「オートファジー効果」を広告で謳うことはできる?

化粧品の広告や紹介で「オートファジー」という言葉を聞いたことはありませんか?

 

「オートファジー」とはどんな意味を持つのか

またそれを広告にうたうことは可能なのか

NGの場合どんな法律に抵触するのか

 

今回は、近年注目を集めている「オートファジー」について、このような点について解説します。

 

「オートファジー」とは?

 

オートファジーとは、細胞内の不要なタンパク質を分解し、浄化する機能のことを言います。

「オートファジー」はAutoa(自ら) Phagy(食べる)、自食作用と訳すことができ、食べたものを体内でリサイクルするという意味合いを含みます。

 

オートファジーは加齢とともに機能が低下することから、肌老化の原因につながると言われています。

逆に言えば、オートファジーの低下がおだやかになると、若々しい肌見せを保つことに期待ができます。そのため化粧品業界は、この「オートファジー」に着目し研究をしているメーカーが多く存在します。

 

食細胞のキャラクター

「オートファジー」の効果は広告で謳える?

 

「オートファジー」に着目し、化粧品の開発や販売することには何ら問題はありません。

しかし「オートファジー効果があるスキンケア」と広告に載せるのは、可能でしょうか?

 

答えはNGです。

 

「オートファジー効果」や「オートファジー機能を活性化する」などの効果を記載すると、アンチエイジングや肌再生という意味合いになるため、広告でうたうことはできません。

 

「オートファジー」は薬機法に抵触する表現

 

「オートファジー」の効果を広告に載せるのは、どのような法律に抵触するのでしょうか?

「オートファジー効果」や「オートファジー機能を活性化する」などと広告に書いた場合は、薬機法に違反する表現となります。

薬機法では化粧品の効能をPRするルールとして、うたえる内容が56項目と決まっているからです。

 

オートファジーが持つ効果「細胞内の不要なタンパク質を分解し、浄化する機能」は一般化粧品の効能56項目から逸脱した表現になります。特に肌再生やアンチエイジングなどは、一発NGになるため、「オートファジー効果」も同じく不可と言えるでしょう。

 

「オートファジーについて研究を重ねた」「オートファジーに着目した」など、直接肌効果に結びつかない表現法が望ましいと言えます。

 

自社の商品・サービスにおいて、「オートファジー」と書きたいけれど、どう書けば薬機法に違反するする可能性が少ないのかわからない。

そんなお悩みがございましたら、一度当事務所にご相談ください。

「エイジングケア」という言葉は広告に使えるか?(令和5年3月最新版)

 

「アンチエイジング」と「エイジングケア」

化粧品や健康食品、美容器具などの老化防止や抗加齢を意味する表現として、「アンチエイジング」という言葉があります。

エイジング(aging)が「加齢」や「老化」というように年をとること、アンチ(anti)は「抵抗」を表しており、アンチエイジング(anti-aging)とは「本来、年齢を重ねていくときの流れに抵抗して、いつまでも若々しくいたい」という人々の思いに訴求するキーワードといえるでしょう。
化粧品や健康食品の訴求として同様によく使われる「エイジングケア」
ここではこの広告表現について説明します。

 

アンチエイジング

「アンチエイジング」は、化粧品や健康食品の広告でよく見かける表現ですが、実際のところ、いずれの商材においても標榜することは認められていません。これらは、化粧品や健康食品で標榜することを認められた効能効果ではないからです。

 

エイジングケア

この「アンチエイジング」と同様、よく見る表現に「エイジングケア」があります。そして、その多くに※がつけられ、「年齢に応じたケアのこと」と注記がという表現があります。あまりに多く見かけますし、※で注意が書かれているので、「アンチエイジング」はNGでも、「エイジングケア」なら標榜してよいと理解している方も多いですが、ここでも注意が必要です。
たとえば、日本化粧品工業連合会が発表している化粧品等の適正広告ガイドラインでは、化粧品の広告において認められる「エイジングケア」という表現について、
年齢に応じたケアの表現であること、
化粧品等の効能効果の範囲内であること、
の2つの条件を満たすことを求めています。

