ダイエットサプリメント(機能性表示食品)に対し消費者庁より措置命令

サプリメント(機能性表示食品)に対し消費者庁より措置命令

消費者庁は、令和5年11月27日、サプリメント販売会社が販売するサプリメント(機能性表示食品)につき、景品表示法に違反する行為(優良誤認表示)があるとして、措置命令を出しました。
 

当該商品は、ダイエット効果などをうたったサプリメントであり、機能性表示食品としての届け出がなされているものでした。
消費者庁は、今回、事前に届け出た機能性を超える、科学的根拠のない効果を広告表示しているなどとして、販売会社に対し措置命令を出しました。
なお、消費者庁は、今年の6月30日にも、機能性表示食品の届け出のある商品に対し措置命令を出しています。
 

機能性表示食品について

機能性表示食品制度とは、国の定めるルールに基づき、事業者が、食品の安全性と機能性に関する科学的根拠などの必要な事項を販売前に消費者庁長官に届け出れば、機能性を表示することができる、という制度です。
 

この制度に基づいた食品を、「機能性表示食品」といいます。
 

例えば、きちんとした科学的根拠に基づき「〇〇という成分には高めの血圧を下げる効果が報告されている」ということが言え、必要な各事項を商品販売前に届け出れば、その商品の広告において、届け出内容である「〇〇という成分には高めの血圧を下げる効果が報告されています」という内容を表示することが出来るのです。
 

また、機能性表示食品制度は、消費者庁長官の許可や認可を受けるまでは不要であり、届け出で足ります。この制度は平成27に始まったものですが、訴求効果が期待でき、また、届け出で足りることもあってか、年々、届け出件数が増えていました。
 

とはいえ、届け出で足りると言っても、事業者がその責任をもって、科学的根拠に基づいて機能性を表示する必要があります。事業者が根拠としている科学的根拠が裏付けとならないものである場合、届け出内容と合致した広告であったとしても、法律違反を指摘される可能性があります。
 

また、届け出た内容の範囲を逸脱するような表示をしてしまった場合も、法律違反を指摘される可能性がありますし、「国のお墨付き」といった表現をした場合も違反を指摘される可能性があります。
 

また、ある成分に機能があるのであり、商品自体に機能があるとの根拠を有していないにもかかわらず、商品自体に機能があるかの如く表示することも認められません。
 

上記の例で言えば、「△△(商品名)には〇〇という成分が含まれています。〇〇という成分には高めの血圧を下げる効果が報告されています。」と表示するのは良いのですが、「△△(商品名)には高めの血圧を下げる効果が報告されています。」と表示したり、単に、「高めの血圧を下げる効果が報告されています。」とだけ表示したりすることは認められません。
 

今回、何がいけなかったのか

消費者庁は、今回、①合理的な根拠なく、あたかも本件商品を摂取すれば、誰でも、容易に、外見上、身体の変化を認識できるまでの痩身効果や顔面の美白(シミが薄くなる)効果、抗アレルギー効果、アンチエイジング効果等の効果が得られるかの如く表示をしていたことや、②消費者庁や国が痩身効果を認めているかの如く表示をしていたを理由に措置命令を出しました。
 

今回の商品については、機能性表示食品としての届け出があり、届け出の内容は、「本品には、りんご由来プロシアニジンが含まれます。りんご由来プロシアニジンには肥満気味な方の体重、体脂肪、内臓脂肪、ウエストサイズの減少をサポートすることにより、高めのBMIを減らす機能が報告されています。BMIが高めの方に適した食品です。」というものでした。
 

これに対し、実際の広告においては、①段々となった腹部の肉をつまむ人物のイラスト及び細身の人物のイラストや、「モデル級の体型をGET!」、「美白効果」、「シミが薄くなっていることも確認をされました♪」、「抗アレルギー」、「アトピー性皮膚炎患者の痒み軽減効果」、「アンチエイジング」等の表示がされ、また、②「機能性表示食品とは、根拠に基づいて効果が届出されているもので国が激やせする効果を認めているんです!」、「国が痩せると認めたサプリ」、「国が痩せる効果を認めた機能性表示食品」等の表示がされていました。
 

これに対し、消費者庁より、前記の通りの指摘がなされたところとなります。
 

なお、商品の広告においては、痩身効果以外の効果につき、「※試験結果は出ておりますが機能性表示では未承認」といった記載や、商品自体の説明ではなく商品に「配合されている主成分の試験結果及び説明です」といった記載があるなどしましたが、それらの記載があるからといって、違反にならないものではありません。
 

まとめ

今回、今年の6月に続き、消費者庁が、機能性表示食品に対し措置命令を出しました。
 

当然のことではありますが、機能性表示食品であったとしても、不適切な広告をしていた場合、措置命令の対象となりますし、年々、機能性表示食品の届け出が増えていた状況もあり、消費者庁において、機能性表示食品に対してもきちんと目を光らせていると言えるでしょう。
 

機能性表示食品の広告をするにつき、合理的な根拠、科学的な根拠に基づく必要がありますし、届け出の範囲を逸脱した内容の広告をすることも出来ません。また、消費者庁や国がお墨付きを与えたような表示をすることも出来ません。
 

機能性表示食品についても、それらの点に注意しながら、適切な広告をする必要があると言えます。

腫瘍に効く水を販売したとして薬機法違反で逮捕された件について弁護士が解説

腫瘍やアレルギー、高血圧を予防できる水を販売して刑事事件に

腫瘍やアレルギー、高血圧の予防効果が期待できると称した水を販売したとして、警視庁生活環境課が、令和5年11月30日までに、薬機法違反の疑いで、東京都港区の医療機器販売会社の代表取締役ら4人を逮捕したと発表しました。また、同じ容疑で、会社についても、書類送検したとのことです。
 

薬機法における未承認医薬品の広告について

薬機法68条は、承認前の医薬品や医療機器等の効能効果の広告を禁じています。つまり、承認されていないにもかかわらず、医薬品や医療機器等に認められる効能効果(これを「医薬品的効能効果」などといいます。)を広告することは、薬機法68条に違反することとなります。そして、薬機法68条に違反すると、薬機法85条5号によって、二年以下の懲役または二百万円以下の罰金が科される可能性があります。
 

疾病の治療又は予防を目的とする効能効果は医薬品的効能効果ですので、本件も未承認医薬品の広告をしたと疑われて逮捕されたものと考えられます。腫瘍(ガン)というと疾病(病気)の代表格ですから、医薬品的効能効果の広告というのも分かるかと思います。
 

なぜ、未承認医薬品とされるのか?

