(Q4)景表法で禁止されている行為:禁止される優良誤認とは何ですか?

優良誤認(法第5条第1項)には、2つのケースがあります。

実際のものよりも著しく優良であると示すケースと競争業者のものよりも著しく優良であると示すケースです。簡単に言うと、実際は違うのに、商品やサービスがとてもいいものであるとか、ライバルの会社よりもとてもいいものであるとの内容の表示をすることが優良誤認表示です。

実際のものよりも著しく優良であると示すケース

商品・サービスの品質や規格、その他の内容について、実際のものよりも著しく優良であるとお客さんにに誤解させる表示は不当表示となります。

  • 「松坂牛」と表示していたが、実は輸入牛肉
  • 「天然ダイヤ」と表示していたが実はガラス
  • 「果汁80パーセント」と表示していたが、実は無果汁
  • 「走行距離1万km」と表示していたが、実は15万km

競争業者のものよりも著しく優良であると示すケース

実際はそうではないのに、商品・サービスの品質や規格などが競争業者のものよりも著しく優良であるとお客さんに誤解させる表示は不当表示となります。

  • 「世界で当社だけが持つ技術です。」と表示していたが、実は他社も同じ技術あり
  • 「○○試験合格率No1」と表示していたが、実は競合他社と違う方法で集計
  • 「栄養成分が他社の2倍」と表示していたが、実は他社と同量の成分
  • 「他社比、解像度3倍」と表示していたが、実は根拠なし

ほかにも・・・

利用者の体験談やアンケートを用いて、食事制限することなく痩身効果が得られるような表示をしていたが、実際にはその内容はねつ造されたものであり、効果の実証データも根拠のないものであったケース
超音波によってゴキブリやネズミを駆除すると表示していたが、実際にはそのような効能は認められず、表示の根拠もなかったケースなどが優良誤認とされています。

 

治療前、治療後の写真を宣伝に使っていいですか?

治療前、治療後の写真を宣伝に使っていいかという質問を受けることがよくあります。
答えはYesでもありNoでもあります。

例えば、料金を払って検索サイトで上位に表示されるようにしたホームページに治療前、治療後の写真を映し出すことは問題があります。しかし、来院した患者さん向けに、待合室のモニターに全く同じ条件で撮影した治療前、治療後の写真を映し出すことは問題がない場合が多いでしょう。

なにが違うのでしょうか?

医療広告については、厚生労働省が「医療広告ガイドライン」、「医療広告ガイドラインに関するQ&A」などで何が許され、何が許されないかをある程度明確にしています。そして、このガイドラインによれば、治療前、治療後の写真は、広告が禁じられている「治療の効果に関する表現」に当たり許されないとされています。治療前、治療後の写真の広告を許してしまうと、本当は治療の効果が一定ではないのに、広告を見た者が必ず写真のような効果が得られると誤解してしまう可能性があるからです。

そうすると、来院した患者さん向けに、待合室のモニターに治療前、治療後の写真を映し出すことも許されないことになりそうですが、実は、必ずしもそうではありません。先ほどの「医療広告ガイドライン」、「医療広告ガイドラインに関するQ&A」は、どちらも「広告」に関するものです。

そして、「広告」とは、「医療広告ガイドライン」によれば、①患者の受診等を誘引する意図があること(誘因性) ②医業若しくは歯科医業を提供する者の氏名若しくは名称又は病院若しくは診療 所の名称が特定可能であること(特定性) ③一般人が認知できる状態にあること(認知性)のすべての要件を満たすものであるとされています。来院した患者さん向けに、待合室のモニターに治療前、治療後の写真を映し出すことは、これらの「広告」の要件を満たすでしょうか?

このような来院者向けの表示は、院内掲示や院内で配布するパンフレットなどと同じように、情報の受け手が、現に病院を受診している患者さんらに限られますから、③の一般人が認知できる状態にあることの要件が欠けます。ですから、待合室のモニターに治療前、治療後の写真を映し出すことは、「広告」に当たらず、単なる「情報提供」や「広報」に当たるとされ、許される可能性があるのです。

それでは、最後にこの記事を読まれている方に質問です。

歩行者が多い駅近くのクリニックの大型モニターに、治療前、治療後の写真を写していましたが、そのモニターは病院の外に向けられており、通行人もそのモニターを見ることができる状態でした。法律上、問題はないでしょうか?