 

「エイジングケア」使用上の注意点

「①年齢に応じたケアの表現であること」、すなわち、現在の肌状態を維持することまでしか認められていません。よく、実年齢よりも10歳若返る肌へ、などという表記もありますが、これは維持とはいえません。
また、「②化粧品等の効能効果の範囲内であること」も必要なため、化粧品の広告で認められている56の効能効果の範囲内でしか記載することができません。すなわち、「エイジングケア」という言葉そのものが、効能効果として認められているわけではなく、あくまでもケア(お手入れ)を指す表現でしかないのです。

そのため、化粧品の広告において「エイジングケア」という表現を使用する際、「若返るためのケア」と誤解を与えてしまう可能性があります。その前後や注意書きにおいて、「年齢を重ねた肌にうるおいを与えること」などと定義を明記しておき、事実に基づいて表記する必要があります。

つまり、

 

アンチエイジング → エイジング(加齢)に逆行する意味合いがあり、「若返り」を暗示しますので記載できません。

エイジングケア → 定義を明確にしなければ、若返り効果を暗示させ、美顔器に認めれる効能効果の範囲を逸脱する恐れがあります。

「エイジングケア」という表現を広告で使用する際には、このような広告規制に注意しながら使用する必要があるのです。

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【弁護士解説】糖質カットを謳った炊飯器の事案【手続きはどうなる?】

1 はじめに

令和5年3月15日に独立行政法人国民生活センターが、『糖質を低減できるとうたった電気炊飯器の実際』と題する報道発表資料を公表しました。そして、炊飯器の広告と実際の性能とが異なっている物があることを指摘しており、景表法に違反する(優良誤認)恐れがあると報道されています。

 

「糖質カット」などと広告されると、健康やダイエットに気を使っている人の目を引きます。また、実際に、糖尿病等で糖質制限の食事をしている人からすれば、非常に有用な商品に映ると考えられます。実際、国民生活センターには、血糖値が変わらないといった訴えや糖尿病の人が使って大丈夫なのかといった相談が寄せられていたようです。

 

今回の報道発表資料は、消費者への情報提供、事業者への要望、行政への要望といったことが記載されていますが、仮に、消費者庁が、優良誤認の可能性があると考え、措置命令・課徴金納付命令を出そうと考えた場合、どのような流れで手続が進むのでしょうか。

 

2 手続の流れ

以下の図は、消費者庁のHPに載っている、景表法違反の調査の手順です。実際の調査は、消費者庁のみならず、都道府県、公正取引委員会が関与することもあります。ちなみに、都道府県は、措置命令を出すことはできますが、課徴金納付命令を出すことはできません。ですので、課徴金納付命令を出す必要がある場合には、消費者庁が主体となって動く必要があります。

 

また、上記の図を見ると分かるとおり、措置命令を出すための手続と課徴金納付命令を出すための手続は分かれており、課徴金納付命令の前に措置命令が出るという流れになっています。実際にも、措置命令が出された後、しばらく時間が経ってから、課徴金納付命令が出ている事案があります。

調査が行われ(実際には、消費者庁等が事業者に対して、資料や広告作成のフロー等の報告をするよう求めます。)、行政指導で対応できる事案であれば、行政指導をし、事業者に改善してもらうということで終わります。行政指導では終わらず、措置命令や課徴金納付命令に相当する事案の場合、更に、手続が進んでいくこととなります。

措置命令と課徴金納付命令は、別の行政処分となりますので、それぞれ弁明の機会が与えられています。つまり、不利益処分を受けるので、事業者に十分に反論の機会を設けているということになります。

 

3 不実証広告

優良誤認の手続においては、不実証広告という優良誤認特有の制度が設けられています。措置命令に関する不実証広告は景表法7条2項、課徴金納付命令に関する不実証広告は景表法8条3項に定められています。

 

不実証広告は、消費者庁等が事業者に対し、「当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めること」ができる制度のことです。そして、事業者が合理的な根拠を示すことができなかった場合、措置命令の場合には優良誤認とみなされ、課徴金納付命令の場合には優良誤認と推定されます。なお、みなされるというのは争う余地がなくなることを意味し、推定の場合には争う余地があるものの覆すのは大変です。

