのが「薬機法」に関する相談です。全相談のうち、半分程度を占めました。



そのほか、新規事業立ち上げ等、特商法関連(定期購入・サブスクなど)、未承認医療機器についてなどが続きます。
前年まで薬機法・景表法での広告表現に関するお問い合わせが大半を占めていましたが、2021年は、新たにECで健康分野の商品・サービスを始めようという事業立ち上げ、新規分野のスタートアップに関する相談件数も増えました。コロナ禍をビジネスチャンスにとらえようとする動きといえるでしょう。




当事務所のBAL弁護士(美容広告を専門に審査する弁護士)は、「従来別な商品を売っていた企業が新しい商材に着手する場合、パッケージを一度作ってしまうと、その後で変更したり削除・修正をしたりするのには手間がかかります。ですから、事業を走り出す前に、どのような準備が必要で、どのような関連法規があるかなどをご相談に見える方が多かったです」と分析しています。



薬機法・特商法・景表法などの関連法規に関するご相談、また、新規分野へのスタートアップ支援など、様々なご相談に対応しておりますので、是非一度、お気軽にお問合せ下さい。


初回のご相談は無料です。

 

 

 

メルセデス・ベンツ日本株式会社に対し、景表法違反の措置命令

消費者庁は12月10日、メルセデス・ベンツ日本(東京都品川区)に対し、車のカタログなどで、本来標準装備ではない機能が装備されているかのように記載したとして、景品表示法違反(優良誤認)で再発防止などを求める措置命令を出しました。

 

対象となったのは、同社のスポーツ用多目的車(SUV)の「GLA」と「GLB」の計4モデルです。本来標準装備ではない自動運転の機能や、オプションで別途費用がかかる「サングラスホルダー」などが、標準装備であるかのように記載されていました。
消費者庁の発表によれば、上記の表示は昨年6月から今年8月までの間、カタログなどに標準装備だと誤認させる内容で表示されていました。また、報道によると、対象車種は11月末現在で計約1万6000台を販売。同社は不注意による表記ミスであり、再発防止に努めるとのコメントが発表されています。
今回の事案について、当事務所でさまざまな広告審査を担当している中山明智弁護士の見解をまとめてみました。ご参考にしていただければ幸いです。

 

対象となった車のカタログに対する措置命令

媒体的にみると、カタログに関する措置命令は、やや珍しいです。というのも、近年、対象媒体の主流はウェブサイトです。
また、自動車分野の措置命令というのはあまりないように思いますので、商材的としては、かなり珍しい事例だったといえるでしょう。当事務所でも、過去のすべての措置命令を網羅しきれてはいませんが、近年の傾向として体感的に非常に稀な例といえます。

 

今後のカタログの記載について

今回は、メルセデス・ベンツという非常に有名かつ大企業のカタログが対象となりましたが、今後は同じようなカタログ記載についてわかりづらい企業は自らの記載について見直してみる必要があるでしょう。特に打消し表示について、消費者庁の目は厳しいという点を再確認する必要があります。

 

有利誤認か優良誤認か

本件は、標準価格内なのか、追加料金がかかるのかという意味では、有利誤認表示(契約条件に関する表示への規制)ともとらえうる事案でしたが、優良誤認表示(商品の品質に関する表示への規制)で措置命令が出ました(不実証広告規制の適用の有無という点で、行政からすると優良誤認表示で規制した方が有利です)。
有利誤認表示とも優良誤認表示ともいいうる表示があるということを、専門家である我々自身も考えさせられました。

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企業が、自社のサービス・商品の訴求の為に、様々な広告、Webでの商品説明に力を入れている昨今。規制も年々細かく、厳しくなってきています。企業の皆様においては、消費者庁が出している各種「景表法ガイドライン」を参照しながら、自社の広告が景表法に違反しないかどうかを入念にチェックする必要があるでしょう。
当事務所では、広告についての専門チームを設置しています。何かご不明な点がございましたら、お気軽にお問合せ下さい。

化粧品広告における用語の使用~「還元」は大丈夫?