ここで、水は医薬品ではないのではないか?ということから、何故、未承認医薬品の広告となるのか疑問に思った方もいらっしゃるかもしれません。ここにも、薬機法の解釈が関わってきます。薬機法2条に医薬品の定義が定められており、また、旧厚生省が出した「無承認無許可医薬品の指導取締まりについて」(「四六通知」と呼ばれています。)という通知が、薬機法2条の解釈について方向性を示しています。
 

薬機法2条と四六通知によると、医薬品的効能効果を広告している物(医薬品的効能効果を目的としている物)は薬機法上、医薬品に該当するものと解釈することができます。
 

したがって、水(人によって何らかの加工がなされている水のようです。)であったとしても、広告内容如何によって、薬機法上、医薬品と評価されることになります。そして、当然、当該水は、医薬品として承認されているわけではありませんので、医薬品的効能効果を広告することによって、未承認医薬品の広告、薬機法68条違反となるわけです。
 

広告内容次第で薬機法違反、刑事罰につながってしまうということに注意が必要です。
 

本件についての雑感

本件に関する報道によると、販売されていた水は、通常の飲料水の成分と変わりがないとのことです。とすると、効能効果がないにもかかわらず、販売している水に効能効果があるように装った上、購入者を騙してお金をもらっているので、詐欺ではないかと考える方もいらっしゃると思います。
 

ここで、薬機法68条違反と詐欺の違いについて少し触れておきたいと思います。
 

薬機法68条違反は、先ほども紹介したとおり、医薬品的効能効果を謳った未承認医薬品を広告することです。
 

それに対し、詐欺罪は、加害者の欺罔行為、被害者の錯誤、被害者の処分・交付行為、被害者から加害者への利益移転といった要素で構成されています。少し難しいですが、例を挙げて説明をすると、「実際には効能効果がないにもかかわらず、ガンに効く水であると広告をして購入申し込みを待つこと」(加害者の欺罔行為)、「被害者が広告を信じて、ガンに効く水と信じてしまうこと」(被害者の錯誤)、「被害者が当該水を、お金を出して購入すること」(被害者の処分・交付行為、被害者から加害者への利益移転)ということになります。
 

薬機法68条違反も、詐欺罪も、検察官が有罪であることを証拠によって立証しなければなりません。その観点から見ると、薬機法68条違反の方が詐欺罪の立証よりも難易度が低いことがよく分かります。つまり、薬機法68条違反は、あくまで未承認医薬品の広告が存在するということが中心的な立証対象です。広告が正しいか否かは問題とはなりません。しかしながら、詐欺罪の場合には、実際にはガンに効果がないことも立証対象としなければならなくなり、その立証の難易度は非常に高くなります(文系の私には、その立証方法もよく分かりません。)。
 

そういった理由もあって、警察官や検察官としても、立証しやすい薬機法68条違反(広告に着目すれば良い)を選択して逮捕に至ったのかもしれません。

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陥りやすい薬機法(薬事法)違反の例と刑罰とは?

医薬品・または医薬部外品であるかのような表現


化粧品やサプリメント、食品にはそれぞれ登録された種別により効果効能を表現できる範囲が明確に決まっています。そのため例えば化粧品を医薬品のような表現で表したり、一般食品を機能性表示食品かのように表現したりすると薬機法に抵触しているとみなされます。
 

自社ホームページ以外の場所で効果効能を表現

自社のホームページには効果効能は表現していないが、委託または提携している広告会社が行ったインターネットでの広告や紙によるちらしなどに効果効能が表現されていた場合も薬機法違反です。
 

体験談のサイトを立ち上げ、そこにリンクがされていた場合

体験談のサイトなどを自社のホームページとは別に制作し、直接的な商品名は記載されていないがリンクを入れていた場合は、その体験談の中に効果効能が表現されている場合は広告とみなされ違反となってしまいます。
また、化粧品については体験談の記載も薬機法では禁止されています。
 

海外から個人輸入した化粧品をそのまま転売

個人輸入の場合でも国内で販売を目的とすれば、化粧品製造販売業許可が必要になります。さらに、日本語で製造業者の氏名・名称・住所など定められた表示方法に従わなければなりません。
 

容器が小さくて成分の表記を略した場合

化粧品本体のサイズが小さいために、配合されている成分が全て書かれていない場合は薬機法違反です。小さくてもタグやディスプレイなどを使って表示することが定められています。尚、本体に十分な幅がありきちんと明記されていた場合でも、その本体が箱に入って消費者がすぐに確認できない状態の場合は、薬機法上その外箱にも明記することが義務づけられています。
 

ご自身の作成された広告が上記に該当している!と気がついた方は要注意です。
次に解説する薬機法に基づく広告規制をきちんと把握しましょう。
 

【薬機法に基づく広告規制の判断枠組みについて】


薬機法基づく広告規制の判断枠組みの概要を以下ご説明します。
 

薬機法の主な広告規制の概要

薬機法の主な広告規制は、医薬品等の虚偽誇大広告を禁止する第66条第1項及び第2項、そして、未承認医薬品等の広告を禁止する第68条の2つです。
 

(1)虚偽誇大広告の禁止(第66条第1項及び第2項)

以下の要件をみたすと、第66条第1項に違反します。
 

①何人も
②医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の
③名称、製造方法、効能、効果又は性能に関して、
④明示的であると暗示的であるとを問わず、
⑤虚偽又は誇大な記事を広告し、記述し、又は流布すること
 