不実証広告における合理的根拠については、①提出された資料が客観的に実証された内容のものであること、②表示された効果、性能と提出資料によって実証された内容が適切に対応していることといった要件を満たす必要があります。上記①については、試験・調査によって得られた結果や専門家等の見解又は学術文献を根拠とする必要があります。また、上記②については、例えば、試験結果と実際に使われる状況が異なっている場合には、要件を満たさないということになります。試験結果等や学術論文等は、実際の使用状況等と合致する必要があります。

 

4 最後に

今回、優良誤認の場合における措置命令や課徴金納付命令の手続の概要を説明しました。優良誤認の場合、不実証広告の制度がありますので、事業者が広告の裏付けとなる合理的な根拠を消費者庁等に示さなければなりません。広告を作成する際に、その根拠資料を準備することは一般的だと思いますが、根拠資料については、上記のとおり、客観的に実証された内容であることや当該内容と広告内容が合致しているかを十分に確認しておくことが重要でしょう。

 

有名アーティストのライブに係る優良誤認の事案

 令和5年2月15日、消費者庁が、コンサートの提供事業者3社の役務提供(サービスの提供)の表示について、景品表示法違反(優良誤認)と認められることから、措置命令を出しました。アーティストのライブに関連するものですが、今回、優良誤認と認められたのは初めてであり、新聞等の多くの媒体でも扱われています。

どのような表示に対して措置命令が出されたか

さて、では、どのような表示が問題になって措置命令が出たのでしょうか。

消費者庁のホームページを見ると、表示と実際の対応とで、次のような違いがあったようです。もちろん、SS席がアーティストに近い最も良い席で、S席、A席の順番にアーティストから遠い席になっていきます。

 

  【表示】

あたかも、SS席を購入すれば1階アリーナ席、S席を購入すれば1階スタンド席、また、A席を購入すればバルコニー席又は2階スタンド席で有名アーティストのライブを聞くことができるような表示をしていた。

※消費者庁「コンサートの提供事業者3社に対する景品表示法に基づく措置命令について」 の報道資料より

 

  【実際】

SS席を購入しても1階スタンド席でライブを聞くことになる場合があり、S席を購入しても主に1階スタンド席後方でしかライブを聞くことができず、かつ、バルコニー席又は2階スタンド席でライブを聞くことになる場合があり、また、A席を購入してもバルコニー席でライブを聞くことができず、かつ、主に2階スタンド席後方でしかライブを聞くことができないものであった。

 

消費者庁は、ライブ観覧のためのチケット販売の表示について、SS席というより良い席でライブを聞くことができると一般消費者に誤解させたということを理由として、優良誤認と判断したと考えられます。

なお、本来用意してあるSS席に対応するチケット数よりも多くのチケット数をSS席として売り出したことが原因であったと報道されているようです。

コメント解説

今回、有名アーティストのライブに関して、初めて景表法の適用(優良誤認、措置命令)がありました。

 

しかしながら、景表法の適用が初めてであったというだけで、景表法は商品の販売に係る表示のみならず、ライブ提供のようなサービスに係る表示も対象にしています。

消費者庁としては、一般消費者からの苦情や相談が多い事案について、法適用をするというスタンスをとっていますので、今回も、一般消費者からのクレームや苦情が多数あったものと思われます。

 

また、SS席の全てのチケットが売れてしまった後も、そのことを認識したうえで、コンサート提供事業者がSS席のチケット販売に係る表示をしていたとの一部の報道もあります。

仮に、これが事実だったとすると、消費者庁の立場からすれば、景表法のおとり広告として扱い、措置命令を出すこともできたはずです。

 

ここで、消費者庁がおとり広告と判断せずに、優良誤認と判断した明確な理由は分からないものの、理由としては2つ考え得るところです。

 

一つは、実態がおとり広告というよりは優良誤認と判断するのに適していた場合です。

そして、もう一つは、実態からすると、おとり広告、優良誤認のいずれでも判断できたが、敢えて、優良誤認と判断したという場合です。

 