もうおわかりかと思いますが、クリニック内のモニターとはいえ、それがクリニックの外の一般人に向けられていれば、広告に当たりますから、許されないということになりそうです。

このように、治療前・治療後の写真を宣伝に使ってもいいですか?という質問には、すぐにいいです、だめですと答えられない理由があるのです。

(Q3)景表法で禁止されている行為:「表示」とは具体的にどんなものですか?

例えば、チラシ、パンフレットや説明書、ポスターや看板、新聞や雑誌に掲載された広告、テレビCM、ウェブサイト等、さまざまな媒体に掲載された広告や表示がすべて、「表示」(法第2条第4項)に含まれます。

「表示」という言葉からは、少し想像しにくいかもしれませんが、電話や訪問でお客さんに商品を説明するときのセールストーク、実演販売のときのトークもすべて「表示」に含まれます。」

「表示」は広い概念なので、お客さんに商品やサービスを売るための手段のほぼすべてが「表示」に当たり得ます。

(Q2)景表法で禁止されている行為:何が禁止されているのですか?

景品表示法が禁止しているのは、「不当な表示」(法第5条)です。

「不当な表示」は、大きく3つに分類されます。

第一に「優良誤認表示」といわれるタイプ(法第5条第1項)
第二に「有利誤認表示」といわれるタイプ(法第5条第2項)
第三に「その他誤認されるおそれのある表示」タイプ(法第5条第3項)です。

(Q1)景表法で禁止されている行為:景表法に違反するとどうなりますか?

景表法に違反する表示をすると、過去3年間の売上げの3%分の課徴金を払わなければならなくなる可能性があります。

課徴金のほかに、消費者庁は、景表法に違反する表示について、事業者に対し、そのような表示をやめ、再発防止策を講じるよう命令(措置命令といいます。)を出すことがあります。措置命令で、例えば「今後1年間、チラシ、新聞、テレビ等による広告をしたときは、その広告物を消費者庁へ提出すること」を義務付けることもあります。

消費者庁は、措置命令を出した場合、その内容をホームページ等で公表しますから、違反した事業者の名称が広く知られることになります。

景品表示法Q&A:はじめに

はじめに

このページをご覧になっている方は、景品表示法に新しく設けられた「課徴金」に興味をお持ちなのだと思います。景表法は、商品を販売する事業者の方、サービスを提供する事業者の方に広く関係する法律なのですが、これまであまり目立たない部類の法律だったように思います。

景表法改正によって課徴金制度ができました

しかし、平成26年11月、景表法が改正され、あらたに課徴金制度ができました。そして、平成28年4月1日から、課徴金制度の運用が始まっています。この制度は、かいつまんで言うと、事業者がその販売する商品に著しく大げさであったり、お客さんに著しく有利であると誤解させたりするような不当な表示をした場合、その商品の売上げの3%、しかも3年分のお金を国に納めなければならないという制度です。

例えば、小売業者が安価な輸入牛肉を「黒毛和牛」として販売していたとします。1年の売上げが3億円、3年で9億円だったとすると、その3%の2700万円もの課徴金が課せられることになります。

かなりのインパクトが

これは、事業者にとって、相当にインパクトのある金額です。これまで、このような表示をしていた事業者は、うわさや顧客離れによる事実上の制裁を受けていましたが、今後はさらに売上げの3%、3年分の課徴金を支払わなければならないわけです。しかも、この制度では、「知らなかった」という弁解が簡単には通りません。小売業者が「黒毛和牛」として仕入れた牛肉が実は「輸入牛肉」だった、小売業者はそれを知らずに販売した、そのような場合であっても課徴金を支払わなければならない場合があるのです。

このページは、法律の内容をQ&A方式にして、できる限りわかりやすくしています。最初から順に読まなくても、知りたい項目のところだけを読めば内容が分かるよう、記述の重複をいとわず、丁寧に記述したつもりです。また、法律の内容を説明するときには、できる限り正確性を保つよう努力しながら、思い切って分かりやすい言葉に言いかえるようにしています。