なお、第66条第2項には、医師等による効能等の保証広告を禁止する規制が、以下のとおり定められています。
 

①医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の
②効能、効果、性能について
③医師その他の者がこれを保証したものと誤解されるおそれのある記事を広告し、記述し、又は流布すること
 

当該広告は、第66条第1項に違反するものとされます。
 

(2)未承認医薬品等の広告禁止(第68条)

以下の要件をみたすと、第68条に違反します。
 

①何人も
②未承認医薬品、未承認医療機器又は未承認再生医療等製品について
③名称、製造方法、効能、効果又は性能に関する
④広告をすること
 

第66条と異なり、虚偽・誇大ではなく事実であっても直ちに違法となる点に注意が必要です。
 

注意すべき主なポイント

(1)主体

薬機法の広告規制の対象は「何人も」とされており、国内の製造販売事業者だけでなく、海外の製造販売事業者も規制の対象となりえます。
 

(2)医薬品等の定義

医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器及び再生医療等製品について、薬機法の第2条第1項から第9項に定義が定められています。「医薬品」を例にとってみると、「人又は動物の疾病の診断、治療又は予防に使用されることが『目的』とされている物…」(同条第1項第2号)、「人又は動物の身体の構造又は機能に影響を及ぼすことが『目的』とされている物…」(同項第3号)というように、治療や予防等の効果が客観的に備わっているかどうかではなく、あくまでそういった用途で使われることが『目的』とされている物という定義になっています。
 

よって、事業者としては、ある商品を健康食品として販売していても、たとえば、その商品の広告に病気の治療や予防効果があると記載していると、そういった治療や予防に使われることが『目的』とされている物ということになり、当該商品は、薬機法上「医薬品」に該当するということです。
 

そうすると、当該事業者としては、当該商品を健康食品として販売しており、医薬品としての承認を取得していないため、当該広告は、未承認医薬品の広告となり、直ちに第68条違反になってしまいます。そして、病気の治療や予防の効果がなければ、虚偽誇大広告として第66条第1項にも違反することになります。
 

「医薬品」に該当するか否かを判断するにあたっては、『無承認無許可医薬品の指導取締りについて』(昭和46年6月1日薬発第476号)が参考になります。このいわゆる46通知は健康食品の広告をチェックする上で、重要な通知となっています。
 

(3)広告の定義

以下の3要件全てをみたすと、薬機法第66条及び第68条の「広告」に該当します(平成10年9月29日医薬監第148号)。
 

①顧客を誘引する意図が明確であること(誘引性)
②特定の商品名が明らかであること(特定性)
③一般人が認知できる状態であること(認知可能性)
 

逆に1つでも満たなければ「広告」にはあたりませんので66条及び68条は適用されません。
 

「広告」の該当性に関して、①健康食品の商品名を記載したWebページ及び②特定性を排しつつ当該商品に含まれる成分等の医薬品的効能効果を記載したWebページの一体性が問題となることがあります。①だけ見れば、「広告」には該当するものの、医薬品的効能効果が記載されていないため、第68条には違反しません。また、②だけ見れば、特定性に欠けるため「広告」に該当しません。
 

しかし、①と②がリンクや検索誘導等によって、実質的に一体の「広告」と見ることができる場合には、全体として第68条に違反する「広告」となるおそれがあります。
 

(4)医薬品等適正広告基準

第66条に該当するか否かの判断基準を厚生労働省が具体的に示したものが、『医薬品等適正広告基準』(平成29年9月29日薬生発0929第4号)です。また、同時に『『医薬品等適正広告基準の解説及び留意事項等について』(平成29年9月29日薬生発0929第5号)という詳細な解説が公表されており、参考になります。
 

広告表現が法律に違反しているかどうかの判断手法


景品表示法や薬機法との関係で広告表現には注意が必要といっても、どのような表現が法律に違反するのかが曖昧で分かりにくいという声をよく耳にします。実際、広告表現がこれらの法律に違反しているかどうかについて、明確な基準はなく、広告表現が法律に違反しているかどうかを見極めるためには、判断手法の基本的な考え方を理解しておく必要があります。
 

(1)個々の表現ではなく、全体の印象で判断される

まず、広告表現が法律に違反しているかどうかは、個々の表現ではなく、全体から受ける印象で判断されます。
例えば、「スッキリ」という表現は、ダイエットを謳うサプリなどの広告で、痩身効果を暗示する言葉として、よく使われます。しかし、「スッキリ」という表現は、便通の改善や整腸作用を意味する言葉としても使われることがあります。また、他にも味覚を表現する言葉として使われることもあるかもしれません。
 

このように、個々の表現だけを切り取って考えても、その言葉が何を意味しているのかははっきりしません。その言葉の意味するところを正確に理解するためには、その他の表現を含めた広告全体の中で、その言葉の意味するところを判断する必要があるのです。
 

例えば、体重計に乗ったスリム体型の人の写真があれば、「スッキリ」は痩身効果を意味している場合が多いでしょうし、両手でお腹を押さえた人の写真があれば、便通の改善や整腸効果を意味している場合が多いでしょう。
 

(2)個々の表現で全体の印象が変わるわけではない

逆に考えれば、必ずしも、個々の表現で全体の印象を変えられるわけではないということでもあります。
 

例えば、健康食品で「これを飲むだけで痩せる」といった広告が、頻繁に優良誤認表示で措置命令を受けています。痩せるためには運動をするか食事制限をする必要があるからです。そのため、「運動と食事制限を組み合わせた結果です」といった記載をすることで、措置命令を免れようとする広告も見られます。
 

しかし、単に「運動」や「食事制限」といった表現を盛り込んでいても、多くの場合、広告全体を見れば、結局は「これを飲むだけで痩せる」という印象を与えてしまっています。実際に、ダイエットサプリの広告で、「運動」や「食事制限」といった表現が含まれていても、措置命令を受けたケースがあります。
 

(3)最後に

このように、広告表現の適法性を判断するためには、広告全体から受ける印象を考えなければいけません。その判断を適切にするためには、過去に措置命令などの行政処分を受けた事例を収集し、検討することで、判断のコツをつかんでいく必要があります。
 

商品ではなく含有成分の広告でも措置命令を受ける?