ちなみに、おとり広告は課徴金納付命令の対象ではありませんが、優良誤認は課徴金納付命令の対象です。

仮に、消費者庁が、後者の考え方の下、敢えて優良誤認と判断したのであれば、今後、コンサート提供事業者に対し、課徴金納付命令が出る可能性があるでしょう。

 

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【令和4年12月5日改訂】健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項についての解説記事を掲載しました。

令和4年12月5日、消費者庁は健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項を公表しました。

この内容について、弁護士の解説を掲載しております。ぜひご覧ください。

弁護士による「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」はこちら

最近話題のCBDって?~今更聞けない話題の成分を弁護士が解説~

最近よく、美容、健康に関する製品で、CBD(カンナビジオール)が配合された製品を目にしたり、耳にしたりすることはありませんか?今回はこの、CBDについてお話をしたいと思います。中学高校と化学式に苦労し、「もうこの絵は見たくない」と思っている方もいらっしゃるかもしれませんが、お付き合いください。

 

CBDの効能効果と使用方法について

CBDとは次の化学式で表される大麻草などに含まれる成分のひとつで、抗不安、抗てんかん、神経保護、血管弛緩、抗けいれん、抗虚血、抗ガン、制吐、抗菌、抗糖尿、抗炎症、骨の成長促進等主に鎮静化作用を有するということで近年注目を集めている成分です。

 

 

このように多様な効能効果を有するCBDは、健康食品として販売されていることが多く、一方で皮膚に塗っても効果があるとして、化粧品としても販売されることもあり、日本における市場も拡大傾向にあります。

 

CBDとTHC

CBDとセットで必ずと言っても良い程耳にすることがあるのは、THC(テトラ・ヒドロ・カンナビノール)です。CBDとこのTHCは切っても切り離せない関係にあります。

 

THCは上の化学式で表されますが、CBDと同様に大麻草などに含まれる成分のひとつです。しかし、THCは正に大麻(マリファナ)の主成分で、精神作用と言われる中枢神経への影響が大きく、常習性も高いため、CBDとは異なりTHCが含まれる製品は大麻取締法等の法律で厳しく規制がされています。

また、CBDとTHCは同じ大麻草から抽出されますが、CBDは大麻草の種子等から抽出されるのに対し、THCは種子以外の花や葉、根等から抽出されます。そして、CBDが抽出される種子等に関しては日本の法律では規制の対象とされていません。

大麻草の種子の有名な使用例として挙げるとすれば、七味に含まれている麻の実が大麻草の種子に該当します。一方でTHCが抽出される部位は法律で規制の対象となっています。このようにTHCはその成分のみならず、原料までが規制されているのです。他方でCBDにはそのような精神作用はないため、規制の対象とはなっていないのです。

しかし、同じ大麻草から抽出されるTHCはCBD製品に混入することもあり、THCが混入したCBD製品は規制の対象になってしまうため、THCとCBDは切り離せない関係にあるのです。

 

CBDと輸入ビジネス

上記のとおり、CBDは大麻草から抽出される成分ですが、日本国内で栽培された大麻草から成分を抽出し、販売されている製品はありません。日本において、大麻草を栽培することについては、許可が必要となりますので、原料である大麻草から栽培して、CBDを抽出するというのは、今はまだ日本では行われていないのが現状です。

そのため、CBDの原料やCBD自体の入手は海外から輸入するのが主流となっていますが、輸入をする際にもTHCが問題となってきます。

 

すなわち、THCは上述したとおり、大麻取締法の範疇で規制される成分に該当します。そのため、CBD製品を輸入した際には、税関でTHCが含有されているか成分検査が行われることになります。CBD製品は、製法に応じて大きくアイソレイト、ブロードスペクトラム、フルスペクトラムと分類されていますが、アイソレイトとブロードスペクトラムは基本的にTHCフリー、フルスペクトラムはTHCを含有していることが前提となり、日本の法律と抵触するため、輸入は認められていません。

また、商品としては上記のように分類され、THCフリーを謳っていたとしても、現在輸入時には検査をされるため、THCが含有されるということになれば、その輸入しようとしているCBD製品は輸入できなくなることもあります。