美容の商品・サービスにおいてよく耳にする「肌の酸化」。この「酸化」とともに、最近登場するようになった「還元」という用語、皆さんも聞いたことがあるのではないでしょうか?

 美容業界における『酸化と還元』

酸化と還元-。化学が得意だった、好きだったという方ならピンと来るかもしれません。簡単に言えば、酸化とは錆びること(数年前から肌サビ、というワードも流行っているよう)です。肌の酸化は肌の老化を加速させると言われますが、本来、肌には酸化から肌を守る抗酸化作用などの機能があります。この抗酸化作用を高め、「酸化をなかったことにする」を謳っているのが今回テーマにする“還元”という表現です。

辞書的には「還元」には、二つの意味があります。ひとつは「根源的なものに(再び)もどす、または戻ること。」、もうひとつは、「酸化に対し、酸化物から酸素を取り去ること。更に広く、物質が水素と化合すること、または電子を得ること。」です。

化粧品業界では、肌の酸化こそが老化の原因であり、酸化を防ぐ=抗酸化、つまり上記ひとつめの意味で、「還元」という用語はアンチエイジングの象徴のように考えられているのです。

 薬機法上の広告表現における抗酸化とは

ただし、薬機法上広告表現が認められている化粧品の効能効果に、「肌の抗酸化」というものは認められていません(ある成分の配合目的を「製品の抗酸化剤」と記載することは可能ですが、その配合目的を「抗酸化」と記載することは認められていません。)。

なので、抗酸化を意味する「還元」という用語も使用してはいけないのではないか、という疑問が生じるのです。

この点、行政側としても、化粧品の広告に「還元」という用語を用いることを一律に禁止しているわけではありません。

あくまでその「還元」という用語がどのような意味合いで用いられているかを実質的に判断する、というのが行政の見解です。

 実質的に化粧品の効能効果の範囲を逸脱するかどうか

まとめますと、「還元」という用語を用いていても、例えば、実質的には「皮膚にうるおいを与える」意味で使われていると解釈可能であるような場合には、その表現は化粧品の効能効果の範囲内といえるので、特に問題視されることはありません。

他方で、「還元」という用語の意味合いが、その他の表現等も合わせると、肌質自体の抗酸化やアンチエイジングを意味していることが明らかである場合には、当該表現は化粧品の効能効果の範囲を逸脱するものとして許されない、ということになります。

以上のとおりですので、一律に「還元」という用語を用いてはならないわけではありませんが、その実質的に意味するところが、化粧品の効能効果の範囲を逸脱する場合には、「還元」という用語を用いてはいけない、ということになります。

 

携帯型空間除菌用品に対する行政指導から合理的根拠を考える

1 はじめに

消費者庁は、2020年5月15日、携帯型の空間除菌用品の販売業者5社に対して、優良誤認表示の恐れがあるとして行政指導を行ったことを発表し、一般消費者への注意喚起を行いました。

これらの商品は、首から下げるなど、身につけて使用するもので、二酸化炭素塩素を利用した空間除菌を標ぼうするものでした。なぜ、これらの商品の広告は、優良誤認表示の恐れがあると判断されてしまったのでしょうか。

2 表示には合理的根拠が必要

景品表示法においては、消費者庁などから優良誤認表示ではないかとの指摘を受けた場合、事業者の側で、その表示の合理的な根拠を提出しなければならないとされています。
もし、事業者が合理的な根拠を提出できなければ、その表示は優良誤認表示だとみなされてしまいます。これを不実証広告規制といいます。

本来、行政処分をするには、行政の側で法律違反があったことを証明しなければならないところ、その証明を事業者側でしなければならないとしているわけですので、事業者にとっては非常に厳しい仕組みとなっています。
そのため、事業者にとっては、何が合理的根拠になるのかを知っておくことは、極めて重要です。