景品表示法では、「商品の」品質などについて、著しく優良であると示す表示を、優良誤認表示として禁止しています。そのため、これまで優良誤認表示を理由として措置命令が出されるのは、すべて具体的な商品についての広告でした。しかし、2019年11月1日、消費者庁は、これまでと異なり、健康食品について、具体的な商品ではなく、含有成分に関する広告に対し、措置命令を行いました。
 

(1)背景事情

このように、具体的な商品名を記載せず、含有成分についてだけ記載する表示は、非常によく見られます。その理由は、景品表示法ではなく薬機法にあります。
 

薬機法においては、健康食品について医薬品的効能効果を広告することは禁止されています。しかし、薬機法の適用対象となる広告は、上記のとおり、①誘引性、②特定性、③認知性の3つの要件を満たすものに限られます。そのため、健康食品の商品名を明らかにせずに、含有成分について医薬品的効能効果を表示しても、薬機法違反とはならないのです。
 

(2)含有成分の表示が薬機法違反となる場合

しかし、実際に事業者側が意図しているのは、含有成分の医薬品的効能効果と、具体的な健康食品の商品とを、消費者側で結び付けてもらうことにある場合がほとんどです。そのため、事業者としては、両者を結び付けるべく様々な工夫をするのですが、そのような工夫が薬機法に違反することがあります。
 

例えば、含有成分の医薬品的効能効果を記載しているウェブサイトに、当該成分を含有している健康食品の購入サイトへのリンクを張り、遷移することができるようにしていた事案において、両者が実質的には一体の広告であると判断され、薬機法違反で摘発されるということがありました。
 

(3)含有成分の表示が景品表示法違反となる場合

実は、前述した景表法に基づく措置命令も、薬機法の場合と同じように考えることができます。
 

前述の措置命令は、単に含有成分の表示だけを取り上げて優良誤認表示と判断したわけではありません。この事案では、まず、ウェブサイトにおいて「ブロリコ」という成分について、免疫力の向上や、病気の治療・予防効果があるという表示をしていました。
 

消費者は、当該ウェブサイトを通じて「ブロリコ」に関する資料請求をすることができ、資料請求があると、「ブロリコ」についてウェブサイトと同じような表示がされた冊子やチラシに加え、具体的な商品の注文はがき付きチラシと、当該商品の無料サンプルが送付されるという仕組みになっていました。
 

消費者庁は、そのような全体の仕組みを捉えて、ウェブサイトや冊子、チラシについても、具体的な商品に関する広告であると判断し、優良誤認表示と認定したのです。景品表示法においては、このような判断は初めてのものですが、薬機法の観点からは、従来から行われていた規制の延長と考えることもできるでしょう。
 

年々取り締まりが厳しくなる薬機法(旧:薬事法)。違反すると自主回収や逮捕、罰金、懲役など重い罰が科されてしまいます。一度専門家に相談してみるのがいいのではないでしょうか。
 

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ドミノ・ピザに対する景品表示法に基づく措置命令について解説

令和5年6月27日にドミノピザが景表法違反で消費者庁から、措置命令が出されています。
 

措置命令の対象となった事実として、ドミノピザが配布しているチラシに、商品の税込価格が記載されていましたが、実際に商品購入時に支払う金額には、その商品の税込価格にサービス料(6~7%)が上乗せした金額が求められています。
 

この表示内容が、景表法5条2項の有利誤認表示として、消費者庁の措置命令の対象となったのです。
 

消費者庁報道資料より

 

なお、サービス料に関しては、チラシの裏面に小さな文字で記載されていましたが、表示が目立たなかったため、打ち消し表示と認められませんでした。
 

最近ですと、商品の品質を著しく優良に表示する優良誤認表示が、措置命令の対象としては、数多く公表されている中、価格面を優良に表示する有利誤認表示での措置命令は少数派ではありましたが、今回の措置命令を皮切りに、今後同様に有利誤認の指摘事例が増える可能性もあります。
 

価格表示の方法に関しては十分に注意するようにしましょう。
 

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広告は文章だけでなく、広告全体から判断されます。
近年、景品表示法に基づく措置命令や課徴金納付命令が多く出されており、ナンバーワン表記や二重価格表示、そして「飲むだけで痩せる!」などの事実と異なる表記への取り締まりが一層強くなっているのが現状です。
 
加えて、美容健康業界の企業様は、事実に反する表示での景表法違反にも注意ですが、よくご質問を頂くアンチエイジング系の若返りワードや、肌色を変える美白系のワード、ビフォーアフター写真のような若返りを暗示する写真やイラストでの表現も薬機法違反の対象となりますので注意が必要です。
 

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課徴金納付命令とは

景品表示法に違反する行為に対しては、措置命令などの措置が採られます。

また、事業者が不当表示をする行為をした場合、景品表示法第5条第3号に係るものを除き、消費者庁は、その他の要件を満たす限り、当該事業者に対し、課徴金の納付を命じます(課徴金納付命令)。ここでは、課徴金の納付について、よくある質問をまとめました。

まず、課徴金納付の流れは次の図の通りです。

(消費者庁サイトより)

  • 課徴金の納付について

「課徴金納付命令」が出された場合、例えば、課徴金を納めること自体について不服がある場合や課徴金の金額に不服がある場合には、事業者は、不服申し立てをすることができます。

不服申し立てをする方法は2つあります。

1つ目は、行政不服審査法第4条第1号に基づき、消費者庁長官に対して審査請求を行う方法です。

もう一つは、行政事件訴訟法第3条第2項に基づき、処分取消訴訟を行う方法です。

 1)支払いの期限はありますか?