この記事を通じて、ともすれば経営上の大きなリスクとなる課徴金について、ご理解を深めていただければ幸いです。

 

 

整体院・カイロプラクティックを巡る諸問題

景品表示法違反による措置命令

2016年6月、小顔矯正をうたったサービスを提供していた会社等に対し、景品表示法に基づく措置命令が出されました。例えば、ある整体院では、「当院では23個の骨から形成されている顔の骨と頭蓋骨を特殊な技法で無痛にて施術することにより、頭蓋骨の調整だけでなくリンパや脳脊髄液の循環を正常化させていきます。」などとして、施術を受ければ、顔が小さくなるとの広告をしていましたが、これが問題視されたわけです。

あはき法

話は変りますが、皆さんは、「あはき法」という法律を聞いたことがありますか?正式には、「あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律」というのですが、この法律の第1条には、「医師以外の者で、あん摩、マツサージ若しくは指圧、はり又はきゆうを業としようとする者は、それぞれ、あん摩マツサージ指圧師免許、はり師免許又はきゆう師免許(以下免許という。)を受けなければならない。」とされています。
そして、あん摩とは、「人体についての病的状態の除去又は疲労の回復という生理的効果の実現を目的として行なわれ、かつ、その効果を生ずることが可能な、もむ、おす、たたく、摩擦するなどの行為の総称である。」(昭和三八年一月九日 医発第八号)とされており、免許なくこのような行為を行うと処罰されることとなります。

整体院、カイロプラクティックとあはき法

整体院やカイロプラクティックなどは、このあん摩にあたらないのでしょうか?
この点、判例は、「医業類似行為を業とすることが公共の福祉に反するのは、かかる業務行為が人の健康に害を及ぼす虞があるからである。それ故前記法律が医業類似行為を業とすることを 禁止処罰するのも人の健康に害を及ぼす虞のある業務行為に限局する趣旨と解しなければならない」(最判昭和35年1月27日)としており、免許なく行うことが禁止されている「あん摩」は、健康に害を及ぼすおそれのある行為に限るとしています。
例えば、国民生活センターが公表している以下のような事例については、「あん摩」に辺り、あはき法違反になる可能性が高いでしょう。

【事例】 指圧・マッサージ店で全身の指圧マッサージを受けたところ肋軟骨(ろくなんこつ)を骨折した

全身の指圧マッサージを1時間半受けた。終了直前にブキッと音がして息をつけない痛みを感じたが、1~2分で通常に戻ったので激痛があったことを言わず帰宅した。その夜発熱し痛みが出たため整形外科を受診したら肋軟骨骨折で加療に1カ月を要すると診断された。

【事例】 遺伝性狭窄(きょうさく)症である旨を伝えてマッサージを受け、症状が悪化した

遺伝性狭窄症で腰痛に悩んでいた。腰痛不眠症改善という情報誌を見てマッサージを受けた。背骨の曲がったところを強く押され、腰や脚に激しい痛みと痺(しび)れ、引き攣(つ)れが起こった。脊椎専門の病院で治療を受けたところ、以前の状態に治るまでに3カ月程かかると言われた。
免許なく行うマッサージ等は、その強度、対象となる症状等について、限界があるわけです。
この点、厚生労働省は、「医業類似行為に対する取扱いについて」(平成3年6月28日医事第58号 http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/i-anzen/hourei/061115-1a.html)において、禁忌対象疾患(椎間板ヘルニア、後縦靭帯骨化症、変形性脊椎症、脊柱管狭窄症、骨粗しょう症、環軸椎亜脱臼、不安定脊椎、側彎症、二分脊椎症、脊椎すべり症等)に対してマッサージを提供することが適当でなく、また一部の危険な手技についてもこれを禁止するのが妥当であるとの考えを示しています。
すこし難しくなってしまいましたが、結局、高強度のマッサージや、椎間板ヘルニア等を患っている方へのマッサージを免許なく行うことは禁止されているわけです。