 

さらに言えば、仮にTHCの含有検査の結果THCが含有されている、または、検査行われず輸入をできたとしても、後からTHCを含有しているということが発覚した場合、大麻取締法に反するとして、重い処罰を受ける可能性もありますので、十分な注意が必要となります。

 

現在でも、厚生局においてはCBD製品を輸入する際、事前に書類一式の提出を求める等事前の対策が行われたり、上記のように輸入時の検査等が課されたりする等してTHCの取り締まりを厳しくしています。

 

CBDと今後の規制

海外においてはCBDの有効性・有用性から、マーケットが急速に拡大する傾向しており、それと共に様々な商品が展開されているため、日本においても輸入をして、販売をし易い環境が醸成されつつあるという背景があります。

他方で上述してきたとおり、CBDにはTHCという規制対象となっている成分が含有されるリスクが伴います。

 

そのため、今後CBDにはより厳しい規制が敷かれる可能性があります。大麻取締法等改正にむけた検討会では必ずCBDの状況が触れられており、その有用性と共にTHCとの関係は常に議題に挙がっている状況です。

また、CBDの多様な効能効果から、海外では医薬品として用いられている例も少なくありません。日本においても、それだけの効能効果を有する成分である以上、医薬品として扱うべきだという意見も少なくありません。仮にもしCBDが医薬品として認定されるとすれば、現在健康食品や化粧品として扱われている商品が、医薬品の許認可なしでは扱えなくなることとなり、このような観点からも、引き続き規制の動向を注視していく必要があります。
 

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CBD商品でよくあるストレス解消、痛みの緩和、不眠症改善など、身体の機能を改善する表現や、効能効果を暗示する写真やイラストでの表現も薬機法違反の対象となりますので注意が必要です。
 

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弊所はその実績によりCBDに関するセミナーも健康博覧会で行うなど、美容健康業界に関するご相談や講演依頼を多くご依頼頂いている法律事務所でございます。
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全て弁護士がチェックしており、グレーな部分は行政へ確認を取ってからレポートをお戻ししております。

 

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大幸薬品「クレベリン」への措置命令に対する弁護士解説

消費者庁は4月15日、二酸化塩素ガスで「空間除菌」ができるとしていた「クレベリン」シリーズの置き型タイプの2商品を展開する「大幸薬品株式会社」(大阪府吹田市)に対し、空間浮遊のウイルス・除菌には効果を裏付ける根拠がなく、景品表示法違反(優良誤認)にあたるとして、措置命令を出しました。

 

 

同社の「クレベリン」シリーズについては、1月20日にも別商品「スティック ペンタイプ」「スプレー」など、4商品に対する措置命令が出されていましたが、同社は不服として「仮の差し止め申し立て」をしていました。しかしながら、4月13日、同社はこの措置命令の差し止めを求めた仮処分申し立てが東京高裁に退けられたと発表しました。

 

 

同社HPでは、今回の措置命令について「今後、措置命令の内容を精査した上で、適切な対応を検討いたします。当社商品をご愛顧いただいているお客様、お取引先様、および株主様をはじめとする関係者の皆様には、多大なご心配をおかけすることとなり、深くお詫び申し上げます」としています。

 

 

消費者庁の発表によると、今回の一連の流れは次のようになります。

根拠となる状況と広告表現が異なったことが問題

今回の措置命令において、裏付けとなる合理的な根拠を示すものと認められなかったという点について、当事務所で広告審査を担当している柳澤里衣弁護士は「今回消費者庁の発表を読む限り」と前置きした上で、「CMや広告で示されている環境、部屋の状況と、実験をしてエビデンスとして提出した環境は明らかに違う。同じ条件下でのエビデンスを取る必要があった」と解説。

「実際、広告や表示では、リビングや寝室、キッチンやトイレなどでの使用が表現されていますが、これらは実験環境と全く同じではありません」

 

 

 

 