課徴金を課せられた事業者のところには、「課徴金納付命令書」が送られてきます。この命令書には、納めなければならない課徴金の金額、課徴金の金額の計算の根拠、課徴金の対象とされた行為、課徴金を納めなければならない期限などが書いてあります。課徴金は、この課徴金納付命令書が出された日から7か月以内に納めなければなりません。

 

 2)期限までに支払わないとどうなりますか?

消費者庁から、督促状が送られてきます。督促状には新しい納付期限が書いてあり、その期限内に課徴金を納めるよう求められます。

 

 3)督促状が送られるということは延滞金などのペナルティはありますか?

→ あります。

課徴金を納めなければならない日の翌日から、実際に課徴金を納付した日まで、年14.5パーセントの延滞金の支払い可能性があります。

というのも、景表法には、「延滞金を徴収することができる。」(景表法第18条第2項)とありますので、延滞金を必ず支払わなければならないかというと、そうではない場合もあるようです。督促が行なわれた後は、高率の延滞金を払わなければならなくなる可能性がある点は、注意が必要です

 

もし、この督促状に書いてある期限も守らなかった場合は、課徴金納付命令が執行される可能性があります。具体的には、課徴金納付命令を受けた者の財産が差し押さえられ、最終的には競売などの手続きを経てお金に変えられ、国に納められることになります。

なお、景表法は、事業者の資産等の調査できる権限を行政庁に与えていますから、課徴金を支払わなければならない事業者名義の資産は、照会により明らかにされることになります。

 

 4)課徴金納付命令が出された後、別な会社と合併したらどうなりますか?

存続後の会社が課徴金を払わなければなりませんので、合併をしたとしても課徴金を払わなければいけない状況は変わりません。

 

5) 課徴金を損金に算入することはできますか?

→ できません。

課徴金を損金に算入できるとしてしまうと、実質的に事業者の経済的な不利益が小さくなってしまいます。

例えば、事業者が500万円の課徴金を支払った場合、これが損金に算入できることになれば、課税所得が減り、所得税額や法人税額が減少することになります。課徴金を課すのは、不当な表示をすることが経済的にわりに合わないと事業者に思ってもらい、不当な表示を抑止するためです。

 

売上額の3パーセントというのは、多くの事業者にとって、不当な表示をしたことにより得られた利益をすべて吐き出させる水準です。もし課徴金の損金算入が認められてしまうと、所得税額や法人税額の軽減を通じて、不当な表示をしたことによる利益が事業者に残ってしまうことになります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうすると、「課徴金を払ったとしても、不当な表示をしたほうが得だ」ということになってしまい、事業者が不当な表示を止めようと思わなくなってしまいます。そもそも、課徴金の制度が作られた理由は、課徴金を支払わせることで、不当な表示が行なわれないようにするためでしたから、この目的を達成するためには、課徴金の損金算入を認めるわけにはいかないのです。

 

前述の通り、課徴金納付命令が出された後も、不服申し立てをすることはできます。弁護士法人丸の内ソレイユ法律事務所では、過去にこうした件での対応経験もありますので、お気軽にご相談ください。

【弁護士解説コラム】景表法改正に向けた報告書が公表されました。

消費者庁の「景品表示法検討会」は令和5年1月、景表法の改正に向けて、確約手続きの導入や悪質業者に対する規制強化を柱とする報告書を取りまとめました。ここでは、明らかになった報告書の内容について、ポイントとなる点を説明します。


 

 

 

(消費者庁景品表示法検討会報告書)

 

 

 

 

 

「課徴金」「措置命令の対象の実質的な拡大」の2点が大きなポイント

報告書では、早期に対応すべき課題として、違反行為に対する抑止力の強化が上げられています。中でも、①課徴金の件、②措置命令の対象の実質的な拡大―が大きなポイントとなります。

 

 

課徴金について

 

まず、①の課徴金についてです。繰り返し違反行為を行う事業者に対しては、割増算定率の適用(実質的な課徴金の上乗せ)が考えられる対応として挙げられました。

また、課徴金算定のための基礎となる事実を把握できない事態等に対応するため、課徴金対象行為に係る売上額等を合理的な方法により推計できる規定の整備も挙げられています。

「課徴金に関する割増算定率の適用(実質的な課徴金の上乗せ)」も「売上額等の推計の規定」も、法律改正が必要な事項ではあるものの、景表法の実効性を高める観点からすると、大きな影響を与えるものと考えられます。

  • 独占禁止法及び金融商品取引法(昭和23年法律第25号)は、一定期間内に繰り返し違反行為を行う事業者に対しては、抑止力を高めるために原則の算定率ではなく、割り増した算定率を適用した課徴金を課すこととしている(独占禁止法第7条の3第1項、金融商品取引法第185条の7)

 

措置命令の対象の実質的な拡大

次に、②措置命令の対象の実質的な拡大についてです。法人を隠れみのとしながら、自然人が実質的には不当表示を行っている等と認められる場合に、実質的な違反行為者と評価できる当該自然人に供給主体性・表示主体性が認められるときは、当該自然人を「事業者」(景品表示法第2条第1項)として認定して措置命令・課徴金納付命令の対象とするといった対応が挙げられています。

 

 

 

 

措置命令の対象の実質的拡大(今までの運用は、法人を対象としていました。)については、運用基準の変更によって対応が可能(法律改正の必要まではない)と考えられるため、ある程度早期に実行することが可能となります。

具体的には、法人を複数持っているオーナー等が対象となると考えられますが、オーナー等が実質的な供給主体・表示主体と認定されることによって、景品表示法の実効性を高めようとしていると考えられます。

このような運用が始まると、実質的なオーナーが、複数法人を持ち、一法人に一つの商品を販売し、措置命令等を受けたら、当該法人を消滅させるといった方法はとれなくなることになります。

 

 

「確約手続きの導入」について

今回の報告書では、早期に対応すべき課題の第一番目に、確約手続の導入が挙げられました。こうした点から、消費者庁としても、確約手続の導入に意欲的だということが伺われます。