整体院、カイロプラクティックと広告

このように、整体院等で提供できるサービスには限度があるわけですから、例えば、「椎間板ヘルニアの痛みを改善」などという広告をしていると、あはき法に違反しているかもしれないことを自ら宣伝しているようなものです。
また、これは整体院、カイロプラクティックに限ったことではないのですが、景品表示法に違反するような広告にも注意しなければなりません。
具体的には、今回、措置命令が出された「小顔矯正」のほか、「血流を改善し、リンパの流れを整えることでアンチエイジング効果があります。」、「むくみが改善され、太ももが引き締まります」、「揉みほぐしによる痩身が期待できます」などという効果についても、景品表示法上は、問題となることが多いと思われます。
以上のように、整体院、カイロプラクティックについては、さまざまな法律が関係しており、法令順守には、十分配慮しなければなりません。

当事務所では、整体院やカイロプラクティックにおけるサービス内容や広告内容のチェックを行っておりますので、遠慮なくご相談ください。

課徴金制度開始後、初の措置命令

景品表示の課徴金制度の運用が4月1日に始まりましたが、運用開始後初めての措置命令が6月28日に出されました。

消費者庁によれば、「1回の施術から効果実感、1回の施術で顔の横幅を数センチ縮める独自の小顔矯正法です。」「1回の施術後、2~3回で固定するのが特徴です。」などとして、小顔になる効果を宣伝していたサービスに対し、措置命令が出されました。

違反の時期にもよりますが、4月1日以降も不当表示を行っていたということであれば、課徴金の対象となる可能性があります。

新しく設けられた課徴金については、未だ1件も納付命令が出されておらず、その運用が注目されているところですが、本件についても、その経過を注意深く見ていく必要がありそうです。

この記事をごらんになっている方で課徴金に不安を持っていらっしゃるかたは、是非、課徴金に詳しい弁護士が所属している当事務所にお問い合わせください。

広告を間違えると売上げの3%分の課徴金?!その1

いったい何をしたらいけないの? その1~優良誤認~

してはいけない表示とは、いったいどのようなものなのでしょう。

  • 「アミノ酸一般食酢の120倍の黒酢でダイエットサポート!」
  • 「『黒酢』に含まれたアミノ酸のメラメラパワー!」
  • 「不足していたのはメラメラ力だったんですね・・・」
  • 「人より効果が出にくい私。最初からアミノ酸を使ってたら・・・」
  • 「タンスの奥のジーンズが出せた!」
  • 「運動量は変わらないのに遂に出産前のスタイルに!」

これらの表示が問題視され、2016年3月30日、九州の食品会社に措置命令が行われました。消費者庁は、これらの表示はあたかも対象商品を摂取するだけで特段の食事制限をすることなく容易に著しい痩身効果が得られるかのように示すものであり、景品表示法が禁止する「優良誤認」に当たると判断しました。

 

問題とされる表示が行われたのは、課徴金制度ができる前ですから、このケースでは課徴金の支払いは問題となりませんが、今後、同じようなケースが生じた場合、課徴金の支払いが必要になる可能性があります。

ここで問題とされた優良誤認表示とは、商品の品質が実際よりもとてもいいものであるとお客様に勘違いされる表示をいいます。このような表示をホームページ、商品のパッケージ、広告等に表示をすると、今後、課徴金を課せられるリスクがあるわけです。

しかし、この表示ですが、どれを見ても「商品を摂取するだけで・・・痩身効果が得られる。」とは書いていないですよね。

「タンスの奥のジーンズが出せた!」は、奥にしまいこまれていたジーンズを取り出せたというだけで、それがはけるかどうかは直接的には書いてありませんし、「運動量は変わらないのに遂に出産前のスタイルに!」も、もしかしたら出産前のほうが体重が重かったのかもしれません。しかし、これらの表示を全体として見ると、暗にやせるかのような印象をお客様に与えてしまうことは否めません。

ただ、法的にまったく問題ないような記載では、お客様へのアピールが難しいのも事実です。当法律事務所では、ビジネスの観点から、広告の表現方法を提案するコンサルタントとも提携しておりますし、企業やビジネスの現場を経験している弁護士も所属しており、他の法律事務所とはすこし違った観点からのご助言ができるものと思います。