薬機・景表法等に関するQ&A

課徴金納付命令とは

2023.5.31
このエントリーをはてなブックマークに追加

景品表示法に違反する行為に対しては、措置命令などの措置が採られます。

また、事業者が不当表示をする行為をした場合、景品表示法第5条第3号に係るものを除き、消費者庁は、その他の要件を満たす限り、当該事業者に対し、課徴金の納付を命じます(課徴金納付命令)。ここでは、課徴金の納付について、よくある質問をまとめました。

まず、課徴金納付の流れは次の図の通りです。

(消費者庁サイトより)

  • 課徴金の納付について

「課徴金納付命令」が出された場合、例えば、課徴金を納めること自体について不服がある場合や課徴金の金額に不服がある場合には、事業者は、不服申し立てをすることができます。

不服申し立てをする方法は2つあります。

1つ目は、行政不服審査法第4条第1号に基づき、消費者庁長官に対して審査請求を行う方法です。

もう一つは、行政事件訴訟法第3条第2項に基づき、処分取消訴訟を行う方法です。

 1)支払いの期限はありますか?

課徴金を課せられた事業者のところには、「課徴金納付命令書」が送られてきます。この命令書には、納めなければならない課徴金の金額、課徴金の金額の計算の根拠、課徴金の対象とされた行為、課徴金を納めなければならない期限などが書いてあります。課徴金は、この課徴金納付命令書が出された日から7か月以内に納めなければなりません。

 

 2)期限までに支払わないとどうなりますか?

消費者庁から、督促状が送られてきます。督促状には新しい納付期限が書いてあり、その期限内に課徴金を納めるよう求められます。

 

 3)督促状が送られるということは延滞金などのペナルティはありますか?

→ あります。

課徴金を納めなければならない日の翌日から、実際に課徴金を納付した日まで、年14.5パーセントの延滞金の支払い可能性があります。

というのも、景表法には、「延滞金を徴収することができる。」(景表法第18条第2項)とありますので、延滞金を必ず支払わなければならないかというと、そうではない場合もあるようです。督促が行なわれた後は、高率の延滞金を払わなければならなくなる可能性がある点は、注意が必要です

 

もし、この督促状に書いてある期限も守らなかった場合は、課徴金納付命令が執行される可能性があります。具体的には、課徴金納付命令を受けた者の財産が差し押さえられ、最終的には競売などの手続きを経てお金に変えられ、国に納められることになります。

なお、景表法は、事業者の資産等の調査できる権限を行政庁に与えていますから、課徴金を支払わなければならない事業者名義の資産は、照会により明らかにされることになります。

 

 4)課徴金納付命令が出された後、別な会社と合併したらどうなりますか?

存続後の会社が課徴金を払わなければなりませんので、合併をしたとしても課徴金を払わなければいけない状況は変わりません。

 

5) 課徴金を損金に算入することはできますか?

→ できません。

課徴金を損金に算入できるとしてしまうと、実質的に事業者の経済的な不利益が小さくなってしまいます。

例えば、事業者が500万円の課徴金を支払った場合、これが損金に算入できることになれば、課税所得が減り、所得税額や法人税額が減少することになります。課徴金を課すのは、不当な表示をすることが経済的にわりに合わないと事業者に思ってもらい、不当な表示を抑止するためです。

 

売上額の3パーセントというのは、多くの事業者にとって、不当な表示をしたことにより得られた利益をすべて吐き出させる水準です。もし課徴金の損金算入が認められてしまうと、所得税額や法人税額の軽減を通じて、不当な表示をしたことによる利益が事業者に残ってしまうことになります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうすると、「課徴金を払ったとしても、不当な表示をしたほうが得だ」ということになってしまい、事業者が不当な表示を止めようと思わなくなってしまいます。そもそも、課徴金の制度が作られた理由は、課徴金を支払わせることで、不当な表示が行なわれないようにするためでしたから、この目的を達成するためには、課徴金の損金算入を認めるわけにはいかないのです。

 

前述の通り、課徴金納付命令が出された後も、不服申し立てをすることはできます。弁護士法人丸の内ソレイユ法律事務所では、過去にこうした件での対応経験もありますので、お気軽にご相談ください。

The following two tabs change content below.

弁護士法人丸の内ソレイユ法律事務所 美容広告専門チーム

美容広告専門チームは、美容業界と広告に精通した弁護士集団として、高い専門性を持ち、多くの企業の顧問弁護士を務めている。美容や広告に関するセミナーでの講演依頼を多数受け、新聞をはじめとしたメディアからも数多くの取材を受ける。

薬機・景表法等に関する最新記事

【令和6年2月】エアガン用BB弾の供給に係る表示につき消費者庁より課徴金納付命令
【令和6年2月】糖質カットを謳った炊飯器を販売するニトリなど4社に対する措置命令について解説
【令和6年1月】二酸化塩素による空間除菌を標ぼうする商品の販売業者に対する措置命令について
【販売中止・自主回収指導】医薬品成分を含む健康食品について
景品表示法で規制されるステマ規制とは?過去のステマ事例紹介
pageTop