(Q12)課徴金の対象となる行為:不当な表示にまったく影響されずに商品やサービスを購入したお客様からの売上げについても課徴金が課せられるのですか?

そうなります。
例えば、いつも5万円で売っていた商品を「今だけ優待価格5万円」と表示して販売していたとします。お客様は、いつも5万円で売っていて、「今だけ5万円」が事実とは違うことを十分知りながら商品を購入していたとします。このような場合であっても、課徴金の計算方法は変わりません。
課徴金の額は、不当な表示がお客様に実際に影響を与えたかどうかにかかわらず、Q○の計算式で計算されることになります。

(Q11)課徴金制度のあらまし:どのような場合に課徴金を支払わなければならないのですか?

事業者が優良誤認表示や有利誤認表示をした場合には、一部例外はありますが、課徴金を払わなければなりません。

優良誤認表示とは、例えば、15万kmも走行した中古自動車に走行距離1万kmと表示するような場合です。

有利誤認表示とは、例えば、いつも1万円で売っている商品に、「期間限定、今だけ半額で1万円」などと表示する場合です。

自社の商品やサービスにこのような不当な表示をした事業者には、課徴金が課せられる可能性があるわけです。

 

(Q10)課徴金制度のあらまし:どうして課徴金制度が作られたのですか?

一番大きなきっかけは、平成25年秋に表面化した、ホテルやレストラン等でのメニュー表示問題です。

当時、有名ホテルやレストラン等で「バナメイえび」を「芝えび」と表示したり、冷凍保存魚を「鮮魚」と表示したりするなどしていたことが公になり、社会問題となりました。

当時、私は、法務省刑事局に所属しており、国会で「何らかの方法でこのような不適切な表示を処罰することはできないか。」などという質問が出た場合に備えて、あらゆる関連法令を調べたのですが、このような行為をしたことをもって直ちに刑事罰を与えることができるような規定は当時、見当たりませんでした。逆に言えば、十分な抑止力のある法律が見当たらない状況であったからこそ、原材料名を偽るなどした問題のある表示が横行していたわけです。

このような状況は、やはり国会でも問題視され、まず、平成26年6月に都道府県知事に不当表示に対する措置命令(措置命令については、あとで詳しくご説明します。)を行う権限が与えられるなどの法改正、平成26年11月には、課徴金制度を新設する法改正が行われました。

その後、課徴金に関して必要事項を定めた景表法施行令、景表法施行規則が定められ、平成28年4月1日から、課徴金制度の運用が始まったのです。

(Q9)課徴金制度のあらまし:課徴金って何ですか?

2016年4月1日、不当な表示をした事業者に対し、課徴金を課すことができる改正景表法が施行されました。

この改正は、昭和37年に景表法が制定されてから、もっとも大きなものであり、事業者に与える影響も大きなものです。課徴金は、最大、3年間の売上げの3パーセントの額になりますから、課徴金が課された場合、経営に与える影響は甚大です。

この記事では、どうして課徴金制度がつくられたのか、どのような場合に事業者が課徴金を支払わなければならないのか、その金額はどのように計算されるのか、課徴金の金額に不満があるときはどうしたらいいか、どのようにして課徴金を支払うのか、課徴金を支払わなかったらどうなるかなど、実務的な観点から、ご説明していきます。

(Q8)景表法で禁止されている不当な表示であると指摘されたケースはどうやったら調べられますか?

全国公正取引協議会連合会は、景表法違反行為等のデータベースを作成しています。

問題となった時期や業種別に検索をすることができますので、参考となるケースをお探しの方は利用されるとよいかもしれません。

http://www.jfftc.org/ihanDB/index.html

(最終訪問:2016/4/13)

(Q7)景表法で禁止されている行為:その他誤認されるおそれのある表示とはなんですか?