3 実際に使用する状況での根拠が必要

消費者庁の発表によれば、今回行政指導を受けた携帯用の空間除菌用品は、狭い密閉空間での実験結果を根拠資料としていたようです。
しかし、携帯用の空間除菌用品は、人が身につけて使うものですから、狭い密閉空間で使用されるものではありません。
自宅にいるときに使用するとしても、普通は6畳程度の広さの部屋で使いますし、すべてのドアや窓が密閉されている状況の方が例外的です。それに、除菌効果を得たいのは、自宅ではなく外出時であることがほとんどです。
そのような場合には、密閉空間とは言えない状況の方が格段に多いでしょう。

密閉空間でない場合、周囲の空気はどんどん入れ替わっていきます。
空気中のウイルスもそれに伴って入れ替わっていくわけですので、密閉空間と同じようにはウイルスの除菌効果を得ることはできません。
消費者庁の発表でも、風通しのある場所で使用する場合には、表示どおりの効果が得られない可能性があると指摘されています。

このように、合理的な根拠と言えるためには、実際に使用する状況における根拠資料である必要があります。

4 最後に

事業者が合理的な根拠だと考えている資料でも、法的に見ると、合理的とは言えないものであることが多々あります。
特に、実験結果を根拠としている場合には、「実験までしているのだから合理的な根拠になるに違いない」と思ってしまいがちです。
この機会に、改めて根拠資料について見直しをしてみてはいかがでしょうか。

措置命令取り消しのなぜ

1 はじめに

消費者庁は、2020年5月15日、2019年3月29日に行った措置命令を取り消したことを発表しました。
消費者庁が一度出した措置命令が取り消すのは初めてのことだと思われます。
消費者庁の発表では、措置命令を取り消した理由として、「措置命令の処分原因事実として認定した表示期間を改めて検討した結果」としか触れられていません。

なぜ措置命令の取消しという事態になったのでしょうか。

2 再度の措置命令もあり得る?

消費者庁の発表からも分かるように、今回の取消しの理由が、「そもそも優良誤認表示ではなかった」というものではないのは明らかです。

報じられているところによると、優良誤認表示として認定した広告の表示期間に誤りがあったため、取り消さざるを得なかったということのようです。
そのため、改めて広告の正確な表示期間を確定し、表示期間を変更した上で、再度の措置命令を出す可能性も十分にあると考えられます。

というのも、措置命令のような行政処分は、基本的にどこまでも過去に遡って処分を出すことができます。極端な話をすれば、今回の表示が実は10年前のものでした、という場合であっても、それが優良誤認表示である以上、措置命令を出すことは可能なのです。

3 課徴金額には影響する可能性

一方で、優良誤認表示に対する課徴金納付命令は、期間の制限があります。景品表示法において、課徴金の対象とされる期間は最大で3年間とされており、また、不当表示をやめてから5年が経過すると、課徴金納付命令を課すことができないとされています。

そのため、理屈としては、今回表示期間が見直されることによって、課徴金額に影響してくる可能性もあります。

4 最後に

措置命令が取り消されると、その措置命令は最初からなかったことになります。とはいえ、一度出された措置命令の事実上の影響はどうしても残ります。今回は表示期間の誤りということでしたが、実は不当表示ではなかったというような場合には、措置命令が取り消されたとしても、被った事実上の不利益をどうするのかという問題が残ることになります。

感染症対策を暗示する広告の危険性を明らかにした措置命令

1 はじめに

消費者庁は、2020年5月19日、「ハンドクリーンジェル(300ml)」と称する商品について、優良誤認表示があったとして措置命令を行いました。
優良誤認表示とされた理由は、商品に「アルコール71%配合」と記載していたのに、実際はそれを大幅に下回る配合割合だったというものです。

措置命令では明確に触れられてはいませんが、優良誤認表示の表示期間は2020年4月4日から同月14日までとされています。
そのことから考えて、新型コロナウイルス感染症の予防効果を暗示した商品について、初めて措置命令が出されたケースと考えてよいでしょう。

2 消費者庁による注意喚起と行政指導

新型コロナの流行が始まってから、その予防効果を謳う商品が多く出回るようになりました。その種類は、健康食品、マイナスイオン発生器、空間除菌商品、アロマオイル、光触媒スプレー等、様々です。
その中には、とても新型コロナの予防効果があるとは思われないものも含まれています。