独禁法上、既に導入されている確約手続において行われることになるのは大きく次の3つです。

①   比較的軽微な行為を対象とする(入札談合や価格カルテル等は対象外

②   確約計画の策定、認定

③   行為、確約計画の内容等の公表

独禁法では、対象としない行為類型がある程度明確となっているのに対して、景品表示法では、悪質性の高い行為類型を必ずしも明確に区分けすることができません。

この点に、行政の裁量が入ることになりますが、本来であれば、対象とすべきではないような行為を対象とする、又は、その逆になるなどの課題があるように思います。

また、確約計画の策定、認定においては、事業者の負担が大きくなる可能性がありますし、せっかく、確約計画を策定して認定してもらったとしても、公表されることとなります。

 

B2Cの企業にとっては、「公表される=大きなダメージ」となりますので、公表されてまで、確約計画策定の負担を負うかというところが大きな問題になるように思われます。

 

 

「一般消費者の保護」が景表法の最終的な目標

 

 

景品表示法の最終的な目的は一般消費者の保護です。この観点から、消費者への返金を確約計画認定の要件とする場合(比較的軽微な行為に適用があると言われており、課徴金納付命令の対象とならない行為が対象になるのではないかと言われています。そうなると、金銭的な負担をしてまで対応するかというところに、少し疑問符が生じると思われます。)、公表されたうえに、金銭的な負担を負うということになります。

 

実際に、実効性のある確約手続とするためには、独禁法の手続をそのまま導入するというよりは、景品表示法やその目的に合った形での変更、導入が必要となると考えられます。

既述のように、景品表示法に確約手続を導入することには、まだ課題があるように考えられますが、事業者としては、確約手続が景品表示法に沿って、どのように変更・導入されるのか、そして、その要件や事業者へのメリット等の内容を注視することになるのではないかと思っております。

今後の課題

今回の報告書では、早期に対応すべき課題、中長期的な課題のいずれにも、景品表示法の実効性を高めるという趣旨の記載があります。このことから、景品表示法の違反は、事業者側、会社にとってメリットがないと感じるように、より法の実効性を高めていく(規制強化の方向)流れと思われます。

また、規制強化の軸となる可能性のある課徴金の強化や措置命令等の対象の実質的な拡大は、事業者にとって、大きな影響を与えることになります。今後の流れにより着目していく必要があるでしょう。

当事務所では、法改正などについても今後、随時情報を発信していく予定です。

景表法、薬機法、特商法などに関するご相談は、是非お気軽にお問合せ下さい。

 

雑誌における美容・健康の広告表現にも注意!

【雑誌の表現方法の注意点・ポイント】

 

最近は、美容の情報を簡単にSNSで収集できる時代になりましたが、まだまだ美容雑誌の需要も健在です。特に、付録に化粧品サンプルを付けて販売される雑誌などは、発売後すぐに売り切れてしまうなど、注目度の高さを感じます。そこで今回は、雑誌業界に携わる皆様のために、雑誌における、化粧品の広告表現の注意点・ポイントを解説します。

広告表現のルールを規定している薬機法

 

広告表現のルールを規定している法律はいくつかありますが、化粧品の広告を作成する際に注意すべき主な法律は、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(以下「薬機法」といいます。)です。

 

薬機法においては、「何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の名称、製造方法、効能、効果又は性能に関して、明示的であると暗示的であるとを問わず、虚偽又は誇大な記事を広告し、記述し、又は流布してはならない。」(薬機法第66条第1項)として、誇大広告の禁止を規定しています。また、「何人も、…医薬品若しくは医療機器又は再生医療等製品であつて、まだ…承認又は…認証を受けていないものについて、その名称、製造方法、効能、効果又は性能に関する広告をしてはならない。」(薬機法第68条)として、未承認医薬品等の広告の禁止を規定しています。

 

 

つまり、化粧品の効能効果について、虚偽又は誇大な広告をしてはいけないし、化粧品であるにもかかわらず、医薬品的な効能効果を記載してはならない、ということです。なお、化粧品については、このような薬機法の表示ルールのガイドラインとして、日本化粧品工業連合会が、「化粧品等の適正広告ガイドライン」というものを策定しており、具体的な表示のルールを定めているので、どのような媒体であっても、化粧品の広告を作成する際には、同ガイドラインを参照し、遵守することを推奨します。

 

もう一度見直してほしい「広告3要件」

そして今回は、雑誌という媒体に焦点を当て、雑誌特有の注意点に触れたいと思います。出版社において、一つの(美容)雑誌を制作する際に、化粧品の広告として薬機法に反していないかどうかを検討するのは、企業から掲載を依頼され、具体的な商品が大きく掲載されているような、いわゆる広告ページのみなのではないでしょうか。もちろん、そのような広告ページも、薬機法に反してはいけないので、内容をチェックする必要がありますが、それだけでは足りません。薬機法における広告表現の規制対象は、広告の3要件といって、

①顧客を誘引する意図が明確(誘引性)、

②特定の商品名が明らか(特定性)、

③一般人が認知できる状態(認知可能性)

という条件をクリアしたものすべてになります。

 

美容ライター、コスメ好きが「〇〇」と語る表現はNG?