優良誤認表示や有利誤認表示のほかにも、商品やサービスについて、お客さんに誤解されるおそれがある表示をしてはならないとされています(法第5条第3項)。

経済社会は複雑なので、優良誤認表示や有利誤認表示を禁じるだけでは不十分な場合が考えられます。そのような場合、一般の消費者に誤認されるおそれがある表示を特に指定して、個別にそのような表示を禁じているのです。

現在、景表法に基づいて①無果汁の清涼飲料水等についての表示、②商品の原産国に関する不当な表示、③消費者信用の融資費用に関する不当な表示、④不動産のおとり広告に関する表示、⑤おとり広告に関する表示、⑥有料老人ホームに関する不当な表示の6つの類型が定められています。

  • 無果汁の清涼飲料水等についての不当な表示

無果汁・無果肉又は果汁5%未満の清涼飲料水、乳飲料類、アイスクリームなどについて、「無果汁・無果肉」であること、果汁・果肉の割合(%) を明瞭に記載しない場合、以下の表示は不当表示となります。
◦果実名を用いた商品名や説明文の表示
◦果実の絵、写真、図案の表示
◦果汁・果肉と似た色、香り、味(=表示)

  • 商品の原産国に関する不当な表示

原産国がどこか一般消費者には簡単には分からない場合に、次のような表示をすると不当表示になります。
◦原産国以外の国名、地名、国旗等の表示
◦原産国以外の国の事業者、デザイナー名、商標などの表示
◦国内産の商品について文字表示の全部又は主要部分が外国の文字で示されている表示
◦外国産商品について文字表示の全部又は主要部分が和文で示されている表示

  • 消費者信用の融資費用に関する不当な表示

消費者金融等の融資に関する費用について、実質的な年率が簡単にわかるように書いていない場合、例えば融資費用の金額を表示することなどは不当表示になります。

  • 不動産のおとり広告に関する不当な表示

実在せず、取引ができない不動産を広告に載せたりすることは不当表示になります。

  • おとり広告に関する不当な表示

広告に掲載されている商品が実はごく少数しか用意されていないのに、そのことが明示されていない場合等が不当表示になります。

  • 有料老人ホームに関する不当な表示

例えば、夜間における最小の介護職員や看護師の数など、介護職員等の数がはっきりと書いていない広告は不当な表示になります。

(Q6)景表法で禁止されている行為:優良誤認や有利誤認で出てくる「著しく」とはどういう意味ですか?

この記事をごらんの皆さんの中には、優良誤認や有利誤認のところで「著しく」という言葉に疑問をもった方がいらっしゃるかもしれません。
実際のものより「著しく優良であると示す表示」が不当表示として禁止されるなら、「著しく」なければ不当表示にならないのではないかと思われた方、実はそのとおりなのです。

広告、宣伝には、多少なりとも誇張・誇大が含まれるのはむしろ当然であり、事実だけを伝えていては広告、宣伝の効果は上がりません。そこで、誇張の程度が「著しい」場合に限って、これを禁止しているのが景表法なのです。

それでは、「著しい」かどうかはどのように判断すればよいのでしょう。

この点について、明確な基準があるわけではありません。
例えば、優良誤認の記事であげた「走行距離1万kmと表示していたが、実は走行距離15万km」の例についてですが、走行距離を15分の1にしているわけですから、社会常識から考えて、これは「著しく」優良であると示す表示をしたといえるでしょう。しかし、これが「走行距離14万9999kmと表示していたが、実は走行距離15万km」だったら、「著しく」優良であると示す表示をしたとはいえないのではないでしょうか。それでは、走行距離の表示を1万3000kmにしたらどうか、1万kmにしたらどうかと考えていくと、やはりある時点から、「著しく」優良であると示す表示をしたと評価されることになると思います。ただ、それがどこなのかを一律に示すことは困難であり、「著しい」かどうかは、社会通念にしたがってケースごとに判断していくほかないように思われます。

(Q5)景表法で禁止されている行為:禁止される有利誤認とは何ですか?

