(Q32)課徴金額の減額:お客さんにはいくら返金すればよいのですか。商品価格の全額でしょうか。

お客さんに返金する金額については、事業者が自由に決めることができます。

ただ、お客さんへの返金額が「商品・サービスの購入額の3パーセント未満」であった場合には、このような返金は課徴金減額の対象にはなりません。このような小額の返金については、手間と時間ばかりがかかるため、課徴金の減額というメリットを与えないこととしたのです。

(Q31)課徴金額の減額:返金の対象となるお客さんが、返金の申出をしてきました。商品の返却を条件にして返金をすることはできますか?

できますが、返金した金額は、課徴金減額の対象になりません。

課徴金の減額が認められるためには、返金の対象となるお客さんの申出があれば、無条件に返金をすることが必要です。

(Q30)課徴金額の減額:返金を申し出たお客さんにしか返金してはいけないのですか?

申出をしたお客さんに対する返金だけが、課徴金減額の対象となります。

もし、申出をしないお客さんに返金をしたとしても、課徴金は全く減額されません。これは、返金を受けるかどうかはお客さんが自由に判断すべきことだからです。ですから、例えば、問題のある表示をした通信販売業者が、お客さんの名簿を利用して、いっせいに返金をしたとしても、このような返金はお客さんの申出に基づかないため、課徴金減額の対象になりません。

(Q29)課徴金額の減額:返金の対象となるのはどのようなお客さんですか?

返金の対象になるのは、不当な表示をした商品やサービスを購入した一般のお客さんです。
どのようなお客さんが返金の対象になるかについては、政令で定められています。具体的には、課徴金の対象となる期間内に、不当な表示がされた商品の引渡しを受けたり、サービスを受けたりしたお客さんが返金の対象となります。

もちろん、お客さんが課徴金の対象期間内に商品を購入・サービスを受けたというだけでは足りず、例えば、商品の領収書やサービスに関する契約書等の資料がなければ、返金の対象のお客さんとは認められません。返金の対象となるお客さんについては、ある程度これを厳格に決めないと、例えば事業者が自分の関係者に対し、多額の返金をして、課徴金の減額を受けるなどというずるいやり方が横行してしまうかもしれません。そのため、返金の対象となるお客さんかどうかは、領収書等の資料で決めることにしたのです。

(Q28)課徴金額の減額:お客さんに返金するための手続きを説明してください。

お客さんに返金するための手続きは複雑です。

まず、第一の条件として、①政令で決められたお客さんに対し、②そのお客さんが返金を申し出た場合に、③購入額の3パーセント以上の金額を、④現金か銀行振り込みの方法で返金する必要があります。

第2の条件として、どのようにして返金をするかの計画を立てて、それを消費者庁に提出し、認定を受けなければなりません。この計画を「実施予定返金措置計画」といいますが、この計画については、その記載内容やいつまでに返金を行なうかなどについて、たくさんの決まりごとがあります。

(Q27)課徴金額の減額:どうしてお客さんに返金することで課徴金の額を減らす制度ができたのですか?

この制度は、事業者とお客さんの双方にメリットがあります。

 

まず、企業側のメリットですが、返金をすることにより課徴金を減らしてもらえますし、お客さんに返金をしたということで、ブランドイメージも維持できるかもしれません。
次に、お客さんのメリットですが、事業者側から自主的に返金をしてもらうことで、被害の回復が簡単にできます。

 

もし、このような制度がなければ、事業者は自主的には返金をしないかもしれません。そうすると、消費者は、最終的には訴訟により、事業者からお金を取り戻すしかありません。しかし、不当表示の案件では、①不当な表示があったから商品/サービスを購入したという因果関係を立証するのが難しいといわれています。

 

また、②お客さんに生じた損害額がいくらなのかを決めることも簡単ではありません。そもそも、③損害額自体が小額なので、訴訟でお金を取り戻そうとしても、費用倒れに終わってしまう可能性も高いのです。結局、不当表示の案件では、訴訟により事業者からお金を取り戻すのは事実上、困難なのです。

 

課徴金の減額制度が設けられたことにより、事業者が自主的に返金をするようになれば、消費者は特段の負担なく被害を回復することができます。このような効果を狙ったのが、返金による課徴金減免の制度なのです。

 

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(Q26)課徴金額の減額:お客さんに返金すると課徴金の額を減らしてもらえるのですか?