柳澤弁護士はまた、「コロナ禍になってから、除菌や抗ウイルスなど消費者の関心やニーズにうったえかけるような商品が非常に多く出回っています。企業にとっては人々の健康のために開発・販売している商品でしょうし、消費者もそれを望んでいることではあっても、広告でうたっていいこととダメなことがあります。

今回の一件は、これからも同じような商品に対する措置が出るかもしれないという点と、こうしてニュースになることで、消費者側の意識も高めて 【広告表現には気を付けましょう】という注意喚起にもつながるのではないでしょうか」としています。

 

こんなエビデンスで、こんな広告表現をうたいたい、そのように思われた場合は、ぜひ専門家である当事務所にご相談ください。

携帯型空間除菌用品に対する行政指導から合理的根拠を考える

1 はじめに

消費者庁は、2020年5月15日、携帯型の空間除菌用品の販売業者5社に対して、優良誤認表示の恐れがあるとして行政指導を行ったことを発表し、一般消費者への注意喚起を行いました。

これらの商品は、首から下げるなど、身につけて使用するもので、二酸化炭素塩素を利用した空間除菌を標ぼうするものでした。なぜ、これらの商品の広告は、優良誤認表示の恐れがあると判断されてしまったのでしょうか。

2 表示には合理的根拠が必要

景品表示法においては、消費者庁などから優良誤認表示ではないかとの指摘を受けた場合、事業者の側で、その表示の合理的な根拠を提出しなければならないとされています。
もし、事業者が合理的な根拠を提出できなければ、その表示は優良誤認表示だとみなされてしまいます。これを不実証広告規制といいます。

本来、行政処分をするには、行政の側で法律違反があったことを証明しなければならないところ、その証明を事業者側でしなければならないとしているわけですので、事業者にとっては非常に厳しい仕組みとなっています。
そのため、事業者にとっては、何が合理的根拠になるのかを知っておくことは、極めて重要です。

3 実際に使用する状況での根拠が必要

消費者庁の発表によれば、今回行政指導を受けた携帯用の空間除菌用品は、狭い密閉空間での実験結果を根拠資料としていたようです。
しかし、携帯用の空間除菌用品は、人が身につけて使うものですから、狭い密閉空間で使用されるものではありません。
自宅にいるときに使用するとしても、普通は6畳程度の広さの部屋で使いますし、すべてのドアや窓が密閉されている状況の方が例外的です。それに、除菌効果を得たいのは、自宅ではなく外出時であることがほとんどです。
そのような場合には、密閉空間とは言えない状況の方が格段に多いでしょう。

密閉空間でない場合、周囲の空気はどんどん入れ替わっていきます。
空気中のウイルスもそれに伴って入れ替わっていくわけですので、密閉空間と同じようにはウイルスの除菌効果を得ることはできません。
消費者庁の発表でも、風通しのある場所で使用する場合には、表示どおりの効果が得られない可能性があると指摘されています。

このように、合理的な根拠と言えるためには、実際に使用する状況における根拠資料である必要があります。

4 最後に

事業者が合理的な根拠だと考えている資料でも、法的に見ると、合理的とは言えないものであることが多々あります。
特に、実験結果を根拠としている場合には、「実験までしているのだから合理的な根拠になるに違いない」と思ってしまいがちです。
この機会に、改めて根拠資料について見直しをしてみてはいかがでしょうか。

措置命令取り消しのなぜ

1 はじめに

消費者庁は、2020年5月15日、2019年3月29日に行った措置命令を取り消したことを発表しました。
消費者庁が一度出した措置命令が取り消すのは初めてのことだと思われます。
消費者庁の発表では、措置命令を取り消した理由として、「措置命令の処分原因事実として認定した表示期間を改めて検討した結果」としか触れられていません。

なぜ措置命令の取消しという事態になったのでしょうか。

2 再度の措置命令もあり得る?