 

 

 

例えば美容雑誌の特集で、美容家がおすすめする具体的な商品に関する座談会記事などをよく見かけますが、それは、上記広告の3要件を満たしている可能性が高いです。そうであるならば、その座談会記事自体も、具体的な化粧品の広告に該当し、薬機法の広告規制を受けることとなります。薬機法の広告規制によれば、上記のとおり、医薬品的な効能効果を記載してはならないことになるので、「このクリームでシワが改善します」と言った内容を座談会記事の中に記載してはいけないこととなってしまいます。

 

今のところ、例に取り上げたような座談会記事が、薬機法違反だとして摘発されたケースはありませんが、理論上は上記のような思考過程をたどると、薬機法違反になる可能性があります。

 

実務の動きを確認しつつ対応することになろうかと存じますが、雑誌の場合、薬機法の広告記載の対象となるページは、意外と多岐にわたるのだということを、知っておいていただけたらと思います。

 

今回は、化粧品の広告の中でも、特に雑誌業界に絞った内容でお話をいたしました。適切な広告表現を心がけつつ、美容業界を盛り上げていっていただければ幸いです。

アマゾン薬局と薬局事業のDX

アマゾン薬局と薬局事業のDX

今回は最近よく耳にする“アマゾン社が薬局事業に参入する”、いわゆるアマゾン薬局に関して、お話をしたいと思います。と言っても、アマゾン薬局自体に関する説明というよりも、何故アマゾン社が日本の調剤薬局事業に参入を宣言してきたのかという背景を中心に説明をしていきます。

昨今、調剤薬局事業にもDX(デジタル・トランスフォーメーション)を進めるよう規制緩和が進められています。2019年に認められたオンライン服薬指導を皮切りに、2021年にはオンライン資格確認、とうとう2023年1月には電子処方箋の運用が開始されることになっています。他方で同時並行的に保険医療機関でもオンライン診療、オンライン資格確認は認められており、また、電子処方箋の運用も薬局と同様に推進され、医療機関側も薬局事業と同様にDXが進められているのです。

では、薬局のDXが進むことと、アマゾン薬局が進出することに、どのような関係があるのでしょうか。それにはまず、電子処方箋の役割について、簡単に説明をしておく必要があります。

 

電子処方箋の流れ

皆さんが調剤薬局で薬を受け取るまでの流れを思い出してみてください。医療機関で診察を受けた後、紙の処方箋を受け取り、それを調剤薬局に持参して、薬が渡されるという流れが一般的かと思います。(一部では医療機関で薬まで渡されますが今回はそのケースは除きます。)

電子処方箋の運用が開始された場合には、医療機関で発行される紙の処方箋が電子処方箋として置き換わることになります。ここで電子処方箋と混同しないようにしていただきたいのが、処方箋のFAXやアプリで写真を撮って薬局に送付する場合です。

これらは、あくまで紙の処方箋の写しに過ぎないため、原本である紙の処方箋は別途薬局に渡す必要があります。一方、電子処方箋は対象の薬局に送信さえすれば、電子処方箋自体が原本となりますので、FAXやアプリと異なり薬局に行って紙の処方箋を渡す必要がなくなるのです。

 

処方箋のやり取りがオンラインで可能になるとどう変わる?

 

処方箋のやりとりがオンラインで可能になると、後は、保険証の確認や薬剤師による服薬指導の実施が問題となりますが、これらは既に行われているオンライン資格確認やオンライン服薬指導により、薬局に直接行くことなく、オンライン上で実施することができます。更に言えば、オンライン診療で診察も実施されれば、医療機関に行くことなく、電子処方箋が発行され、任意の薬局に電子処方箋を送信し、服薬指導を受け、後は薬局が薬を患者さんのご自宅に配送すれば、患者さんは自宅にいながら診察から薬の受け取りまで全てが完了できるのです。

ここでポイントとなるのが、最後の薬の配送です。ピンときた方もいらっしゃるかもしれませんが、アマゾン社は物流に関してとても強い自社ルートがあるため、通常の薬局が宅配便等で行わなければならないところ、自社のルートを用いて配送を行うことができます。したがって、その物流の強みを活かして他の薬局にはできないようなサービスが提供可能ということで、参入を宣言したと考えられます。

 

 

 

 

 

 

アマゾン薬局の早期参入は可能?

 

それでは、アマゾン薬局が描くような全てオンラインで繋ぐような薬局事業は、市場参入し、直ぐにシェアを獲得することが可能なのでしょうか。 色々な考え方があるかと思いますが、直ぐには難しいものと考えられます。というのも、調剤薬局のオンライン化は、調剤薬局のみならず、医療機関や患者さん自身も対応する必要があります。

具体的には、医療機関側のDXが進んでいないと電子処方箋の発行以前に、オンライン診療も難しく、患者さんは来院する必要があります。しかし、来院して処方箋を受け取れば、紙の処方箋で医療機関に近い薬局に行けば済んでしまいます。そうすると電子処方箋が導入されたからと言って、すぐにオンラインを中心とした薬局が現在の薬局に取って代わるとは考え難いのです。また、患者さんの全てが電子処方箋やオンラインに対応できるかという点や検査が必要な患者さんも相当数いることを考え併せると、全てオンラインで行うことは難しく、また定着するにも時間がかかることは想像に易いのです。

 

医療機関や薬局のDXに向けて

しかし、これは現在の話に過ぎません。数年後になるかもしれませんが、医療機関や薬局のDX化が当たり前となり、医療業界でもオンラインが基本となる時代は、いつかは到来しても不思議ではありません。

 

また、今もリフィル処方等も法律的には認められており、一般的になれば、調剤薬局がDXされるだけでも、全てオンラインで対応することも可能です。このように、オンラインで対応する薬局が当たり前となり、いつか今の薬局事業のイメージが変わることも想定して準備をしていくことが必要と考えられるでしょうい。

最近話題のCBDって?~今更聞けない話題の成分を弁護士が解説~

最近よく、美容、健康に関する製品で、CBD(カンナビジオール)が配合された製品を目にしたり、耳にしたりすることはありませんか?今回はこの、CBDについてお話をしたいと思います。中学高校と化学式に苦労し、「もうこの絵は見たくない」と思っている方もいらっしゃるかもしれませんが、お付き合いください。

 

CBDの効能効果と使用方法について

CBDとは次の化学式で表される大麻草などに含まれる成分のひとつで、抗不安、抗てんかん、神経保護、血管弛緩、抗けいれん、抗虚血、抗ガン、制吐、抗菌、抗糖尿、抗炎症、骨の成長促進等主に鎮静化作用を有するということで近年注目を集めている成分です。

 

 

このように多様な効能効果を有するCBDは、健康食品として販売されていることが多く、一方で皮膚に塗っても効果があるとして、化粧品としても販売されることもあり、日本における市場も拡大傾向にあります。