複雑な手続きが必要となりますが、返金した額に応じて、課徴金の額が減額されます。
なお、返金に伴う様々なコストを考えると、返金したことにより減額される課徴金の額より、返金に必要な費用のほうが大きくなる場合もあり得ます。ですから、支出する金額を減らしたいという観点からすれば、お客さんへの返金が合理的ではない場合もあり得ます。
しかし、企業イメージの観点からすると、問題がある表示をしたことを認めて謝罪し、返金も行なった企業と、返金をせず、単に課徴金を支払ったに留まる企業とでは、消費者に与える印象に相当の違いが生じるように思われます。
課徴金のみを支払うという選択をするか、顧客への返金も視野に入れるかは、経営的な判断となりますが、企業のブランドイメージの維持のためには、積極的に返金を行うという選択肢も十分検討に値するものと思われます。

(Q25)課徴金額の減額:不当な表示をしていたことを「報告」して課徴金が半分になった結果、その金額が90万円になりました。Q15では、課徴金の額が150万円よりも少ないときには、課徴金を支払わなくてよいと書いてあるので、この場合も課徴金を払わなくてよいのですか?

残念ながら、課徴金を支払う必要があります。

Q15でご説明したとおり、問題のある表示をしていた商品やサービスの売上高の3パーセントが150万円に満たない場合、課徴金は課せられません。
しかし、150万円に満たないかどうかは、「報告」をしたことで減額される前の金額で判断されますから、減額の結果、課徴金の金額が90万円になったとしても、課徴金を支払わなければならないのです。

(Q24)課徴金額の減額:わざと不当な表示をしていた場合でも「報告」すれば課徴金を減額してもらえますか?

例えば、健康食品の小売業者の代表が商品の売上げを上げるため、本当は他社と同じくらいの栄養成分しか入っていないのに、わざと「栄養成分が他社の4倍!」などとパッケージに記載した飲料を販売していたとします。ところがその後、代表者が心変わりし、消費者庁長官に対し、このような問題のある表示をしていたことを報告した場合、課徴金の減額をしてもらえるのでしょうか。

結論から言うと、このような場合でも、一定の条件がクリアできれば、問題なく課徴金の減額をしてもらうことができます。景表法では、問題がある表示がわざとされていたか、それともミスで行なわれていたかに関係なく、課徴金の減額を認めているのです。皆さんの中には、わざと問題のある表示をしたのだから、減額をしなくてもいいのではないかと思われた方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、景表法の目的は、そもそも、消費者が問題のある表示に惑わされて商品やサービスを選択してしまうことがないようにすることですから、問題の表示が結果として早く解消されるのであれば、事業者がわざと問題の表示をしたのか、ミスでしたのかは重要ではないのです。
 

(Q23)課徴金額の減額:「報告」により課徴金を減額してもらうための条件はなんですか?

事業者は、商品やサービスの品質が実際よりもとてもよいとか(優良誤認、詳しくはQ4をごらんください。)、価格が実際よりもお客さんにとても有利である(有利誤認、詳しくはQ5をご覧ください。)と誤解されるような表示をして商品やサービスを販売した場合、その商品やサービスの売上高の3パーセント分の課徴金が課されます(なお、その額が150万円に満たない場合、課徴金は課せられません。)

しかし、これからご説明する一定の条件がクリアできれば、この金額が半額になります。
第1の条件は、優良誤認や有利誤認といった景表法上、問題のある表示をした事業者が、消費者庁長官にそのような問題のある表示をしたことを報告することです。イメージとしては、自首のようなものです。
なお、細かい点ですが、課徴金の減額が認められるためには、代表権を持った役員が「報告」をしなければなりません。代表権のない役員や従業員から報告しても、課徴金の減額に必要な「報告」にはあたりませんから、問題がある表示をしていたことを報告するときは、代表権のある方からするようにしてください。

第2の条件は、行政による調査が始まる前に「報告」することです。
行政庁が問題のある表示を見つけて調査を始めた後に「報告」をしても、課徴金は半額になりませんよ、ということです。課徴金を半額にする制度は、問題のある表示をしている事業者に対し、自分から「報告」をすれば、「課徴金が軽くなりますよ」というインセンティブを与えることで、問題のある表示をしていたことを事業者自らに報告させ、行政庁による調査の手間を省くことで、効率的に問題のある表示をやめさせようとするものです。
ですから、行政庁が問題のある表示を発見し、調査を始めてしまったものについては、行政庁の手間が省ける程度が小さく、いまさら事業者にインセンティブを与える必要が乏しいので、課徴金の減額は認められないのです。