有利誤認(法第5条第2項)には、2つのケースがあります。

実際のものよりも著しく有利であると誤認されるケース

商品・サービスの価格その他の取引条件について、実際のものよりも著しく有利であるとお客さんに誤認される表示は不当表示となります。

  • 「外貨定期預金 今なら年利○パーセント」と表示していたが、実は手数料が引かれる前の利率が表示されており、手数料を引くと実際の受取額は表示の5分の1
  • 「引越し料金、今なら6割引!」と表示していたが、実は常に6割引とされる料金
  • 「お徳用、12枚セットの洋食器」と表示していたが、実はばら売りと同じ値段
  • エアコンの販促キャンペーンの景品について「当選本数○○本」と表示していたが、実は当選本数はもっと少ない

競争業者のものよりも著しく有利であると誤認されるケース

実際はそうではないのに、商品・サービスの価格や取引条件などが、競争業者のものよりも著しく有利であるとお客さんに誤認される表示は不当表示となります。

  • 「地域一番の安さ」と新聞折込チラシに表示したが、実は価格調査をしておらず、安いかどうかわからない
  • 「他社商品の2倍の内容量」と表示していたが、実は他社と同程度の内容量
  • 「手数料なし、24回分割払いで買えるのは当社だけ」と表示していたが、実は他社も同様の条件で商品を販売

ほかにも・・・

販売している商品の一部だけが4割引なのに、「全品4割引セール」などと表示したケース
菓子類の包装について、内容量を多く見せるための過大包装などが有利誤認とされています。
また、不当表示の典型例として、架空のメーカーの希望小売価格を表示したり、実際に販売したことがない価格を「通常販売価格」と表示して、その価格からの割引率を表示したりして自社の販売価格を安く見せかける、いわゆる二重価格表示があります。
このような価格表示は、消費者による適切な商品選択を妨げることから、典型的な不当表示とされています。

 

(Q4)景表法で禁止されている行為:禁止される優良誤認とは何ですか?

優良誤認(法第5条第1項)には、2つのケースがあります。

実際のものよりも著しく優良であると示すケースと競争業者のものよりも著しく優良であると示すケースです。簡単に言うと、実際は違うのに、商品やサービスがとてもいいものであるとか、ライバルの会社よりもとてもいいものであるとの内容の表示をすることが優良誤認表示です。

実際のものよりも著しく優良であると示すケース

商品・サービスの品質や規格、その他の内容について、実際のものよりも著しく優良であるとお客さんにに誤解させる表示は不当表示となります。

  • 「松坂牛」と表示していたが、実は輸入牛肉
  • 「天然ダイヤ」と表示していたが実はガラス
  • 「果汁80パーセント」と表示していたが、実は無果汁
  • 「走行距離1万km」と表示していたが、実は15万km

競争業者のものよりも著しく優良であると示すケース

実際はそうではないのに、商品・サービスの品質や規格などが競争業者のものよりも著しく優良であるとお客さんに誤解させる表示は不当表示となります。

  • 「世界で当社だけが持つ技術です。」と表示していたが、実は他社も同じ技術あり
  • 「○○試験合格率No1」と表示していたが、実は競合他社と違う方法で集計
  • 「栄養成分が他社の2倍」と表示していたが、実は他社と同量の成分
  • 「他社比、解像度3倍」と表示していたが、実は根拠なし

ほかにも・・・

利用者の体験談やアンケートを用いて、食事制限することなく痩身効果が得られるような表示をしていたが、実際にはその内容はねつ造されたものであり、効果の実証データも根拠のないものであったケース
超音波によってゴキブリやネズミを駆除すると表示していたが、実際にはそのような効能は認められず、表示の根拠もなかったケースなどが優良誤認とされています。

 

(Q3)景表法で禁止されている行為:「表示」とは具体的にどんなものですか?

例えば、チラシ、パンフレットや説明書、ポスターや看板、新聞や雑誌に掲載された広告、テレビCM、ウェブサイト等、さまざまな媒体に掲載された広告や表示がすべて、「表示」(法第2条第4項)に含まれます。

「表示」という言葉からは、少し想像しにくいかもしれませんが、電話や訪問でお客さんに商品を説明するときのセールストーク、実演販売のときのトークもすべて「表示」に含まれます。」

「表示」は広い概念なので、お客さんに商品やサービスを売るための手段のほぼすべてが「表示」に当たり得ます。