新型コロナは世界中で流行し、多大な被害を出しているだけに、その予防効果を謳うことの訴求力は極めて大きなものがあります。そのため、消費者庁としても、そのような広告表示に対しては、素早く注意喚起や行政指導を行っています。

具体的には、2020年3月10日、同27日、同年5月1日と、相次いで一般消費者への注意喚起をリリースするとともに、空間除菌用品の販売事業者に対する行政指導を行い、これを公表しました。

今回の措置命令も、そのような流れの中に位置付けられるものです。

3 措置命令の内容

今回措置命令を受けた商品も、「ハンドクリーン」という商品名、アルコールを配合していることから、手指の消毒による新型コロナ予防効果の訴求を狙った商品であることは間違いないでしょう。

報じられているところによると、71%のアルコールを配合していると表示しながら、実際には5%~30%しかアルコールが配合されていなかったようです。
表示期間が上記のとおり約10日間と短期間であることからしても、消費者庁が素早く動いて措置命令まで持って行ったことがうかがえます。

4 薬機法の観点

ちなみに、問題となった商品は、「手指用洗浄ジェル」と表示しており、「消毒」という表示をしていません。そもそも手指の消毒は、医薬品、医薬部外品でしか認められない効果です。
ところが、今回の商品は医薬品や医薬部外品ではなく、化粧品として販売されていました。そのため、「消毒」という表示をすることができず、「洗浄」という表示をしつつ、高濃度のアルコールを配合していることを示すことで、手指の消毒効果を暗示しようとしたものと思われます。

このように、雑品や化粧品であるにも関わらず、手指の消毒効果を暗示しようとする商品は、今後も増えてくると考えられます。

5 最後に

今回はアルコールの配合量に着目した措置命令でしたが、商品の種類や広告の内容によっては、直接的に新型コロナ等の感染症予防効果を表示していると認定して、優良誤認表示と判断されるケースもあり得ます。

今後も引き続き、新型コロナ関連の訴求に対しては厳しい目が向けられていくでしょう。

 

商品ではなく含有成分の広告でも措置命令を受ける?

1 はじめに

景品表示法では、「商品の」品質などについて、著しく優良であると示す表示を、優良誤認表示として禁止しています。そのため、これまで優良誤認表示を理由として措置命令が出されるのは、すべて具体的な商品についての広告でした。しかし、2019年11月1日、消費者庁は、これまでと異なり、健康食品について、具体的な商品ではなく、含有成分に関する広告に対し、措置命令を行いました。

 2 背景事情

このように、具体的な商品名を記載せず、含有成分についてだけ記載する表示は、非常によく見られます。その理由は、景品表示法ではなく薬機法にあります。

薬機法においては、健康食品について医薬品的効能効果を広告することは禁止されています。しかし、薬機法の適用対象となる広告は、①誘引性、②特定性、③認知性の3つの要件を満たすものに限られます。このうち、②特定性とは、当該広告において商品名が明らかにされていることを意味します。そのため、健康食品の商品名を明らかにせずに、含有成分について医薬品的効能効果を表示しても、薬機法違反とはならないのです。

3 含有成分の表示が薬機法違反となる場合

しかし、実際に事業者側が意図しているのは、含有成分の医薬品的効能効果と、具体的な健康食品の商品とを、消費者側で結び付けてもらうことにある場合がほとんどです。そのため、事業者としては、両者を結び付けるべく様々な工夫をするのですが、そのような工夫が薬機法に違反することがあります。

例えば、最近では、含有成分の医薬品的効能効果を記載しているウェブサイトに、当該成分を含有している健康食品の購入サイトへのリンクを張り、遷移することができるようにしていた事案において、両者が実質的には一体の広告であると判断され、薬機法違反で摘発されるということがありました。