消費者庁の発表からも分かるように、今回の取消しの理由が、「そもそも優良誤認表示ではなかった」というものではないのは明らかです。

報じられているところによると、優良誤認表示として認定した広告の表示期間に誤りがあったため、取り消さざるを得なかったということのようです。
そのため、改めて広告の正確な表示期間を確定し、表示期間を変更した上で、再度の措置命令を出す可能性も十分にあると考えられます。

というのも、措置命令のような行政処分は、基本的にどこまでも過去に遡って処分を出すことができます。極端な話をすれば、今回の表示が実は10年前のものでした、という場合であっても、それが優良誤認表示である以上、措置命令を出すことは可能なのです。

3 課徴金額には影響する可能性

一方で、優良誤認表示に対する課徴金納付命令は、期間の制限があります。景品表示法において、課徴金の対象とされる期間は最大で3年間とされており、また、不当表示をやめてから5年が経過すると、課徴金納付命令を課すことができないとされています。

そのため、理屈としては、今回表示期間が見直されることによって、課徴金額に影響してくる可能性もあります。

4 最後に

措置命令が取り消されると、その措置命令は最初からなかったことになります。とはいえ、一度出された措置命令の事実上の影響はどうしても残ります。今回は表示期間の誤りということでしたが、実は不当表示ではなかったというような場合には、措置命令が取り消されたとしても、被った事実上の不利益をどうするのかという問題が残ることになります。

感染症対策を暗示する広告の危険性を明らかにした措置命令

1 はじめに

消費者庁は、2020年5月19日、「ハンドクリーンジェル(300ml)」と称する商品について、優良誤認表示があったとして措置命令を行いました。
優良誤認表示とされた理由は、商品に「アルコール71%配合」と記載していたのに、実際はそれを大幅に下回る配合割合だったというものです。

措置命令では明確に触れられてはいませんが、優良誤認表示の表示期間は2020年4月4日から同月14日までとされています。
そのことから考えて、新型コロナウイルス感染症の予防効果を暗示した商品について、初めて措置命令が出されたケースと考えてよいでしょう。

2 消費者庁による注意喚起と行政指導

新型コロナの流行が始まってから、その予防効果を謳う商品が多く出回るようになりました。その種類は、健康食品、マイナスイオン発生器、空間除菌商品、アロマオイル、光触媒スプレー等、様々です。
その中には、とても新型コロナの予防効果があるとは思われないものも含まれています。

新型コロナは世界中で流行し、多大な被害を出しているだけに、その予防効果を謳うことの訴求力は極めて大きなものがあります。そのため、消費者庁としても、そのような広告表示に対しては、素早く注意喚起や行政指導を行っています。

具体的には、2020年3月10日、同27日、同年5月1日と、相次いで一般消費者への注意喚起をリリースするとともに、空間除菌用品の販売事業者に対する行政指導を行い、これを公表しました。

今回の措置命令も、そのような流れの中に位置付けられるものです。

3 措置命令の内容

今回措置命令を受けた商品も、「ハンドクリーン」という商品名、アルコールを配合していることから、手指の消毒による新型コロナ予防効果の訴求を狙った商品であることは間違いないでしょう。

報じられているところによると、71%のアルコールを配合していると表示しながら、実際には5%~30%しかアルコールが配合されていなかったようです。
表示期間が上記のとおり約10日間と短期間であることからしても、消費者庁が素早く動いて措置命令まで持って行ったことがうかがえます。

4 薬機法の観点

ちなみに、問題となった商品は、「手指用洗浄ジェル」と表示しており、「消毒」という表示をしていません。そもそも手指の消毒は、医薬品、医薬部外品でしか認められない効果です。
ところが、今回の商品は医薬品や医薬部外品ではなく、化粧品として販売されていました。そのため、「消毒」という表示をすることができず、「洗浄」という表示をしつつ、高濃度のアルコールを配合していることを示すことで、手指の消毒効果を暗示しようとしたものと思われます。

このように、雑品や化粧品であるにも関わらず、手指の消毒効果を暗示しようとする商品は、今後も増えてくると考えられます。

5 最後に

今回はアルコールの配合量に着目した措置命令でしたが、商品の種類や広告の内容によっては、直接的に新型コロナ等の感染症予防効果を表示していると認定して、優良誤認表示と判断されるケースもあり得ます。

今後も引き続き、新型コロナ関連の訴求に対しては厳しい目が向けられていくでしょう。