(Q23)課徴金額の減額:「報告」により課徴金を減額してもらうための条件はなんですか?

事業者は、商品やサービスの品質が実際よりもとてもよいとか(優良誤認、詳しくはQ4をごらんください。)、価格が実際よりもお客さんにとても有利である(有利誤認、詳しくはQ5をご覧ください。)と誤解されるような表示をして商品やサービスを販売した場合、その商品やサービスの売上高の3パーセント分の課徴金が課されます(なお、その額が150万円に満たない場合、課徴金は課せられません。)

しかし、これからご説明する一定の条件がクリアできれば、この金額が半額になります。
第1の条件は、優良誤認や有利誤認といった景表法上、問題のある表示をした事業者が、消費者庁長官にそのような問題のある表示をしたことを報告することです。イメージとしては、自首のようなものです。
なお、細かい点ですが、課徴金の減額が認められるためには、代表権を持った役員が「報告」をしなければなりません。代表権のない役員や従業員から報告しても、課徴金の減額に必要な「報告」にはあたりませんから、問題がある表示をしていたことを報告するときは、代表権のある方からするようにしてください。

第2の条件は、行政による調査が始まる前に「報告」することです。
行政庁が問題のある表示を見つけて調査を始めた後に「報告」をしても、課徴金は半額になりませんよ、ということです。課徴金を半額にする制度は、問題のある表示をしている事業者に対し、自分から「報告」をすれば、「課徴金が軽くなりますよ」というインセンティブを与えることで、問題のある表示をしていたことを事業者自らに報告させ、行政庁による調査の手間を省くことで、効率的に問題のある表示をやめさせようとするものです。
ですから、行政庁が問題のある表示を発見し、調査を始めてしまったものについては、行政庁の手間が省ける程度が小さく、いまさら事業者にインセンティブを与える必要が乏しいので、課徴金の減額は認められないのです。

(Q22)課徴金額の減額:課徴金を減額してもらうことはできますか?

できます。
課徴金には減額の制度が大きく分けて2つあります。
ひとつは、不当な表示をしていたことを事業者が自ら「報告」することで課徴金が半分になる制度、もうひとつが不当な表示をしていた商品を購入したお客さんに一定の金額を返金することで、課徴金が減額される制度です。

(Q21)課徴金の額の算定:売上げに掛ける割合が3パーセントと一律であることは分かりましたが、どうして3パーセントなのですか。その根拠を教えてください。

課徴金の制度に関する法律を立案した方々によると、この3パーセントは、消費者庁が設置された平成21年以降、不当な表示が行なわれ、措置命令が出された事案での事業者の売上高営業利益率を計算したところ、その中央値が3パーセントであったため、この数字を採用したとのことです。

売上高営業利益率とは、営業利益を売上高で割ったものですが、経済産業省のホームページ[1]を見ますと、少し古いデータですが、中小企業、大企業とも4%程度の数字となっています。売上高営業利益率は、一般的に、小売業者では低く、不動産や医薬品会社では比較的高いとされており、課徴金の金額を計算するのに、一律3パーセントとすることは、公平ではないようにも思われますが、業種別に割合を変えることは煩雑であり、行政の効率を考えると一律に3パーセントと決めたことも合理性があるものと思われます。

なお、小売業界は、売上高営業利益率が低い業界であるといわれており、不当な表示が行なわれた商品の売上高の3パーセントの課徴金を支払うと、手元に残る利益はほとんどないか、場合によってはマイナスとなる可能性もあります。

不当な表示で得た収益はすべて課徴金として支払わせ、事業者に利益を残さないようにしようという法律の意図が3パーセントという数字からは明らかになっています。

(Q20)課徴金の額の算定:課徴金の額は、売上げに3パーセントを掛けて計算できるようですが、3パーセントという割合をもっと低くしてもらうことはできませんか?

できません。

たしかに、「不正な表示」が悪質であればあるほど高い割合、悪質でなければ低い割合とするという考え方もありえます。
しかし、「不正な表示」がどれだけ悪質かを判断するには、時間がかかりますし、行政庁が個別に決めた割合に不満や不公平感を持つ事業者が必ず出てくることになります。
そこで、景表法は、売上げに掛ける割合を3パーセントと一律にすることで、すばやく、簡単に、課徴金の金額を計算できるようにしたのです。

(Q19)課徴金の額の算定:不正な表示をした商品を購入したお客さんが商品を返品しましたが、その場合、売上金額はどのように計算されますか?

有利誤認表示や優良誤認表示をした商品を買ったお客さんがその商品を
返品した場合、その商品の金額を売上げ金額から控除することができます。

(Q18)課徴金の額の算定:メーカーが不正な表示をした商品を小売業者に販売し、小売業者がさらにその商品を小売りした場合、売上げの金額はどのようにして決められるのですか。

例えば、衣料品のメーカーAが「綿100パーセント」と表示した、実は「ポリエステル100パーセント」の商品を小売業者Bに納品し、小売業者Bがこれを小売した場合、衣料品メーカーAにとっての売上げは、衣料品メーカーAが小売業者Bに売却した商品の金額になります。そして、小売業者Bの売上げは、小売業者Bがお客さんに販売した商品の金額になります。

(Q17)課徴金の額の算定:課徴金の金額はどのように計算されますか?

課徴金の金額は、問題となる表示をした商品やサービスの売上げの3パーセントに、問題の表示をしていた期間(最大3年)を掛けて計算されます。

例えば、小売業者がいつも5万円で売っていた商品を「今だけ優待価格5万円」と表示して、3年間にわたって、毎年3億円分販売していたとします。そうすると、3億円の3パーセントに3年を掛けた、合計900万円が課徴金の額になります。

(Q16)課徴金の対象となる行為:どうして課徴金が課されない場合があるのですか?