 4 含有成分の表示が景品表示法違反となる場合

実は、前述した措置命令も、薬機法の場合と同じように考えることができます。

前述の措置命令は、単に含有成分の表示だけを取り上げて優良誤認表示と判断したわけではありません。この事案では、まず、ウェブサイトにおいて「ブロリコ」という成分について、免疫力の向上や、病気の治療・予防効果があるという表示をしていました。消費者は、当該ウェブサイトを通じて「ブロリコ」に関する資料請求をすることができ、資料請求があると、「ブロリコ」についてウェブサイトと同じような表示がされた冊子やチラシに加え、具体的な商品の注文はがき付きチラシと、当該商品の無料サンプルが送付されるという仕組みになっていました。

消費者庁は、そのような全体の仕組みを捉えて、ウェブサイトや冊子、チラシについても、具体的な商品に関する広告であると判断し、優良誤認表示と認定したのです。景品表示法においては、このような判断は初めてのものですが、薬機法の観点からは、従来から行われていた規制の延長と考えることもできるでしょう。

医薬品ビジネスに関する主な契約類型とポイント その1(研究・開発)

1 はじめに

医薬品ビジネスに関する業務を時系列で概観すると、大きく以下の5つの業務があります。

①薬のタネを見つけその芽を育む研究業務

②さらに芽を成長させ、医薬品としての有効性と安全性に関するエビデンスを創出・収集し、当局から製造販売承認を得る開発業務

③販売する製品を製造する生産業務

④製品を販売しプロモーションを行う販売・営業業務

⑤製造販売後のエビデンス創出・医薬関係者等への情報の周知を行うメディカルアフェアーズ業務

また、以下の業務も存在します。

⑥医薬品の品質に関する信頼性保証業務

⑦その他一般の会社と同様に、購買、経理、人事といった間接部門に関わる業務

⑧開発品又は医薬品の導出入、合併、株式譲渡、事業譲渡等のM&Aといった他社との提携に関わる業務

以下、これら各業務にかかわる主な契約類型のポイントを数回に分けて概観します。
今回は、①研究業務及び②開発業務に関する契約の主なポイントのみご説明します。

2 各業務にかかわる契約類型

(1)研究業務

試料提供契約書(MTA)、研究委託契約書、共同研究契約書、共同特許出願契約書、ライセンス契約書などがあります。

研究活動によって生じることが想定される研究成果に即して、研究成果を定義した上で、その知的財産権や所有権の帰属、実施権の内容や条件、研究成果の公表に関して、明確にルールを決めておく必要があります。

特に、製薬企業とアカデミアとの共同研究においては、それぞれの目的が異なります。製薬企業の目的が、医薬品の開発・製造販売、医薬品の特許取得にあるのに対して、アカデミアの目的は、研究成果の論文や学会等による公表・研究活動の深化・発展にあります。そこで、契約内容の交渉においては、このような相手方が求めるもの・目的を理解し、譲れるところは譲歩してwin-winを指向することが契約締結のために重要となります。

(2)開発業務

医師とのコンサルティング契約書、治験契約書、CROとの業務委託契約書などがあります。
治験業務には、薬機法及びGCP省令が適用されるため、契約書作成においても、当該法令に準拠した内容にする必要があります。
具体的には、治験契約書には、GCP省令第13条第1項各号の必要的記載事項を漏れなく記載する必要があります(同項のGCP省令ガイダンスの解説もご参照ください。)。
また、製薬企業とCROとの間の業務委託契約書には、GCP省令において、当該契約書の必要的記載事項を漏れなく記載する必要があります(GCP省令第12条第1項各号、GCP省令ガイダンス第12条の解説もご参照ください。)。

さらに、治験においては、健康被害が不可避であるため、健康被害が生じた場合の措置と責任の主体・内容を定めておく必要があります。

薬機法に基づく広告規制の判断枠組みについて

薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)に基づく広告規制の判断枠組みの概要を以下ご説明します。

 

1 薬機法の主な広告規制の概要

薬機法の主な広告規制は、医薬品等の虚偽誇大広告を禁止する第66条第1項及び第2項、そして、未承認医薬品等の広告を禁止する第68条の2つです。

 