 

CBDとTHC

CBDとセットで必ずと言っても良い程耳にすることがあるのは、THC(テトラ・ヒドロ・カンナビノール)です。CBDとこのTHCは切っても切り離せない関係にあります。

 

THCは上の化学式で表されますが、CBDと同様に大麻草などに含まれる成分のひとつです。しかし、THCは正に大麻(マリファナ)の主成分で、精神作用と言われる中枢神経への影響が大きく、常習性も高いため、CBDとは異なりTHCが含まれる製品は大麻取締法等の法律で厳しく規制がされています。

また、CBDとTHCは同じ大麻草から抽出されますが、CBDは大麻草の種子等から抽出されるのに対し、THCは種子以外の花や葉、根等から抽出されます。そして、CBDが抽出される種子等に関しては日本の法律では規制の対象とされていません。

大麻草の種子の有名な使用例として挙げるとすれば、七味に含まれている麻の実が大麻草の種子に該当します。一方でTHCが抽出される部位は法律で規制の対象となっています。このようにTHCはその成分のみならず、原料までが規制されているのです。他方でCBDにはそのような精神作用はないため、規制の対象とはなっていないのです。

しかし、同じ大麻草から抽出されるTHCはCBD製品に混入することもあり、THCが混入したCBD製品は規制の対象になってしまうため、THCとCBDは切り離せない関係にあるのです。

 

CBDと輸入ビジネス

上記のとおり、CBDは大麻草から抽出される成分ですが、日本国内で栽培された大麻草から成分を抽出し、販売されている製品はありません。日本において、大麻草を栽培することについては、許可が必要となりますので、原料である大麻草から栽培して、CBDを抽出するというのは、今はまだ日本では行われていないのが現状です。

そのため、CBDの原料やCBD自体の入手は海外から輸入するのが主流となっていますが、輸入をする際にもTHCが問題となってきます。

 

すなわち、THCは上述したとおり、大麻取締法の範疇で規制される成分に該当します。そのため、CBD製品を輸入した際には、税関でTHCが含有されているか成分検査が行われることになります。CBD製品は、製法に応じて大きくアイソレイト、ブロードスペクトラム、フルスペクトラムと分類されていますが、アイソレイトとブロードスペクトラムは基本的にTHCフリー、フルスペクトラムはTHCを含有していることが前提となり、日本の法律と抵触するため、輸入は認められていません。

また、商品としては上記のように分類され、THCフリーを謳っていたとしても、現在輸入時には検査をされるため、THCが含有されるということになれば、その輸入しようとしているCBD製品は輸入できなくなることもあります。

 

さらに言えば、仮にTHCの含有検査の結果THCが含有されている、または、検査行われず輸入をできたとしても、後からTHCを含有しているということが発覚した場合、大麻取締法に反するとして、重い処罰を受ける可能性もありますので、十分な注意が必要となります。

 

現在でも、厚生局においてはCBD製品を輸入する際、事前に書類一式の提出を求める等事前の対策が行われたり、上記のように輸入時の検査等が課されたりする等してTHCの取り締まりを厳しくしています。

 

CBDと今後の規制

海外においてはCBDの有効性・有用性から、マーケットが急速に拡大する傾向しており、それと共に様々な商品が展開されているため、日本においても輸入をして、販売をし易い環境が醸成されつつあるという背景があります。

他方で上述してきたとおり、CBDにはTHCという規制対象となっている成分が含有されるリスクが伴います。

 

そのため、今後CBDにはより厳しい規制が敷かれる可能性があります。大麻取締法等改正にむけた検討会では必ずCBDの状況が触れられており、その有用性と共にTHCとの関係は常に議題に挙がっている状況です。

また、CBDの多様な効能効果から、海外では医薬品として用いられている例も少なくありません。日本においても、それだけの効能効果を有する成分である以上、医薬品として扱うべきだという意見も少なくありません。仮にもしCBDが医薬品として認定されるとすれば、現在健康食品や化粧品として扱われている商品が、医薬品の許認可なしでは扱えなくなることとなり、このような観点からも、引き続き規制の動向を注視していく必要があります。
 

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薬機法を考慮すると何も訴求できない、どんな風に書けばいいのかわからないーそのようにお悩みの方、企業の販促・プロモーション・広告担当の方、弊所は法律に則った訴求表現のアドバイスもさせていただくことが可能ですのでぜひ一度ご相談ください。
 

広告は文章だけでなく、広告全体から判断されます。
CBD商品でよくあるストレス解消、痛みの緩和、不眠症改善など、身体の機能を改善する表現や、効能効果を暗示する写真やイラストでの表現も薬機法違反の対象となりますので注意が必要です。
 

弁護士法人丸の内ソレイユ法律事務所は2009年創業。2016年に弁護士業界ではいち早く美容健康業界に参入しました。
弊所はその実績によりCBDに関するセミナーも健康博覧会で行うなど、美容健康業界に関するご相談や講演依頼を多くご依頼頂いている法律事務所でございます。
化粧品やサプリメント等、美容健康系の広告に詳しい弁護士が多数在籍しており、皆様のご不安に寄り添うことができますので、是非お問い合わせください。
 
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EMSよくあるNG表現例「ダイエット効果」広告審査例(2022年9月メルマガ)

2022年9月にコラム紹介メルマガでご紹介した薬機法広告審査例をご紹介します。

 

【EMSよくあるNG表現例】

 

身体の奥まで刺激し、ダイエット効果が期待できます」

リスク度:★★

 

修正案:「身体を刺激することで、筋肉トレーニングをすることができます」

 

修正理由:

痩身効果を暗示し、医薬品的効能効果に該当します。

化粧品の肌への浸透表現と同様に効果が及ぶ範囲は、「角質層まで」であることを明記する必要がありますが、EMSとの相性を考えて作用する範囲は削除しました。

 

ダイエット効果は医療機器的な効能効果を暗示する表現となりますので、ガイドラインで認められている「筋肉トレーニング」としました。

 

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