商品やサービスの品質が実際よりもとてもよいとか(優良誤認)、価格が実際よりもお客さんにとても有利である(有利誤認)と誤解されるような表示をして商品やサービスを販売したとしても、その商品やサービスの売上高の3パーセントが150万円に満たない場合、課徴金は課せられません。

これには2つの理由があります。
1点目が行政の都合です。
金額が小さい案件についてまで課徴金を支払わせることになると、件数が多くなりすぎ、行政側の負担が大きくなってしまいます。場合によっては、行政側の人件費のほうが高くついてしまうかもしれません。ですから、150万円という一定の金額を定め、それ以上の案件についてだけ、課徴金を支払わせることにしたわけです。
2点目が、問題のある表示をしたとしても、その規模が小さければ消費生活への影響が小さいと考えられる点です。100億円の売上げがある商品やサービスに問題がある表示をした場合と、1000万円の売上げしかない商品やサービスに問題がある表示をした場合では、消費者に与える影響が大きく違います。影響が小さいものについては、課徴金を払わせなくても、消費生活への影響が小さいからいいだろうというと法律を作る側が考えたということです。

このような理由から、優良誤認表示や有利誤認表示をした商品の売上高の3パーセントが150万円を超えない場合には、言い換えれば、問題のある商品の売上高が5000万円を超えない場合には、課徴金を支払う必要はないということになります。もっとも、課徴金を支払わなくてよいとしても、措置命令等が出されることがありますので、まったくの無罪放免というわけではないことにご注意ください。

 

 

(Q15)課徴金の対象となる行為:不当表示であると知っていながら商品・サービスを販売していても課徴金を払わなくていい場合があると聞きましたが、本当ですか。

ほんとうです。

事業者が、商品やサービスの品質が実際よりもとてもよいと誤解されるような表示等(優良誤認表示)をしたり、商品やサービスの価格が実際よりもとても有利であると誤解されるような表示等(有利誤認表示)をしたりすると、課徴金を支払わなければならない可能性があります。例えば、「純金のネックレス」と表示した商品が実は「金の含有率が40パーセント」だった場合、この表示は優良誤認表示になりますし、「東京で一番安い」と表示しているが、実は競合店の価格をまったく調査していなかった場合、この表示は有利誤認表示になります。

そして、課徴金の額は、優良誤認表示や有利誤認表示をした商品やサービスの売上高の3パーセントですから、問題の表示をした商品の売上げが3000万円なら、90万円、1億円なら、300万円が課徴金の金額になりそうです。

しかし、景表法は、このようにして計算した金額が150万円よりも少ない場合、課徴金を課すことができないと定めています。要は、景表法上、問題がある表示をしたとしても、金額を計算したら150万円に満たない場合、課徴金はなしになるということです。

(Q14)課徴金の対象となる行為:不当な表示であると知らずに商品やサービスを販売していた場合は、必ず課徴金を払わなければいけないのですか。

払わなくてよい場合もあります。

前の記事では、「払わなければならない可能性がある」と言っておきながら、ここでは「払わなくてよい場合もある」、いったいどちらなのかと思われると思います。
ここが少し複雑なところなのですが、次の厳しい3つの条件をすべてクリアした場合には、課徴金が課せられません。

  • 問題となった表示が不当表示であることを知らなかったこと
  • ある程度の注意をしていたと認められること
  • 不当表示をしていた全期間、①と②の要件を満たすこと

それでは、これから、これらの条件をひとつひとつ見ていきましょう。
まず、「①問題となった表示が不当表示であることを知らなかったこと」ですが、これは、事業者が行っていた表示が「不当表示」、具体的には、「優良誤認表示」や「有利誤認表示」であることを知らなかったということです。
ここで、「優良誤認表示」とは、商品やサービスの品質等が実際より著しく優れていると勘違いさせる表示等であり、「有利誤認表示」とは、商品やサービスの価格や取引条件等が実際よりも著しく有利であると勘違いさせる表示等です。和牛でないのに和牛と表示するのが「優良誤認表示」の典型例、いつも1万円なのに「今だけ半額1万円」などと表示するのが有利誤認の典型例でしたね。

次に、「②ある程度の注意をしていたと認められること」ですが、例えば、小売業者は、メーカーから提供される書類を見るなどして、おかしい点がないかどうか自ら確認していた場合には、この条件がクリアされたといえるでしょう。

Q13の例をもう一度みていただきたいのですが、この例では、小売業者Aは、卸売業者Bの説明を鵜呑みにしていますし、商品の品質も「カシミヤ100パーセント」と「ポリエステル100パーセント」では大きく違うはずなのに、なんの疑問も抱かずにそのままお客さんに販売しています。この例では、やはり「②ある程度の注意をしていた」とは認められないでしょう。

最後に、「③不当表示をしていた全期間、①と②の要件を満たすこと」についてですが、①事業者が不当表示の途中で、表示が不当であると気づいてしまっていたり、②不当表示の途中で注意をしなくなってしまった場合には、課徴金の支払いを免れないことになります。

例えば、Q13の例で、「ポリエステル100パーセント」のセーターを「カシミヤ100パーセント」と表示して販売していた小売業者Aが、顧客からのクレームをきっかけにセーターが「カシミヤ100パーセント」ではないと知ったとします。しかし、その後も「カシミヤ100パーセント」という表示を改めずに販売を継続していたとすると、販売の全期間の売上げ3パーセントの課徴金を支払わなければなりません。「カシミヤ100パーセント」であると信じて販売していた期間についても課徴金を支払わなければならなくなりますから、表示が不当表示に当たると知った時点で販売をやめるのがよいと思われます。