(1)虚偽誇大広告の禁止(第66条第1項及び第2項)

以下の要件をみたすと、第66条第1項に違反します。

①何人も
②医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の
③名称、製造方法、効能、効果又は性能に関して、
④明示的であると暗示的であるとを問わず、
⑤虚偽又は誇大な記事を広告し、記述し、又は流布してはならない。

なお、第66条第2項には、医師等による効能等の保証広告を禁止する規制が、以下のとおり定められています。

①医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の
②効能、効果、性能について
③医師その他の者がこれを保証したものと誤解されるおそれのある広告

当該広告は、第66条第1項に違反するものとされます。

 

(2)未承認医薬品等の広告禁止(第68条)
以下の要件をみたすと、第68条に違反します。

①何人も
②未承認医薬品、未承認医療機器又は未承認再生医療等製品について
③名称、製造方法、効能、効果又は性能に関する
④広告をしてはならない。

第66条と異なり、虚偽・誇大ではなく事実であっても直ちに違法となる点に注意が必要です。

 

2 注意すべき主なポイント

(1)主体

薬機法の広告規制の対象は「何人も」とされており、国内の製造販売事業者だけでなく、海外の製造販売事業者も規制の対象となりえます。

 

(2)医薬品等の定義

医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器及び再生医療等製品について、薬機法の第2条第1項から第9項に定義が定められています。「医薬品」を例にとってみると、「人又は動物の疾病の診断、治療又は予防に使用されることが『目的』とされている物…」(同条第1項第2号)、「人又は動物の身体の構造又は機能に影響を及ぼすことが『目的』とされている物…」(同項第3号)というように、治療や予防等の効果が客観的に備わっているかどうかではなく、あくまでそういった用途で使われることが『目的』とされている物という定義になっています。

よって、事業者としては、ある商品を健康食品として販売していても、たとえば、その商品の広告に病気の治療や予防効果があると記載していると、そういった治療や予防に使われることが『目的』とされている物ということになり、当該商品は、薬機法上「医薬品」に該当するということです。

そうすると、当該事業者としては、当該商品を健康食品として販売しており、医薬品としての承認を取得していないため、当該広告は、未承認医薬品の広告となり、直ちに第68条違反になってしまいます。そして、広告の内容として、病気の治療や予防の効果がなければ、虚偽誇大広告として第66条第1項にも違反することになります。

「医薬品」に該当するか否かを判断するにあたっては、『無承認無許可医薬品の指導取締りについて』(昭和46年6月1日薬発第476号)が参考になります。このいわゆる46通知は健康食品の広告をチェックする上で、重要な通知となっています。

 

(3)広告の定義

以下の3要件全てをみたすと、薬機法第66条及び第68条の「広告」に該当します(平成10年9月29日医薬監第148号)。

①顧客を誘引する意図が明確であること(誘引性)
②特定の商品名が明らかであること(特定性)
③一般人が認知できる状態であること(認知可能性)

逆に1つでも満たなければ「広告」にはあたりませんので66条及び68条は適用されません。

「広告」の該当性に関して、①健康食品の商品名を記載したWebページ及び②特定性を排しつつ当該商品に含まれる成分等の医薬品的効能効果を記載したWebページの一体性が問題となることがあります。①だけ見れば、「広告」には該当するものの、医薬品的効能効果が記載されていないため、第68条には違反しません。また、②だけ見れば、特定性に欠けるため「広告」に該当しません。

しかし、①と②がリンクや検索誘導等によって、実質的に一体の「広告」と見ることができる場合には、全体として第68条に違反する「広告」となるおそれがあります。

 

(4)医薬品等適正広告基準

第66条に該当するか否かの判断基準を厚生労働省が具体的に示したものが、『医薬品等適正広告基準』(平成29年9月29日薬生発0929第4号)です。また、同時に『『医薬品等適正広告基準の解説及び留意事項等について』(平成29年9月29日薬生発0929第5号)という詳細な解説が公表されており、参考になります。